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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
カイテン導入編

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近くの村から近くの町へ

僕たちは宿のおかみさんと夕食時に初めて会って挨拶をした。とても朗らかで優しそうな人物。ここ最近こういう心休まる人を見てないからめっちゃ安心する。料理も体が温まるシチューとパンそれに紅茶が出されお替り自由というのもあって沢山食べた。そう言えば御飯食べるのも久し振りで無我夢中で食べてしまった。ミコトは小さくパンをちぎりながら小動物のようにもむもむ食べていた。


食べ終わり部屋に戻ると僕らは別々のベッドで直ぐ眠ってしまった。つい少し前まで滅ぶ覚悟で本拠地に突貫したのになぁと思いつつ眠りについた。そして夢も見ずあっという間に朝日が昇る。というのも宿屋のおやじさんが部屋を訪ねて来た。何かあったのかと思ったけどただ単に朝なので起こしに来たようだ。


曜日とか時間とかズレてる身としては有難い。それだけでなく朝御飯前に収穫を手伝ってもらえないかと言われて手伝う。丁度朝飯前の運動にもってこいだ。ミコトも手伝いを一緒にするというのでおかみさんから麦わら帽子を借り、四人で近くの小麦畑へ向かうと小麦刈りを始める。最初におやじさんに刈り方を教わって僕らは別々の列からスタートした。


思えばこっちの世界に来てこういう仕事をするのは初めてかもしれない。冒険者としてスタートしたから農作業とは無縁だったし。元の世界でも誰もやってなかったから初体験だ。腰を悪くしないようそしてトレーニング序になるようスクワットみたいにして小麦を刈っていく。


おやじさんとおかみさんの合図で朝の刈り入れは終了し宿へ戻る。なんで手伝いをさせたのかとミコトが尋ねると、僕たちが思いつめた顔をしていたから気晴らしになるかと思ってのようだ。確かに僕は色々ありすぎて無心になるのは難しかったけどそれが出来ただけで今は少し心が軽くなった。


「ここから少し歩くと町がある。ここより大きいから色々情報があるだろう。今の時期は祭り中だから宿は無いと思う。夕暮れまでには帰ってくるんだぞ? 辺りは危ないから」


 おやじさんにそう言われて僕らはその近くの町であるリオンまで出掛ける。地図とか色々欲しいものがあったので丁度良い。宿代も払って何時まででも居て良いと言われているし無駄な出費は避けたかったし。


特に急ぐ用も無いのでミコトと並んで歩いているとミコトはとても上機嫌で道端で花を見つけてはこれは何かしらと興味津々だった。残念な話僕には花の知識も無くて答えられなかったけど、彼女は神様なので直ぐそれが何か分かったようだ。花を見終わると撫でてその場を離れる。夕方近くになったら僕が抱えて全速力で走れば良いだけなので彼女の思うように歩かせた。


例え神様だって見るのは出来ても触れるのは初めてのようで、その手触りや匂いを楽しんでいた。それだけみるととても可愛らしい少女に見える。


のんびり歩き続けて太陽が真上に来る頃僕らは町に到着した。検問の際町の兵士の人に危険な物は何一つなく逆に心配されてしまった。刃物の一つも持ち合わせてないのは珍しい、と。僕は最低限身を護れれば問題ないですと笑顔で返し町へ入る。


見た感じデラウンよりも少し大きい町で驚いた。建築様式とかも変わりない感じでひょっとするとそう遠くないのではと感じる。ミコトは体全開で好奇心を露わにするように小躍りしながら街中を行く。それも日舞みたいな動きなので皆の注目を集めてしまい、気恥ずかしくなったのか僕の陰に隠れてその後は踊らずでも目を輝かせながら露店などを見て回った。


「おいアンタ、どこの人だ?」


 お目当ての地図を見つけて買おうとした時、不意に声が掛かる。明らかに敵意が込められた声に振り向くとモヒカン頭の男が僕の肩を掴んだ。鎧も軽鎧で筋肉はそこそこ。冒険者にしては少しひ弱かもしれないなと思いつつ何か用ですか? と尋ねると何処から来たのかと言うのでカイビャクの国に前居たらしいけどここが何処か分からないので調べていると言うと、辺りがざわつく。


「アンタは竜神教(ランシャラ)か?」

「残念だけど嫌われてるよ竜神教(ランシャラ)にはね」


 と答えると周りはホッとした声を上げて元に戻る。地図を手にしていたのでその露店のオヤジさんがタダで良いと言ってくれた。しかしタダより高いものは無いから払うと言うと”竜神教(ランシャラ)に嫌われてる者同士だから遠慮するな! 何かあれば声掛けてくれれば融通するぜ!” と親指を立てつつウインクしながら言ってくれた。


わった人だなぁと思いつつも御礼を言ってその場を後にする。モヒカン男は何も言わずジッと見ているだけだったのが君が悪いけど、今のところ順調に仕入れが進んでいる。ミコトに白い帽子と汗拭きタオル、それにこの町の名産だという工芸品の花びらのかんざしを買ってあげるととても喜んで居た。大した値段じゃないけどこんなに喜んでくれるなら良かった。


「君、明日も来るかい?」

「え、どうだろう」


「もし良かったら明日町で武術大会があるから出てみないか? 腕に覚えのある者たちばかりだけど優勝すれば金貨十枚だ」


 町を出る為に検問を受けていると兵士の人からそう言われ考えておきますと返答し町を出る。


「良いんじゃないですか? 武術大会に出ると色々情報が貰えるかもしれないし何より金貨十枚は海を渡るなら必要ですし」

「そうだね軍資金が増えるのは有難いね。ミコトにも何か買ってあげよう」


「な、何で買ってくれるんですかっ」

「いやその着物だけだと動き辛いかもしれないから何かワンピースみたいなものの上に着物を羽織るとか袴だけじゃなくスカートとか色々あった方が良いかなと思って」


 そう答えるとミコトは視線を天井に向けて暫く考えた後大きく頷く。これから無事に何も無く済むとは思えないし何より資金を稼ぐ為にはやはりギルドで依頼を受けるのが一番だと思う。ミコトにお留守番をさせるのは今は危ないから一緒に来てもらうから動きやすくないとと考えての話だ。


途中で日が暮れて来たのでミコトを担いで村まで走る。気配的にはモンスターの類と肉食動物が草原や小さな森の辺りに居そうな感じだ。安全に移動するにはやはり夜に動くのは控えた方が良さそうに思う。

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