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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
カーマ編

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アルタの町から

 チャップマンに馬車の運転を任せて急ぎアルタを目指す。草原から森そして山道へと入り凸凹した道を地図も見てないけど手綱捌きはとても見事で、恐らく後ろから竜が迫ってきても逃げ切れるレベルだと思う。後ろの荷台の斬久郎さんが必死にしがみ付いて悲鳴を上げかけるくらい凄かった。馬の限界を引き出して更に超えてった、みたいな?


それから四日は掛かると言われていた行程を馬の休憩以外は無言で走り続けて二日。大きなカーマより更に大きく塀には豪華な装飾のされた垂れ幕が幾つも掛かっている町に着た。そのまま無言で列に並び、入り口で検問を受ける。兵士たちから大丈夫かと声を掛けられ無言で頷く。


僕たちに不安を感じた兵士たちは療養所まで先導しチェックを受けさせられた。勿論何も無いある訳がない。ただ早く帰らないと大変な事態になるのだけは間違いない。あのクアッドベルにすら心付けを貰った上懇願するような目で早く帰ってきてくれと言われる始末。いや御前の所為でこんな話になったんだけどな! 無しでって言えば済むんじゃないのか!? と思ったけどそんな話をすれば更に詰められる可能性大だったので脱兎の如く飛び出してきた。


「さぁ案内してくれ……」


 荷台で二日間急流下りをやり続けたレベルの揺れを体験した斬久郎さんは足元がまだ覚束無い感じながらも杖を頼り歩く。その弱弱しい言葉に涙がこぼれそうになるも、口を手で押さえ頷くチャップマン。辛すぎんかこれ。


町の中をじっくりと見る余裕も無く彷徨う僕ら三人を町の人たちは避けて歩く。そらそうだ怖すぎる。しかも後ろから兵士が付いてきていて、町の人たちが兵士に話をするも検査の結果異常無しと説明していた。僕の居た世界ほど完璧な検査じゃないから不安になるのも分かる。


「こ、ここです」


 チャップマンが立ち止まり指を刺した場所を見た後、僕らは更に見上げる。そこにはこの世界の文字で”アルタ政庁”と書いてある。僕たちは唖然として少し間があった後、チャップマンを見る。俯いたままで反応がない。そして気付けば両脇に兵士たちが並んでいる。拘束されるのかと思いきや、ただ立ってるだけという凄い圧を感じる事態になっていた。


引き返す、なんていうのは出来そうもないので僕らは政庁の中へと入っていく。カーマやデラウンとは違い、とても豪華な作りの建物だ。大理石っぽい床と壁に間隔を空けて並ぶ高そうな芸術品の数々。ここは儲けているっていうのがとても良く分かる。


チャップマンは迷わず奥へと進んでいく。一体何がどうなっているのか。僕らは唖然としながら付いて行く他無い。クアッドベルはこれを知ってて僕らを是が非でもここへ来させようとしていたのなら、僕が考えていたのとは全く別の可能性が生まれてくる。クアッドベルは統治局の主であると同時にアルタとも繋がっているとしたら。


「どうぞ」


 暫く真っ直ぐ歩いた後、螺旋階段を上がり五階へ着くとまた真っ直ぐ歩いて行くと大きな扉が目の前に現れる。嫌な予感しかしない。勤めてる役人の子供とかならまだ良かった。これはとても面倒な話に巻き込まれる可能性しかしない。どうぞと言われても入りたくない。斬久郎さんは呆然としている。


そりゃそうだよなぁ。養父母の殺害はとても大きな問題に巻き込まれたとしたら軽率に乗り過ぎた。かと言ってもう逃げられるはずも無い。雇っていたと思っていた情報屋にしてやられた。マクシミリアンだけじゃなかった。世の中怖い話ばかりだ。


「どうも、そこへ掛けて」


 扉は兵士によって開けられチャップマンと共に中に入る。だだっ広い部屋には豪華な絨毯にカーテン、美術品にソファや机。豪華じゃないものを探すなら人間以外無いって感じの凄さだ。その机に座っている人物は、白髪をツンツン立てていて歳は六十過ぎ位。綺麗に仕立てられたブラウンの背広に赤いネクタイ白いワイシャツ。蓄えた口髭も白い。


ただそれらを置いて目立つのが肉体だ。明らかに生半可な鍛え方では辿り着けないボディビルダーのような上半身と机に両肘を突いて手を組んでいる手からして、御行儀の良い人物では無いのは分かる。元の世界で寒い大地の王様が居たけどあれを上半身強力にして髪型変えたみたいな感じだ。目つきも鋭く鼻も高いし怖い。


チャップマンは普通に歩いてソファに座る。僕らはそれどころじゃない。目の前の人物が怖すぎる。カーマのトップは見てないけどこの世界はトップに座る人間が只者じゃ無い感が凄い。頭が良いだけじゃなく人望もあって腕も立つ、じゃないと上に立てないって分かる。人類の人口が少ないから凝縮されているからなのか月読命たちの選別の結果なのか。


「座りたまえ。敵将を前に緊張するのは道理だが」


 机からソファに移動しゆったりと座るこの部屋の長。偉そうにドカッと座るのではなくスッと座る辺りこの人に慢心も何も無いのが窺い知れる。座った後僕らに視線を向けそう言うけど、全てに圧倒されて動き辛い。


「取って食う心算なら遅い。それは分かるな?」


 有無を言わせない感じが凄い。取り合えず反抗しても無駄なので僕たちは大人しくソファに座る。勿論チャップマンとは間を開けて。

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