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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
イスル編

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間伐開始

 暫く馬車を走らせ依頼の場所に着く。久し振りに来てみると草が前よりも増え鬱蒼としている。違和感を感じるとしたらその成長速度だ。幾らジメジメしてる上にマグマが近いとはいえこの速度の説明としては難しい、と僕は思った。


「流石不可侵領域の近く、と言ったところでしょうか」


 華さんの言葉にミコトが頷き僕に視線を送る。始まりの地と言われるこの辺りに月読命が陣取ったのもこの不思議さに目を付けて、という理由なら納得が行く。世界のど真ん中でもなければカイビャクとの中心地でもない。


利便性も無いし下手をすれば戦争に巻き込まれる可能性もある場所だし森で良ければ他にも場所はある。


「定期的に収入が入ると考えると良い場所ですね」

「確かに。但しあれが居なければ、ですが」


 華さんは腰に挿した刀の柄に手を添えて腰を低くし身構えた。僕は荷物を置いて足場を整えて肩幅に開く。分かり易いほど敵意剥き出しの気と視線が向けられる。例のイスルモモンガの変種だと思うけど姿を晒さないので確認は出来ない。


「攻めてはこないようですね」

「となるとこの辺りを縄張りにしたのかもしれません」


 元々この辺りに縄張りを持っていて広げたというのが正しいのかもしれない。あの男の邪魔が入らなければ縄張り化する前に防げた。あの時逃がした後悔が胸の辺りにもやもやとして現れ黒い感情が出るも深呼吸しこの怒りと不快感はあの男に直接ぶつけるべきだと頭を切り替える。


どうあってもここは退いてもらわなければならないし、勝手に縄張りを広げたのであれば尚更人間に対する侮りを訂正してもらわなければならない。故に戦いは不可避だ。となると睨みあっていては夜になり混戦の可能性すら捨てきれなくなる。


「康久殿」


 僕は構えを解き前に出てその敵意に近付く。一歩二歩と近付くにつれその敵意と圧は強くなりやがて相手の範囲内に入る。


「シッ!」


 声も発せず飛び掛かってきた黒い物体の体中央目掛けて高速で拳を突き出した後、飛び退き間合いを取る。明るみに出て来たそれはやはりモモンガを巨大化した生物で間違いない。目は真っ赤に染まり長い爪と尖った牙を剥き出しにし、体を大きく見せて怯ませようと両足で立ち手を広げて奇声を上げている。


ただモモンガと言えば高いところから攻撃してくる方が有利な筈なのに地上に居る。変種だからそうなのか、それとも別の理由があるのか。


「康久さん、どうやら親子のようです」


 振り返らなくて良いようにミコトが言葉で情報を伝えてくれる。なるほどと頷いて返す。変種というかもっと奥地に住んでいて住処を追われた可能性が高い。何しろ森火事があったから当然か。だがそれで良しとは出来ない。


人を妄りに襲うのではなく縄張りに入って来たから攻撃したが正解だろう。だとしたらその範囲からずれて貰わなければならない。この辺りには貴重な調味料の採取場所に前からなっていた。先に来ていたのはこちらなので優先権はある。


「何処へ行くんだ?」


 僕と対峙しミコトの声にも視線を動かさなかったけど堪らず動くイスルモモンガ変種。僕もそれに合わせて当然のように立ち塞がる。組み付こうとして来たけどそれを掻い潜り腹に一撃加えてすれ違う。


組み付かれれば僕より体格も大きく更に首も長いので食いつかれるので組む訳にはいかない。巨体ではあるもののスピードはある、けどここは地上だこの子が有利になる条件は無い。僕は再度前に戻り立ち塞がる。


再度組み付こうとしてくるもそれはフェイントでミコトのところへ行こうとしたのは当然読んでいるので一撃加えつつ足を引っかけて態勢を崩した後放り投げて後退させる。だが相手も諦める訳にはいかないので何度でも来る。


「ミコト様、その子から離れてください」


 華さんがそう伝えるとミコトの気配はその子から離れる。華さんがミコトを連れて更に離れるのを気で確認すると、僕も道を開ける。何とかダメージらしきものは無いように手加減した筈だから問題ないと思う。


恐竜ではないので人間の恐ろしさみたいなものが理解出来ればおいそれとは近付かないだろうと考えての措置だ。彼らは一応動物であってモンスターでは無いから共生の可能性があるのならそれを願いたいと考えて僕はそのまま去るのを見送る。


「宜しいのですか?」

「宜しいと僕は考えたから見逃した。山火事は気の毒だけどここは人間が先に居た場所だしここで共生出来ないとなれば出て行ってもらう他無い。暫く僕たちが居て作業をしていればここにはもうこないと思う。これまでは居なかった訳だから共生の可能性も捨てきれないし」


 華さんの問いに答えて僕らは作業を始める。ミコトは鉈を使って周りの茫々になっている草や弦を切って集めて行き、僕と華さんは間伐を少し間のありその方向へ倒せる木があるところから始めた。


最初にある程度斧で横から斬りつけ更に反対側からも斬りつけを繰り返し、えんぴつの先のような感じになってきたところで片足を木に倒したい方向に向けて行くように掛けながら斧で最後の一撃を入れ倒す。


言葉にすると短いけどこれが中々体にくる。肩と背中の周辺が主に張って来た。


「これは良い鍛錬になりますよ? 肩周りは鍛えるのが難しい部位で意識して鍛えなければなりませんから」


 華さんの言葉に頷いて僕はそのまま感覚を開けて木を倒して行く。華さんはその丸太を抱えて馬車の近くへ持っていき集めてくれる。華奢に見えて力持ちだなぁと思う。軽々とではなく額に汗を掻きながら運んでくれているので大変ではあるだろうけど、流石冒険者だし鍛えてるなと言うのは分かる。


「お疲れ様ですー」


 夕暮れ間近になった時、兵士の人たちが馬車を引いてやって来た。側にはギルドの審査員の人も居たので少しだけホッとした。


「私も居ますよ」


 その人たちの後ろからダンデムさんが顔を出したので僕は心底ホッとする。例の家の件でも兵士の人たちだけだと不安だし、ギルドの審査員の人も格好と名札で分かるけど本当かどうかも僕には判断が付かない。


「一日でこれだけ出ると中々……」


 来た人皆が唸りながら木を見た後馬車へ積み込んでいく。そして結局乗り切らないので僕らの馬車にも乗せつつ町に帰る。で、運ぶ手間賃もプラスされるとなりミコトはほくそ笑んだのを見逃さなかったけど見ない振りをした。


こうして一日目は終わる。一応例の件もギルドに報告はしておいたけどリュウリン女史からは様子見を継続し任せると言われたのでその通りにする。気に入らない者を滅ぼし続けていたら人間しかいなくなるだろうし、何よりこの星には人間より強力な者たちが数多くいる。


それらを刺激する可能性も無くは無いので極力互いの領域を犯さずっていうのを護りながらも譲れないところは譲れないと態度でも示して行こうという話でその件はなった。

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