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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
春の襲撃編

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現れる最強の魔人

「随分余裕じゃないか? ええ!? 御前の仲間が死に絶えたのなら今度は御前の番だ! 偉そうな口を利きやがって一切の慈悲無く粉微塵に切り刻んでくれるゆっくりとな!」

「ホントどこいっちゃったのかなぁ……っと」


 ゆっくりと周囲を移動し始める僕。てか自分の糸で雁字搦めにされておいてよくもそんな口が利けるよなぁ……そういう点も感心するわ。どこで間違えたのか知らんけど。……そう考えると段々知りたくなってくる不思議。いかんなぁうちにはセオリが居るだけでも手間が掛かるから情が移るのはダメだ。祖母ちゃんにも一生面倒見る気が無いなら飼うなって言われていたし。あれ、僕何か飼って無かったっけ……。


「永遠に無視する気か?」


 どんだけ構って欲しいんだ。本当に面倒だからそろそろ捨てたい気分。それか誰か引き取りに着てくれないかなこれ。周囲は段々と暗くなり視界も悪く……はなってない。この状態の御陰かかえって今の方が視界が落ち着いて見える。僕も夜行性なんだろうか。自分の状態を確認しつつ町の周囲を回って見るも本当に静まり返っているし明かりも無い。ゴーストタウンみたいに見えてきた。後引き摺ってる奴がゴソゴソしててめんどくさい。


「よぉ、こんなところで散歩か?」


 声に振り返るとそこには金ぴかに輝く鎧を身に纏い、篭手から出ている剣を下に向けたままのリベリさんが居た。一瞬ホッとしたけど直ぐに距離を取る。僕のこの状態を知らないだけでなく、何で今更リベリさんがここに居る?


「リベリさん?」

「その声は康久か? 変な格好をしているから気付かなかったよ」


 そんな会話をしつつ、銀髪癖毛メガネだった者の糸を切り開放し並び立っていた。距離を取った時に糸を切られていたのか。流石ゴールド帯。銀髪癖毛メガネは準備運動を軽くした後、ひとさし指を僕に向けて


「ここまでだ差別主義者の蛆虫にして下等生物めが! 今度こそ粉微塵にしてくれる!」


 と変わらず元気に声を張り上げ汚い言葉で啖呵を切る。誰かを見下さなきゃ気が済まないんだなぁどんな状況でも。最後まで自分が優位に立つ可能性を捨てないガッツだけは褒めておきたい。そして何度でも言いたい差別主義者はお前だと。


「おいおいそんな元気な声でがなるなよ。耳と心が穢れるだろっ……と」

「え……?」


 あまりの出来事に僕は声が出なかった。隣でにこやかに立っていたリベリさんは僕が辛うじて目で追えるレベルの速さで銀髪癖毛メガネだった者を切り刻んでいた。あの硬そうな装甲をものともしないなんて……リベリさんって一体何者なんだ? 戸惑いながらも僕のセンサーは緊急警報を鳴らし続けている。不味いなぁこの人とやりあいたくないんだけど、相手はやる気満々なようで素振りを始めた。


「ふむ……血が上手く取れないが致し方ない。君も似たようなものなのだろう? この穢れた生き物と」

「な、なんだと貴様……ガッ」


 リベリさんは虫の息っぽい銀髪癖毛メガネ……の状態に戻りうつ伏せで這っているそれの背中に剣を突き立ててグリグリしている。どんだけ嫌われてるんだ銀髪癖毛メガネ。ちょっと可愛そう、じゃない可哀相になってきちゃったよ。


「まだ生きてるのがゴミ虫め。御前の様な不快な存在が目の前に居るだけでも十分不快なのに、その上しぶとく生きているなど反吐が出る。さっさと息絶えろ?」


 顔色を一切変えずにグリグリと剣を動かしながら嬲るリベリさん。こーわっドSどころの騒ぎじゃないよ残虐非道レベルだよこれ。聞いた感じ仲間っぽいのに容赦の欠片も無い、てかこの人らああ言う口調と思考がデフォルトなのかな……嫌だなぁ毎回これ聞かないと駄目なのかな。こっちの耳と心が穢れるわ。


「あのー大変恐縮なんですが、それ、御宅のお仲間ですよね?」

「は?」


「ぎゃあああああ!」


 いや、ね? 一応確認したいじゃない? 恐らくそうだろうけど聞いちゃいけないだろうとも思ったけども、だ。まさか聞いただけで銀髪癖毛の腕が斬り飛ばされるとか思わんじゃん? 


「ああ良かった静かになったようだ。でもね康久、君が悪いのだよ? こんな糞虫と私が仲間などと汚物で私の顔を塗りたくるような酷い差別用語を口にするからこんなになったんだ。謝りたまえよ彼に」

「えぇ……」


「謝れと言ってるのが聞こえんのか!」

「あああああ!」


 最早地獄絵図。逃げたいんだけど怖すぎるよ銀髪癖毛が見るも無残凄惨な状態になってるんだけど……静かになった、というか気を失った銀髪癖毛は右足の膝から下が無くなり激痛に再度目を覚ましのた打ち回る。サディストこえーよマジで!


「まったくねぇ……新進気鋭の冒険者だからってさぁ? 言って良い言葉と悪い言葉があるのが分からないのかねぇ!? これだから教養も無く思考力も皆無な集団というのは度し難い屑なんだ。屑だけならまだしも星の負担になるのだから尚更性質が悪い。糞っ! 糞っ!」


 もう多分生きてないであろうそれをザクザクしてるリベリさん。それで気が晴れてこっちに向けないでくれるなら良いんだけどなぁ……淡い期待よなぁきっと。暫く無心でザクザクしていたリベリさんは手を止めてふぅ、と息を吐いた後剣を引き抜いて血を払う様に振る。


「ふむ……血が上手く取れないが致し方ない。君も似たようなものなのだろう? この穢れた生き物と」


 怖い怖い怖い! さっきも同じ台詞を聞いたんだけど! ついに本格的に壊れた!? いや元々壊れている説を唱えたい。唱えても良いけど口にしたらあれと同じになるので今は黙っておく。御機嫌宜しいようですしお寿司。って流石にこの状況でお寿司なんて言葉は駄目だ。想像しちゃうし目の前ので吐きそうになる。今後お寿司食べれないかも……それ言ったらお肉も食べれなくなるそっちの方があれだし。駄目だ駄目だこんな時に食べ物なんて想像しちゃ! てか誰でもこんな悲惨で凄惨な現場を知人がやってるとなれば現実逃避したくなるよね……。僕はそういう意味では正常なんだと少しホッとした。


「落ち着いたかね? 良い意味で冷静に悟ったようで何よりだ。ならば死ね」


 落ち着かせたところで襲い掛かるっていう素晴らしい狂気。普通なら首飛んでるねこれは。一週回って冷静になったので、太刀筋が良く見える。変身してるからだろうけど、変身してなかったら死んでるわ確実に。これがゴールド帯の本気の攻撃なのか!? 早過ぎて弾くだけで精一杯だ。絶対これより上のスピードだせるよなぁこの人サディストだし現に凄いニチャッて笑ってる怖いよぉ!


「良いぞ……良いぞ……! 良い! 実に良い! あまりの素晴らしさに達しそうになる! イキかけている! これこそが私が愚鈍な連中に与する理由よ! ただ体を弄るのではなく絶え間ない研鑽の上にあるのだから。それでこそ私の機嫌も良くなる上等な肉となるのだ! 恐竜等と言う脳味噌がミジンコにも劣る感情欲望のままに貪る様な下品下劣な生物など斬るにも値せん!」


 わーいとっても御機嫌だね! 気が遠くなりそうだけど声が上ずりながら唾を飛ばしつつ興奮して斬りかかってくる相手を前に気なんか失えるかっ! 凄まじい連撃を避けたり弾いたりしつつ凌ぐ。暫くしてそれに僕の体も慣れてきたので反撃しようと隙をうかがおうとすると、めっちゃニチャッて笑った後口開けて馬鹿笑いしてるんだけど……。

 



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