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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
イスル編

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イスルでの依頼

「君たちには色々知ってもらったうえで私たちに協力的であってくれると嬉しいよ。国の中での勢力争いではあるがそれによって戦争をしたりはしない。もしそうなったとしたら仕掛けた方が潰される。今は竜神教(ランシャラ)の乱の影響で国として結束しようと皆そこだけは一致している。まぁその結果一つでも多く国に貢献して発言権を強めたいってなってるのが面倒なところなんだがね」

「取り合えず二人で色々見てみます。手助け本当に有難う御座いました」


「さっき言ったようにお礼の一部だし個人的に君たち二人とは誼を結びたいと思っているから貸しと思わないでくれ。それどころか私たちは君たちに借りているのだから。あの宿も気が済むまで居て貰って問題ない。これから宜しく」


 僕たちはデラックさんと握手を交わしてその場を後にする。今ある程度手持ちがあるけどこれだけでは不安だ。先ずは金貨十枚を目標に貯蓄しつつデラウンへ戻る方法を探さないと。


「おう、話は終わったか?」


 白髪白髭の大男が兵士屯所の門の前に居た。前に見た時と違い髪を後ろで結わいて顔は厳格な感じでキリッとし鎧にマントと正装っぽい格好に変わっていた。見た目の迫力は変わらないものの威嚇してる感じは無いのでミコトも怯えたりはしなかった。


「どうもサスノさん。僕たちを待ってくれてたんですか?」

「そうだ。武術会では済まなかったな。今回は証拠もあったのであの場でそれを突き付けようという計画で乗り込んだのでバレる訳にはいかず、なるべく狂戦士ぽくしてみたのだ」


 あの時のインパクトが凄すぎて今目の前にいる人が同一人物かどうか疑いたくなるくらい乖離している。ミコトは僕はサスノさんの名前を言うと驚いて袖を掴んで来た。気付いて無かったんだな。


「良かったですあのままの人に付け狙われたら怖くて眠れませんから」


 僕がそう言うとサスノさんは口を大きく開け腰に手を当てて大笑いした。豪快なのは変わりないらしい。ミコトは僕の後ろに隠れてその大きな音をやり過ごす。


「ああすまんすまん。こっちとしてはまた別の人間が絡んだり組織がもう一つあるとなれば全て潰さなければならない。あの町の不穏な動きは周辺の町にも影響を及ぼしていたので国に証拠を出し今回は穏便に済ます目的で我々が潜り込んだのだ。流石に夜盗の類が正義面して暴れられては堪らないからな。向こうの町長にも国からの書類と我々の証拠とを見せて拘束。もう代わりの町長が来ている筈だ」


 僕はただ資金稼ぎに武術会に出ただけなのに何だか大きな問題に巻き込まれていたようで改めて考えると寒気がする話だ。一歩間違えれば盗賊の仲間として賞金首になっていたかもしれないし紙一重で良い方に転んだ……ミコトに後でお供えしようかな。


その後サスノさんに案内されてこの町の冒険者ギルドに行く。そこで名前などを記入し早速仕事を貰おうとしたけど


「それはこっちでやるから問題ない」


 とサスノさんが割って入って断ってしまう。受付の人もあっさり引き下がってしまった。そのまま僕らはサスノさんに誘われギルドのラウンジでお茶をする。


「まぁお前さんも分かってると思うが、腕に自信のある人間が低いランクの仕事をされては下が困ると言う話だ。誰もがお前の歳でお前と同じように強いなど有り得ん。彼らにも生活があるしそれを何度もこなして生きている者も居るのでな。俺が貢献としてお前に丁度良さそうな依頼を受けるからそれをこなしてくれ」


 流石デラックさんと一緒に町に仕える人だ。その指摘はとても的確で納得できる話だったのですんなり受け入れられる。色々知るならブロンズ帯から始めるのが良いんだけど、そうすると依頼を潰してしまうし僕に依頼をとなって他の人の生活を壊しかねない。


師匠たちに鍛えて貰って経験も増えた今、より広く見て考えなければならないのかもしれない。竜神教(ランシャラ)に関しても見極めなければならない。


「え、いきなりこれなんですか? サスノ隊長」


 お茶をしつつこの辺りの話を少しした後で日が暮れる前に一つ依頼をこなしてしまおうと言われ僕たちはカウンターへと再度向かう。サスノさんの”あれを頼む。先日のあれ”という言葉を受けて暫く受付の人は考えた後怪訝な顔をしてそう言った。一体何をやらされるんだろうか……。


「良いから早く。日が暮れる前に帰ってきたいのだよ我々は」

「そうですか……ならどうぞ」


 不満な顔をしつつカウンターの下から一枚の紙を取り出した。そこには森の奥で暴れる小さめの恐竜の討伐依頼だった。動植物が周りから減って畑にも迷い込んで来たらしく、人への被害が出る前に何とかして欲しいというものだった。


小さめの恐竜と言っても馬くらいのサイズのようで僕がこれをこなしても良いのかと尋ねるとサスノさんは手始めには最適と答えた。恐らくあまり大きすぎる依頼をこなしてもまた面倒な騒ぎになるしギリギリざわつくくらいのレベルの依頼って言う感じのチョイスなんだろう。


僕らは早速その森の奥へと向かう。ギルドから一人査定する人と馬車を出してもらいそのまま急いで行くと地図に丸の付いた地点より人里の近くで発見。早速僕らは馬車を止めてその動きを見る。


「よくこういうのあるんですか?」

「いや珍しいな。恐竜はもう少し離れた原生林を縄張りとしている。特に今年の気候も変ではないし……。あるとすればこないだの山火事に驚いて出て来てしまって迷ったと言ったところだろうな」


 となると別に襲いに来た訳では無いのだから討伐するには値しないと僕は思う。ミコトの顔を見ると察したのか頷いている。僕はあの恐竜を原生林近くに返せばオッケーですか? と問うと査定員さんとサスノさんは頷いた。


「勿論それでも構わんがこちらのお願いを聞いてくれるとは思えん」


 確かに恐竜は竜とは違い獰猛でペット気分で飼うなど不可能だと思う。但しそれにチャレンジした人は居ないので絶対に交流が不可能という話でもないと査定員さんは言ってくれた。となるとここはチート山盛り()の僕が対応するしかないな。


早速僕は皆をその場に残してゆっくりと散歩するようにその小さな恐竜との間を詰めていく。ただそう近寄らない内にそれまで自分の知っているところがないか探すようにキョロキョロうろうろしていたのがビクリとして止まりこちらに首を向ける。ホラー映画のワンシーンみたいな動きをしているのが面白くて吹き出しそうになる。僕はそんな怖い存在ではないけど。


「ゴァアアア」


 首を低くして牙を剥き出しにし威嚇して来た。近くで見るとそんなに大きくもない。馬より少し大きいくらいだ。僕は両手を広げて敵意が無いのを示して微笑みながら動かずにいる。暫くそれは続いたけど業を煮やしたのか恐竜が僕に向かって突進して来た。

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