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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
敵本拠地襲撃編

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危険地帯からの脱出

「聞いていますか?」

「聞いていますけどもね……いきなり神を名乗られてしかも邪悪な教団を駆逐しろって言われてもねぇ。貴女さぁ簡単に言うけどそんな簡単なものじゃないわけ、分かる?」


 にっこり微笑んでいるだけ……だからどうしたと言わんばかりだ。第一理由も無しにそんなの出来ないし僕も微笑みで返す。暫く微笑み合った後、流れるように人の鳩尾を強打しようと突いてきたので避ける。甘い甘い一応これでも戦いを潜り抜けて来たんだからそんな簡単に一般人に殴られたりはしない。


「あら失敗」

「残念賞。ところでここから出たいんだけどどうやって出たら良いかな」


「私のお願いを聞いてくれるなら出してあげますよ?」

「じゃあ良いや」


 僕の意思は変わらないので食い気味でお断りしてその場を離れる。そして例の建物に戻り廊下で座禅を組む。一旦色々リセットしてこの先どうするか考えないと。女神様に当初言われた星の意思に会うという目的を果たす為には月読命からその幽閉場所を聞き出さないといけない。恐らく今は怒り心頭の筈。僕を見かけたら髪を振り乱して襲い掛かってくるに違いない。


女神様の太陽落しと劫火によって施設というか基地は消滅したと思う。となると月読命の元にあったであろう兵器もまた無くなっているだろう。そう考えると兵器開発をしているカイビャクに戻るべきだし月読命が今はそっちを根城にしている可能性もある。


となると今はここから出るのが最優先。さっき入ってきた場所へ戻って岩をよじ登るしかない。で、僕が何故ここに居るかと言うとマグマを避けて町を探してたからだし、マグマがここまで来ないとも限らないので彼女をこのままにはしておけない。


「良い案は浮かびましたか?」


 目を開くとそこにミコトが居た。彼女は僕の前で膝を抱えて座って待っていたようで、笑顔で僕に訪ねて来た。音も無く前に座るとはやるな……。


「良い案は何も。君の提案は意味が分からないから受けられない。だけどここにマグマが来るかもしれないから君を連れて外に出るので話は聞く用意が一応ある」


 まぁ連れ出して安全な場所に置いて行けば問題ないだろう。この子しっかりしてそうだし。


「……良く分かりませんがお話を聞いてくれるというだけでも今は良しとします。ここを出る為に準備しなくてはなりませんからお手伝いしてくださいますか?」


 ここで手伝うだわないを言い合いしてる時間が勿体ないので頷き立ち上がる。彼女が先導しその準備をしに移動する。襖を開けて中に入るとそこは割と衝撃的な空間が広がっていた。一言でいうなら泥棒に入られた部屋。


「泥棒?」

「はい?」


 彼女の反応からして泥棒ではないらしい。となると何だこの部屋は。下着やら着物も放り投げられているように見えるし壁一面に着物がずらり乱雑に引っ掛けられていて呉服屋さんの倉庫より酷い。


「君のお母さん呼んで来てくれる? これどうしようもないんだけども」

「母は居ません。母代わりの月読命は出て行ったきりです」


 聞いては行けなかったなと思いつつそういや僕も母親の記憶がほぼないから別に構わないかと思い直し


「じゃ良いや取り合えず必要なものだけカバンか何かに入れて」

「全部必要です」


 僕が指示を出すとにっこり答える彼女。全部持っていくなら馬車とかが必要だしその前にマグマが迫ってくる。そこを何とか下着とか数枚の着物だけにしてと頼むと渋々選び始める。とても優雅にのんびりと選び始めたので近くにあった大きめのトランクを持ってきて横に静かに置いてロックを外して口を開けて待つ。


それを見た彼女は微笑んで答えるのみでスピードは上がらない。それどころかあっちへ行きこっちへ行きと迷いだし終いには笑顔が消えて真面目な顔で悩みだした。僕自身着るものに頓着しない性格なのでこんなにも悩むのが分からない。この世界に来てラティに選んで貰った肌着と軽鎧のみで他は持ち合わせてはいない。武器も今や師匠から頂いた特製の篭手のみ。


「どちらが似合います?」


 赤をベースにした着物と黄色をベースにした着物を左右に其々持って僕に問う。これは難しい質問だ……彼女の髪の色と合う方が良いと思ったので黄色をベースにした着物、と答えると驚いた顔をされた後ににっこり微笑んでそっちをトランクに入れる。


それからどちらが良いかタイムが続いたものの順調にトランク一杯に着物を入れ込み、更にもう一つの方に肌着とか下着とかを放り込んでくれた。二つにはなったものの彼女は一応納得したようで切り上げてくれるらしい有難い。


「ご協力感謝いたします。貴方はもっと雑で適当な人かと思ってました」

「そりゃどうも。お眼鏡に適う働きが出来たなら何よりです」


 取り合えず皮肉交じりで返すも笑顔で帰ってくる始末。溜息を吐きつつ首を傾けて答える。僕らはそれから最初に入ってきた入口へと移動した。そこから彼女の先導で元来た道を戻る。別の横穴があるらしい。暫く歩くと見え辛いところに横穴がありそちらへ入る。


「参ったなこりゃ。ちょっと失礼。悪いけど道案内を頼む」


 一旦トランクを下に置いた後彼女を担ぎ上げ肩に乗せ、頭にしがみ付いてもらった後トランクを拾って走りだす。地鳴りがしているので恐らくマグマがこっちまで来ている可能性がある。ある程度で治まればと思ったけどこの距離でもまだ足りないらしい。まさか星の核まで近いのか? それとも月読命たちの機械か何かの影響か。


ミコトの的確な案内によって迷いなく高速で突き進み何とか地上へと出れた。彼女を抱えたまま大きく飛び上がり周囲をぐるりと見渡す。山火事はこっちの方まで広がってきている。ただ夜に変わっていた空も解けた代わりに雨雲が広がっていた。この分だと雨が降って鎮火するかもしれないと思うと一安心だ。


「これは酷いですね……ですが起きてしまったのは仕方ありません。力を借りて火事を沈めないと」

「何とかなりそう?」


「何とかしないと自然が失われてしまいます。この星に失っても良い物など一つもありません。失うなら苦渋の決断と罪の意識があって然るべき」


 彼女の真剣な表情と初めて神様っぽい言葉を口にしたのを聞き感心し頷く。彼女は目を閉じ俯いて小さな声で呟いた後懐から笹を取り出して空へ向けて振る。


「さ、行きましょう。これ以上は人の身では何も出来ませんから」

「了解。で、どちらまで行きましょうか」


「このまま真っ直ぐ進むと人の町があります。取り合えずそちらへ行きましょう。少しばかり持ち合わせがありますので」


 それを聞いて頷き走り出す。持ち合わせがあるとか言う辺りそんなにズレてはいないんだなと感心しつつ僕の持ち合わせどれくらいあるっけと考えながら急いだ。




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