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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
敵本拠地襲撃編

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この星の聖域

「ああああああ!」


 空中を飛ぶ術なんて当たり前だけど持ち合わせていないので泳ぎの真似をして見るもこれも当然のように落ちていく。叫ぶのと景色を確認し何処かの山奥っていうのを理解して下に広がる木の絨毯を見る以外ない。一か八かだけど風神拳の体勢を取りつつ木々が迫ってくるタイミングを見計らい


「風神拳!」


 師匠から教わった技に望みを掛ける。落下しているので風の抵抗が物凄いけどそこを踏ん張って突き出した拳の先に風のバリアが発生し、迫ってくる木々の枝を押し退け地面に辿り着く頃には死なない程度の速度にまで落ちなんとか受け身を取りつつ無事地面に到着した。


上空から見た限りギアナ高地かってくらい木々で埋め尽くされていた。マジでこれは参った。ラティを助けるどころか元の町まで戻るのすらままならないとは……。闇雲に歩いてもどうにもならない。こういう時は面倒でも山に登って町がありそうな場所を探すしかない。


 僕は気を取り直しランニングしながら山を目指す。幸い山はそう遠くない位置に見えた。そこから見渡せばきっと何かしら見えるに違いないと信じて進む。進みながら辺りを見渡すけどここには動植物や昆虫は見えるけど大きなものは存在していないようで、とても静かな感じだ。人や意思の大きなものが居ない特別な場所、神聖な場所なのかもしれない。


気付けば焦ったり怒ったりといった負の感情が消えているし体力が回復しみなぎってきた。今ならあの第十騎士団全員ブチのめせるという自信まで湧いてくる。そう言えばあの駄女神の声も聞こえないしめっちゃ素敵な場所だなここ。暫くここで修行しようかな。


とても素敵な気分でランニングし山を目指していると少し先の方にどす黒い煙が地面から湧き出ていた。何かここを解明するヒントに繋がるかもと思ったけど、近付くにつれて全身の毛がぶわっとし逆立ち引き返すよう警告を発する。まさかと思いながらよく見るとそれはどす黒い気を纏った人だというのが分かった。僕は引き返そうとしたけど何故か止まるのも出来ない。


「世界の果てまで吹っ飛ばす……パァアアアアアンチ!」


 いやぁ死んだね。確実に二度は死んだよね間違いなく。先ずインパクトの瞬間、次に吹っ飛ばされて色々な物とかにぶつかって。何日くらい無駄にしたのか分からないけど何処かの地面に激突して気を失う。物凄い形相で振り被り拳を叩き付けて来た駄女神もとい女神様は裏表のない素晴らしい方だよホント。自らを省みず暴力に訴えるところは敵味方関係ないからねマジで。


神様も色々居るっていうけどギリシャ神話も日本神話もしっかり読むとえげつないから僕としては特に驚きはしないキレそうだけど。一緒に前に戦ったけど悪い方じゃないんだよね物凄く雑で説明も端折るけども。


「起きろハゲ」

「誰の所為でハゲると思ってんだ駄女神……!」


 どうやら親切にカーマに戻してくれた訳ではなくこの星を一周して来ただけらしい。その御蔭か肉体の再生がとても早く気分も良いハゲと言われた以外は。うちの祖父は確かに頭皮が寂しかったけどハゲては居なかった。仮に僕や子孫がハゲたのならそれはストレッサーの所為に他ならない。今の僕ならハゲ呼ばわりした人物だ。反省してもらいたいしお前がハゲろ。


「起きろっつってんだろが」

「うるっさいなぁヤンキー女神が」


 言いたいのは山々だけど話が先に進まないのでダルいけど体を起こす。木漏れ日がさしてる感じからして朝方っぽい。何日経ったのやら。女神様は相変わらず顔の傷が無くても迫力ある睨みを効かせ腰に手を当て仁王立ちで僕を見ている。恰好はコントに出てくる探検家みたいな感じで遊んでんのか? と思った。


「魔術魔法耐性にチート能力を全ツッパしたのは間違い。これは想定外だ」

「ネトゲかソシャゲの運営かよ」


 ボソッと突っ込むと綺麗な御身足を顔に頂く。想定外ってそもそも想定するぐらいデバックしたのかって話よマジで。金貰って働いてる人間が金払って遊んでるユーザーに出し抜かれてどうすんだよ。完璧にはならんだろうけど頻繁に想定外を繰り返せばそんなもんわざとやってるとしか思えないわ。売上上位のゲームにはそれが殆どないのが証左でそれで売り上げ落ちたとか馬鹿かと。ユーザー舐めんな。


「兎に角お前の能力を無効化するような手立てを持たれた以上、アタシも介入して根源に辿り着かないと」

「根源て?」


 なんでも暴力暴力。女神様の手刀が僕の頭部にガスッと入る。よく割れずに済んだよホント。


「お前の目的を忘れるな。星の意思に会うって奴だよ」


 そう言われてああ! となったものの直ぐに真剣な顔をして頷く。ラティとの日々ですっかり忘れ去っていたけど僕は星の意思に会う為にデラウンとか冒険者ギルドでランクを上げ、行動範囲を広げていたんだった。何とか首都まで移動できるようにはなった。


「ここはお前も分かるようにこの星の何処とも違う雰囲気を醸し出している。お前が気分が良くなっているのが分からない。アタシは気持ちが悪い」


 女神様の言葉に驚く。こういう神聖な場所っていうのは女神様たちにとってはエネルギーを補給出来る場所なんじゃないのかな。


「恐らくここが奴らの理想郷なんだろうよ。意志の弱い生き物だけが住む世界。食物連鎖が起こっているにも拘らず”殺しの無い優しい世界”とかまさに反吐が出る」

「人は要らないって感じですか?」


「いいや違うね自分たちより賢く強い意志を持つ者は要らない、だ。奴らはこの星を核に新しい世界を作ろうとしている。アタシが追ってる男はそれを成し遂げた男。奴が介入してるとなればその可能性は無くはない」

「そんな神様みたいな真似出来るんですか?」


「普通は無理だね。あの男も特別な能力を有して生まれ鍛錬を重ねたからこそ出来た。最も偉大な協力者が居てこそだけど。月読命は足りない分をこの星の人間やモンスター更には星の意思のエネルギーにこの星に充満していた魔術粒子(エーテル)を使ってやろうとしているのは間違いない。竜神教(ランシャラ)をエネルギー集めに利用してるんだろうと思う。だから星のエネルギーを利用なんて出来るんだ」

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