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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
イスル編

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不可侵領域での作業再開

翌日僕らは早朝から買い出しに出かけてそのまま町を出て不可侵領域付近のキャンプへ向かう。ダンデムさんもリールドさんも昨日余程感激したらしく、二人とも手厚い歓迎を受けてつい欧米か! って言いそうになるレベルの熱い抱擁に背中バンバン叩かれて目がバッチリ覚めた。


華さんとミコトに対してはとてもうやうやしく礼をして出迎える。もし抱き着いたら流石に割って入ろうとと身構えていたけど杞憂で済んで何より。二人は僕の動きを面白おかしくキャンプへ向かう道中で話していたので退屈しのぎになって良かったと皮肉を言うとまた笑われた。


「よく来た……な」


 僕を見つけて皆さん笑顔で挨拶をしてくれたんだけど、何でかいきなり停止した。首を傾げつつ近付いて兄弟子にいつものようにお世話になりますと拳を掌に当てつつ言うも何の反応も無し。視線の先を追うと華さんに向いている。


華さんの美しさに捉われたのかな……でも獣族の女性陣も固まってるし何なんだ一体。


「あのー、どうしました?」


 僕がそう尋ねても動かず取り合えず二人を連れていつもの場所にテントを組み始める。皆さんのテントにお邪魔させてもらうのは悪いので、テント群の端っこに僕ら専用のテントを張る。一応今回はリールドさんとダンデムさん考案の快適さ重視テント改良版で、感想を伝えるので具合をメモしておく。


組みやすさはあまり変わらないけど、内装が置けるスペースが増え軒先もあるので雨も安心というのが素晴らしい。華さんもミコトもとても気に入ったようだ。椅子とかテーブルも簡易なものを用意してあり食器もバッチリ。食材は御米に似たものがありそれを多めに持って来ている。何しろここは大自然の中で尚且つ実も草も色々生えている。


前回来た時にミコトが色々メモしていてお茶もここで取れる物を使用する。獣族の方は紅茶よりもお茶を好んで飲むので拘りがありこの周辺の御茶はあまり飲まないようだ。聞くところによると獣族の各村には当たり前のように茶畑があるらしい。


「あ、あのー」


 何だか別人のような感じで兄弟子のカンカンさんがテントに来た。一体何があったのか分からず首を傾げると何故か僕だけ抱えて獣族のテントへと誘拐される。


「な、何ですか一体痛いじゃないですか辞めてくださいよ」

「何ですかじゃない! それはこっちのセ・リ・フ!」


 山根に対する田中みたいな口調のカンカンさんはちょっと面白い。小さく笑う僕に対して獣族の皆さんの視線は冷たい。面白くないのかな。


「君、あの子は誰だね?」

「え、ミコトですか?」


「ちーがーうーの! そうじゃないでしょ!」


 あんまりにも動きが似てて違うのって何だよ田中、って言いそうになるも深呼吸して切り替える。ミコトじゃないとしたら華さんか。


「華さんですか? リュウリン女史の妹さんすよねそれが何か?」


 お化けを見たみたいに恐れ戦く獣族の皆さん。何か悪い物でも食べたのかな……後でミコトに薬でも処方してもらえば良いのに。ミコトは今薬学も学んでいるので僕の腹痛は改善されて助かっている。精神的なものだろうけど色々考えるとお腹痛くなるんだよねぇやっぱり。スイッチ入るとそうでも無いんだけど、普通の時とかスイッチ入る前はどうしてもプレッシャーが掛かるとお腹に来てしまう。


「……ま、まぁお前がそう言うならそれ以上でもそれ以下でもないんだろうな」

「はぁ……」


「想像以上に馬鹿なのか大物なのか分からんが、そのままの君で居てくれ」


 ジャンガジャンガやんない感じで解散となった。その後改めてクレモナ隊長から作業指示を伝える為に集合する。何故か華さんに椅子を出してきたけど華さんはお断りしてざわつく。


特別な指示は無く前回と同じ感じだけど改めて説明された、というか華さんに向けて説明している気がしてならない。とても有難いけど空気が可笑しいんだよなぁ。華さんはその説明の後前に出て挨拶し、一員として普通に接して頂ければと伝えると皆ロボットのように一斉に頷いたこれがカリスマか。


「どらっしゃああ!」


 まぁ僕は華さんでは無いので丁重に扱われる訳も無く宙を舞う。ストレッチの後毒キノコ等を背負った籠に入れつつ周辺をランニングし、組手に入る。午後は隆起した部分を崩して凹んだところへ埋め直したり地ならしに当てられた。


筋トレ以外の何物でもない仕事ばかりだけど、組手より心安らぐのは何故だろう。先ほどまでの田中は去ってしまいパンダが結構な狂暴動物であると分からされた組手は前日の比ではなかった。割と慣れて来た筈なのに更に高速に更に力強く打ち込んでくるカンカンさんの拳と体は、巨大な岩が僕をロックオンして追尾してくるレベルの恐怖を未だに感じる。


それでも何とか返そうと思ってバランス崩しを試みるも岩が動かない……。蹴りなどで試みると空かさず技が飛んで来てそれの威力を殺せているのが不思議だ。


「そろそろ真面目に考えろ」


 カンカンさんの言葉の謎はその日には解けない。真面目に考えた結果のバランス崩しは悪手なのだろうか……まぁ効いてないから悪手何だろうけど。となると何が正解なのか。あの強大なパワーと根を張ったように動かない足。


攻撃に転ずる為にはバランスを崩さなきゃいけないし、その為にはやはり足がポイントだと思ったんだけどどうしたら良いのか。


結局ボロ雑巾のようになってテントに戻り例の激マズドリンクを飲んで就寝。御飯を食べる気力も無い。それから一週間ずっとこれの繰り返しだ。ただそれだけに肉体的な変化が徐々に出てきた気がする。


「ほう」


 組手の際カンカンさんの拳を受けても宙を舞わずに飛び退いた程度に軽減出来た。ただ何かいつもと違った。目が慣れて来たのか体が強くなったのか真っ正面からの直撃だったのに少しズレた……と言うかずらしたような感覚がある。


「もう一度!」


 いつもだとここで吹っ飛ばされるのに今度は確実にずらしながら受けて飛び退けられた。自分でとても感激してしまい歓喜の声を上げてしまう。


「確実にどんな時でも出来なければ無意味と知れ!」


 岩が突進してくる。相変わらずの圧だけど今なら何とかなる気が


「甘いわ!」


 しなかった。そら同じ攻撃を何度もしないよなぁ組手とは言え。僕の動きを予測して打った拳を受けて宙を舞う。





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