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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
序章
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砂漠の町から出発

「虫の奴はどこだ!」

「あの教団の女は何処だ!」


 出来れば気持ち良く目覚めたかったのに、目覚めは最悪だった。目を開くと木の天井右を向くと窓があり、そこから怒号が飛び込んできた。まさかここに殴りこんで来てるのか? と思ってコソコソと窓から外を見る。


「あっぶな」


 その人の群れはここではなく、別の方向へ群れを成して進んでいた。だけど安心は出来ない。僕は急いで寝ていたところから起き上がる。どうやらギルドの二階みたいだ。見覚えのある景色にほっとしつつ、脇にあったグレートボウガンと筒を背負い部屋を出る。


「康久、大丈夫?」


 一階へ出る時も、こそっと様子を伺いながら出る。どうやらギルドのカウンターにも近くの商談用兼食事用のテーブルにも誰も居ない。ほっとして、でも恐る恐る出て行くとテーブルを吹く為に布巾を持って現れたミレーユさんに声を掛けられた。


「え、ええ何とか。それより昨日はありがとうございました」

「良いのよ。他の皆も手伝ってくれたし、貴方も変身解けてたから。それより……」


 ミレーユさんは外を見る。何処に居たんだか人の群れが何処かへと向かっている。


「あれですね」

「そうよ。ここは安全地帯なの。ここを襲撃する押し入るとなれば、それはこの町がギルド協会に宣戦布告したと同じように受け取られて、全世界から協会員たちが直ぐ駆けつけてくる。だけどここから一生でないって訳には行かないでしょう?」


「ですね。なら例の撃退の報酬を頂いて直ぐにここを出ます」

「そうね。あの子の傷は何時治るか分からないから治るまで、と言ってあげたいけどね。あのダグサさんが張り切ってこの町を統括している統治官のところへ先導してる」


 あのじいさん、今までうだつが上がらなかっただろうに例の黒竜を一度倒したみたいな状態を笠に着て、自分の輝きを取り戻そうとしてるのか。


「このままだと暴動になって略奪が起きて取締が苛烈になる。その前に出た方が良い」

「そうします。準備をお手伝いしますか?」


「良いわゆっくりしてて頂戴。彼女は貴方が降りてきた階段の後ろの扉を入って下りた先の地下にいるわ」


 僕は一礼してそのまま言われた通りの道を進んだ。


「寝てるか」


 地下に降りると物置になっていて、その奥にベッドがあり少女が寝ていた。包帯は変えられているようだ。こうしてみると、確かに何というか浮世離れした雰囲気がある。美少女って感じなんだけど現実感が全く無い。


「康久、準備が出来たわ」


 じっとしていたので暫くしたら転寝していた。ミレーユさんが肩を叩いてくれて目が覚める。


「すいません、ありがとうございます」

「良いのよ、貴方の特技は体力も精神力も持っていかれる。能力が上積みされもそれだから、今後は気を付けてね。体を鍛えたりするとマシになるわ」


 僕は頷くに止めた。ミレーユさんもそう言えば何処と無く浮世離れしているし、何か神々しさを感じる。あの女神より女神っぽいなぁ。


「さ、裏手に馬車と荷物を用意したわ。今なら統括官の館に人が集まって殆ど居ないし、門兵さんには言ってあるから。彼らもこの子が居なくなれば、居なかったと言ってもバレないし助かるって」

「分かりました!」


 僕は頷いて寝ている少女を抱きかかえるとそのままミレーユさんに先導されて階段を上がり外へ出る。馬車の荷台に彼女を寝かせて隠し僕は馬の手綱を握って席に着く。一回も運転したことは無いけど、やるしかない。


「ここから北に行くと、ここより少し大きな町デラウンがあるわ。あそこならここでの騒ぎも関係ないから。付いたら真っ先にギルドに行きなさい。馬車の子の話はこの手紙に書いてあるから門兵に渡して。ゴネたらこの袋を渡せば直ぐに入れるから」

「有難うございましたミレーユさん。短い付き合いでしたが……」


「それはどうかしら。さ、早く」


 何か気になる感じの言葉を聞いたので聞き返したかったけど、馬はミレーユさんの声に合わせて動き出し、町の入り口へと向かった。

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