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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
敵本拠地襲撃編

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新たなる……

 誰かに蹴られた僕は上空へ上がりそのまま場から離れていく。さっきまで居た場所はマグマの海となり周囲の森は火が燃え移り山火事になっていた。僕としてはそのまま地面に落下して激突して一回死んでも良いかとも思った。だけど最後の女神様の”ごめんね”っていう言葉と笑顔を思い出し体勢を立て直して着地を試みる。高い木の枝を掴んでは下りを繰り返して落下速度を殺しつつ何とかダメージ少なく地上に降りれた。


死んでも死なないけど、あの姿を見たらそんな軽率に捨て身は出来ない。後を託されたからには生きて女神様の期待に答えたい。先ずはここを脱出してカイビャクの国まで戻らないと。僕は飛んできた方向とは逆の方へと走り始める。暫く走っていると物凄い殺気を感じた。この辺りで感じるとしたら一人しか居ない。このままずっと粘着されるのもウンザリなので早めに対処しよう。


「おい、おっさんのかくれんぼは子供相手以外は流石にダメだと思うぞ?」


 足を止めて辺りを見渡した後冷静に問いかける。すると茂みからのそのそ出て来てその姿はまだ変身したままだった。


「良く分かったな。流石動物と同等だから勘が鋭い」

「その通りだ。僕もお前もこの星の一部だし動植物も同じ」


「馬鹿な。動植物と我々が同じ?! 我々に飼われ管理されるしかない生き物が同じとは片腹痛い」

「お前も月読命に管理されてたじゃないか同じだよ結局」


 この期に及んでまだ強気なのは流石に恐れ入る。ただ僕の言葉に返す言葉も無いらしい。多少は堪えているようだ。少し待っていると身を震わせ肩を落として言う。


「貴様らが……貴様たちさえこなければこんな目に遭わずに済んだのに」


 僕が虐めてるみたいで可哀相になって来たから慰めようかとさえ思うレベルで弱り始めたマウロ氏。何がしたいのかねこの人。


「こっちだって急にここに来させられて迷惑してるんだ。帰りたいんだけど道こっちであってる?」


 女神様を失いこっちだって一人悲しみに暮れたいけどそんなのしてたら女神様にドヤされる、そう思って踏ん張って自らを奮い立たせている。付き合いきれないので用が無いなら移動したい。


「誰が貴様らをここに?」

「……人の質問に答えろよ。道はこっちで良いのか?」


「ああそっちだ! で、誰が貴様らを!?」


 適当に答えたのがまるわかりの態度で再度質問してきた。馬鹿馬鹿しいので無視して先に進む。また暫く進んでいると後方から奇声を上げて突っ込んできた。当たり前のようにひらりと避ける。


「あ、ごめん」

「許さんぞ……許さんぞ貴様」


「許さんだと……?」


 マウロが突っ込んで崩した体勢を立て直しつつ僕に向かって指を刺して言った言葉。それに僕はお腹の下の方から湧いてくる冷たさとドス黒い感情を抑えきれない。今までの力の入れ方とは違う感じの入り方で全身が気と力で支配される。


「ああ許さんぞ下等生物と汚物の神め! 貴様らの所為で我々の計画が」


 最後まで聞く必要はなかった。こいつに対して今まで優しすぎたくらいだ。女神様を侮辱された瞬間、今まで出した覚えのない速さでマウロまで移動し足腰肩全てが流れるように動いて気は拳に集中しマウロの顔面を真正面で捉えて吹き飛ばした。僕は生まれて初めてレベルの怒りで身を震わせ怒りで可笑しくなりそうな気持を吐き出すように拳を地面に叩きつけた。


しかし怒りに支配され続けるのは良くないというのを思い知る。地面は砕け運悪く下は空洞だったらしく陥没。僕も当然そのまま落ちていく。あまりにも不甲斐ないしやり場のない怒りにこれまた生まれて以来二十年振りに腹の底から叫び声を挙げた。


怒ってもどうしようもない、というか怒れば怒るほど悪い方にしか転がらない。そう誰かに言われたのを思い出しつつ暗闇を落ちていく。その人物が一番怒っていたような気がする。自戒だったのかもしれない。


取り合えず上から落ちてくる岩を砕きながら辺りを見回す。中々の空洞みたいで地面がやっと見えて来た。急いで上に行かないとこっちにもマグマが来るかもしれない。方向自体は変わらないだろうからそっちへ向けて走るべく着地して直ぐに転がり、その勢いで立ち上がってそのままに走り始める。ただ前のめりになりすぎて何かあっても避けられないから吹き飛ばすつもりで突っ込むけど出来れば速度が落ちて止まれそうな時に出て来て欲しいと願いつつ走る。


「やっぱダメか」


 思わず心の声が漏れてしまった。目の前に大きな扉が立ちふさがっていた。だけど止まれる筈もない。後少し先なら何とか扉を駆け上がったりして止まれたかもしれないけど今は無理。覚悟を決めて扉に突っ込むと扉は難なく壊れその破片に躓いて僕は転がる。色々破壊した後やっと止まった。


「うぎぎ……やっぱり勢いだけでは振り切れないものがあるなぁ。でもやっと止まれて良かった」


 瓦礫から起き上がり辺りを見回すと、そこはまたしても神秘的な雰囲気を醸し出している場所で、木造建築で日本風の神社伊勢神宮のような場所だった。思いっきり月読命の趣味だろうなぁと思いつつその場を探索し始める。今まで怒りに捉われていたのが全く無くなり心が落ち着く。今までの疲れすらも解けて行くようだった。


暫くその中を歩いていると、小さな池の側で笹を天井に向かって振っている人物が居た。白い衣を着て赤い袴、巫女さんぽい恰好に髪は膝まである綺麗な空色。その姿をぼうっと見つめていると視線が合う。顔は幼いけど将来美人になりそうなとても整った顔立ちの人物が笑顔で会釈したので僕も会釈すると、その人物は手招きした。それに釣られて良い物か迷ったけどどうせここから出る為に道を尋ねたいのもあったしと思い近寄る。


「こんにちわ野上康久さん」

「こんにちは……って、ええ!?」


 近くまで寄っていきなり名前を呼ばれたので驚く。僕は変身を解いてないから見ただけで分からないだろうし何故こんな場所で知られているんだろう。ひょっとして僕は有名人!? ……などとボケている場合じゃない。月読命の趣味の場所に居るんだから彼女の仲間だろう。だけど悪い感じは全くしないどころか神々しさすら感じる。


「ふふ……私はミコト。この星の新たなる神になりました。つきましては貴方にはこれから神派として邪悪な教団を駆逐して頂きます」


 とても綺麗でさわやかな笑顔でとてつもなく物騒な言葉を口にする少女A。一体何を言ってるのか理解不能である。

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