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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
カイテン導入編

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隣町にて

「町同士の争いですか?」

「如何にも。同じ国ではあるが国に治める税の多さで発言権等が変わるから仕方ない。それ以外にもあの村の近くは豹族などの獣人の村があり更に真ん中には不可侵領域がある。今回の山火事も本来なら協力して消火に当たりたいところだが……」


 中々この国も込み入った事情がありまくりなようだ。まぁそれだけに僕らも動きやすそうではある。ただ不可侵領域ってのが気になるなぁ聞いてみよう。


「デラックさん、不可侵領域ってなんです?」

「その名の通りの場所だよ。個人的にフラットな目線で語るなら色々な起源となっていると言われている場所だから迂闊に入ると色々な人たちに嬲り殺される」


 それを聞いただけでもゲンナリした。俗に言う聖地って感じかな。そりゃ迂闊に入れないな。


「この国流に語るなら剣星アルブラムの聖地であり修行の地。今もその地にはアルブラムが眠っているとされこの星の人類の危機に蘇ると信じている人が多い」

「宗教ですね」


「まぁ似たようなものだよ。それがあるが故に竜神教(ランシャラ)はこの国では流行らないはずだった。だが宗教ではないので信仰があやふやなアルブラムと違いあっちは宗教として信仰も確立している。なので社会不安などが起これば必ずそこに現れる。うちの王様は王様になる前から予見していたけど前王は寛容な方でね……。それを見逃しているうちにあれよあれよというままに広がりそして反乱が起きる土台を作られてしまっていたという話だ」


 不安になると何かにすがりたくなる気持ちは分からなくはないけど、宗教にすがるのは個人的には違うと思う。ただしここの竜神教(ランシャラ)なら仕方ないと思うのは実態として始祖竜の一族が今も居て人を導いているという点だ。偶像とかではなくそこに居る。これほど強い物はない。死んだ人を祭り上げたり教えを付け加えたり修正して伝えるでもない、それそのものが言葉や文を発しているのだから。


ただ具体的に何をしてくれた訳でもないのによく反乱なんて起こせたなと関心はする。戦争になった際に反乱を起こせばこの国は終わっていた間違いなく。この国にとっては運が良かったんだろう……この国の竜神教(ランシャラ)の信者が自発的に起こした反乱なら、ね。


「まぁそれは置いておくとして、君たちが参加した武術会の行われた町、ロウニと我が町イスルの境界線があの村に当たるのでどちらに税を納めるかは村の人たちに任されていてそれにロウニもイスルも国の決まりなので了承している」


 了承しているのにいざこざがどうして起こるのか疑問しかないが、それはロウニとイスルのスタンスが発端のようだ。ロウニは自分たちも干渉も協力もしないというスタンスで、我々は事情によってはその限りではないというスタンスを取っていたものだから自然とイスルに税を納めるようになった。ロウニはそれが気に入らないのだろう後になってからご機嫌取りを始めたが後の祭り。


それを逆恨みして以降嫌がらせが続いていてその所為で村を離れる人も居るとか。僕らがお世話になった感じ嫌な町じゃなかった。このいざこざが治まったところでロウニとは手を組まないだろうからロウニは治めるつもりがないと言う。


その卑屈さが町を歪めあのような有名人がのさばる結果となったようだ。治安が悪いのも頷ける。僧侶が襲撃ってギャグかと思ったよ。


「君が倒してくれた男は元々この辺りを荒らしまわっていた窃盗団の一味の頭で表向きは冒険者を装っていた。どうやらバックアップしてる人物が居たので武術会にかこつけて聞き出そうと思ったんだが」

「すいません知らずに倒しちゃって」


「いや寧ろ良かった。現行犯で頭以外捕まえられたし。あの男も地元に戻れないとなれば後ろ盾のところに行くはずだ」


 来て早々えらい問題に巻き込まれたなぁと思ってミコトと苦笑いをして見合う。


「君たちにはすまないと思っていたんだ。本来であれば我々が処理するべき問題だったのに手を出してしまって」

「いえそんな」


「賞金も三等分になって冒険者としては困るだろう? もし良ければこの町で出来るようなものなら協力する。上の方にも了承を得たのであまり凄いものでなければ通る」


 それを聞いて僕とミコトは考えるも直ぐに出てこないので近いうちにお願いすると思うと伝えると、もう日が暮れ始めたので良かったら用意した宿を使ってと言われお言葉に甘える。兵士の人たちに案内されて着いたのは賑やかな町の中の綺麗な三階建ての建物で、中に入ると高そうな装飾とかが施された内装でとても恐縮してしまう。


僕たちは兵士の人たちにこんなに凄いところに止まれないとお断りしたんだけど、隊長の客人なので是非とも泊っていただかないと我々が困ると言われてしまった。そして案内された最上階の良い部屋は今までの宿が何だったのかというくらい綺麗な部屋でちょっと落ち着かない。


何しろ部屋の中に薪が用意されていたものの御風呂もあり、更に食事は部屋に運んでくれるという素晴らしさ。ミコトはカーテンの裏側や家具の隙間、お風呂の蛇口をひねったりと部屋の隅々まで見て回り感激していた。


「取り合えずこれからどうしようか」

「私たちの目的は変わりません。邪悪な教団を潰すという目的は」


 お風呂もなんと宿の人が準備してくれて交互に入り、寝間着も用意されていたので着替えてソファに座ってのんびりしつつ今後について話す。


竜神教(ランシャラ)が邪悪?」

「はい。以前は違いましたが今はそうです。元々自然に近い側の教団でしたが近年は科学的な部分を取り入れた武具を積極的に取り入れ制作し、更には人を人とも思わないような所業も判明しています」


 さっきまで部屋の凄さに感激し目を輝かせていたミコトとは違い、真面目で落ち着き清廉な雰囲気を漂わせ神聖な感じがする。


「月読命が言っていたの?」

「言っていたというよりその開発や制作をして横流ししていたのが彼女です。私はウルド様に対抗する存在として作られました。ですがウルド様を手に掛け神殺しをしてしまい結果私がその後任として選ばれたのです」


 これ以上の証人がないってほどの証人だな……。でもなんで竜神教(ランシャラ)は月読命一派と手を組んだんだろう。彼らとは交わらないと思ったけど。


竜神教(ランシャラ)も一枚岩ではありません。現状に不満を抱き最初の頃に戻るべきだと考える派閥も居るし、もっと竜神教(ランシャラ)の教えを広めるべく他国へ進出しようと提言する派閥も居ます。そして方法も様々。穏便に進めようとする人間ばかりではありませんから」

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