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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
カイテン導入編

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町の武術大会にて

村に戻り夕飯を頂き就寝。朝になると昨日と同じように小麦畑で刈り入れを行って朝ご飯を四人で食べる。その時ふと視線が暖炉の上に向いた。そこには家族の絵が飾ってありオヤジさんやおかみさんだけでなく小さな子供が三人描かれている。そんなにジッと見ていないけどおかみさんに気になるか聞かれて何と答えて良いのか迷った挙句気になりますと答えた。


二人から息子と娘は今は都会に出て仕事をしていて毎月必ずお給金の一部を送ってくれる出来た子供たちだと教えられた。僕はそれを聞いてホッと胸を撫で下ろす。この宿に来た時からオヤジさんたち以外が居た雰囲気が感じられなかったから何かあったんじゃないかと思ってしまった。


今背丈も伸び勉強のし過ぎで目が悪くなったらしく心配していると言う。その子は長男で昔から気難しく決めつけやすい性格で負けず嫌いだけど根性もありとても優しい子だから大丈夫だろうとも話してくれた。その子の顔を見ると確かに描かれている彼は浮かない顔というか怒っているように見える。何か見覚えのあるようなないような……。


ミコトは美味しいのか手を止めず黙々と食事をし食べ終わると僕らは町に出かける。今日は武術大会が行われると聞いたので早速検問の時兵士さんに声を掛けると喜んで案内してくれた。何でも今回は記念の大会らしく盛り上げる為に一人でも多く参加して欲しいと町の兵士皆で声を掛けていたようだ。兵士は大会に出られないので残念だとも話してくれた。


受け付けはすんなり終わった。流派とかありますか? と聞かれたのでありませんと答える。師匠の名前を出すと遠くから迷惑をかける可能性が大きいし、今の状況を考えると名前を出したら不味いので黙っておく。風神拳を出さなければバレない筈。


「全員整列!」


 コロッセオのような場所に総勢百名程度が集まりごちゃっと並んだ。兵士じゃないので綺麗に整列出来る訳もない。中にはわざとぶつかってくる人間も居るけどそこは皆慣れたもので避けつつ位置を確保する。何人か強そうな人はその威圧感で周囲を遠ざけている。かくいう僕はと言うと避けて避けて場所を確保する為移動していた。


「おっとごめんよ」

「こちらこそ……チーさん?」


 笑顔で肩が触れた相手に謝罪する。その相手を見るとチーさんそっくりの豹人だった。ただよく見ると髪の色も黒くボサボサで男の子って感じだったので人違いだと分かり


「すいません人違いを」

「姉上を知ってるのか!?」


 豹人だからって皆姉弟とか言わないよね? と思いつつ以前いた場所でお世話になったと伝えるととても喜び飛び跳ねていた。前の方に居る兵士に静かにしてください! と怒られてシュンとしたけどそれは一瞬で直ぐにニコッと微笑んだ。


チーさんとの話をしてあげたかったけど直ぐに大会の説明が行われた……そしてすぐ終わった。何故かと言うと


「貰った!」

「馬鹿め!」


 この二言でご理解頂けるだろうか。人が集まり過ぎた為に予選の前の数減らしを行うので生き残れという指示だった。僕は早々にその場を後にし塀の近くへと移動する。


「君賢いね」

「そっちこそ」


 チーさんを姉上と言っていた子も同じようにこちらへ移動してきた。こういう時真っ先に戦い始めたり中央に陣取れば皆の的にしかならない。適当な段階で戦い始めた方が利口だ。幾ら何でも多勢に無勢は無理がある。現に体が大きく筋骨隆々の人や獣人は皆から集中的に狙われ倒されている。威圧して周囲を遠ざけていた人たちも次々倒れていく。


大会に出るくらいだから皆腕に覚えはあるだろうけど、実力が自分の半分だとしてもそれが集団になれば負ける。特に乱戦なんて負ける可能性が高くなるし勝っても無事では済まなくて待ち構えてた相手に狙われて終わりだ。そう僕たちのように余力を残している人間に。


「さて行こっか」

「そうだねまた後で」


 乱戦で戦うのは勿体無いと思い別方向に走り乱戦に入っていく。戦い方としてベストな状態で疲れた相手を倒していく。何せ数が多いから最強無敵でも無いのでしっかり一人ひとり吹っ飛ばして綺麗にしていく。別の場所でも人が放り投げられているのを見ると彼がやっているんだろうなと思った。チーさんに似ているのかもしれない。となると気を引き締めて行かないと。


「余所見か? 小僧」


 大きな鉄球をスレスレで体を反って避け起き上がりながら頭突きをその相手の鳩尾に叩き込んで吹き飛ばす。空を舞いながら落下した巨体は地面を揺らし皆の視線を一瞬集めた。その隙を突いてさくさく塀の方へと吹っ飛ばしていく。


「貴様っ!」


 別の方向から今度は筋骨隆々で浅黒く焼けた青い軽鎧のおじさんが斬り付けて来たので避けて人の間を縫うように移動しつつ吹き飛ばしていく。まだあれだけ元気なら時間が掛かる。相手をするのは今じゃない。冷静に考えて僕は戦いを続ける。


暫くすると段々と人も三分の一以下になってきたようで周りが良く見えるようになった。今まで気にしてなかったけど観客は大賑わい。ミコトも見える位置に居て握り拳を突き上げて精一杯応援してくれている。こりゃ是が非でも優勝して金貨を持って帰らないとな、と思いを新たにした。


「もう少し数を減らしたいのだが協力してくれるかね?」


 一瞬の隙を突いて僕の領域に侵入して来た人物が居る。只者じゃないと感じ直ぐに飛び退き距離を取り振り返り見ると、その姿に唖然としてしまう。何故ならそれは金色のロングソードを持ったリュクスさんだったからだ。どうしてリュクスさんがここに!? 動揺を隠せない僕を見てその人物は微笑みながら言う。


「どうやら人違いをしているようだが私は君とは初対面だよ。ただ決勝でこそ戦いたいと思っているのは事実だがね」


 優雅に喋りつつその金色のロングソードで襲い来る者たちを吹っ飛ばす様を見て人違いだか謎は深まるばかりだ。リュクスさんも実力を見せてくれなかったけど只者ではないのは感じてたし。僕は取り合えず協力しないまでも移動して他の参加者を吹き飛ばして回る。

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