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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
春の襲撃編

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個と群、生と死

「変身!」


 自分の掛け声と共に炎に包まれ焼かれそれを修復するように甲殻が僕を覆う。この間数秒じゃないだろうか。一瞬で死んでまた生き返ってという地獄を味わう。その一瞬の意識が飛んだ時誰かと目があった気がするけど、誰かまでは分からなかった。それが誰なんだろうかなどと考えながら銀髪癖毛メガネの間合いに飛び込み拳を相手の腹に触れさせる。


バリアの正体は僕の仮説なんだけど攻撃する意思、敵対意識に反応する防御壁みたいなもんだろうと思うそれも魔法による。この星には前にも魔術粒子が存在し魔法魔術を行使していた。それをゼロにした方法はあるんだろうけど、あの月読命が捨てるとも思えない。この銀髪癖毛メガネもそうだけど、自分たち以外はダメだけど自分たちは良いを地で行ってるのは明らかだ。それを相手に強要し実行させているのが更に悪質でまさに圧政を敷いているに等しい。表に出てこないのがまた悪を際立たせている。


「シッ」


 息も吐かせぬようそして防がれぬよう考え事をしながら連打を叩き込んだ。そして型の締めで蹴りを出すのでそれもプレゼントし両手を合わせて一礼する。敵意なんて一切無いし力も拳を突き出す以上に余計な力は一切入れてない。どうやら正解だったのか銀髪癖毛メガネはどっかへ飛んでいってしまった。一応今のところは仮説が当たっていると考えて良いかもしれない。これハオさん辺りなら余裕でやってそうなんだよなぁ。となるとやっぱりハオさんが生き延びていると思う。彼らに急襲されようがあの人は揺るがない。


「あ、あぁ……」


 振り返るとシュリーが腰を抜かして後退さっていた。この場合僕が怖いのかそれともあの銀髪癖毛メガネが倒されて恐れ慄いているのか、銀髪癖毛メガネを怒らせた可能性があるのか、どれなのか判断し辛いけど怯えてて話を聞けそうもないので一旦町まで連れて行こうと思った。シュリーを小脇に抱えて急いで町の近くまで戻ると、塀の上にラティが居たのを確認して木陰から声だけでシュリーの回収を頼み、シュリーだけ見えるところに置いてさっきのところまで戻る。


先の荒れ地では恐竜たちが相変わらずうろうろしていたものの、何頭かは砂漠オオカミたちと交戦し始めていた。それに関しては驚かない。寧ろ今までよくただボーっとしていたなぁと感心するレベルだ。となるともう主犯一味は明らかだ。それにしてもあいつらズルしすぎだろ。魔法は使うわ恐竜は操るわ何でもありだな。僕のチート能力なんて可愛いもんだ。あっちは集団で今まで人間のみを標的にして減らして来てるんだから。僕程度じゃ釣り合い取れないと思うけど僕より強い人山ほど居るし。てか僕本当にチート補正受けてんのか段々自信なくなって来た。それともチートしか居ないとか? いやそもそもチートってなんだっけ?


「あーだめだめ。今考えても直ぐ答えが出ないや」


 ドつぼに嵌まりそうだったので頭を振る。そもそもの話僕がなんでここに居るのかすら分からないし、その上何度も絶命するレベルの深さで御腹に包丁を突き刺されたような痛みを与えられてるのかも意味が分からない。更に最近は火傷まで負うし……。元の世界の僕がこんな目に遭ってるんだとしたら帰りたくないなぁ。


「おっと、敵意剥き出しはダメだよ?」


 背後から攻撃が仕掛けられたので即距離をとる。元の場所はクレーターが出来ていた。この状況でこんな敵意を向けてくるのなんて一人しか居ない。てかよく帰ってきたなぁ。


「許さんぞ虫けらが!」

「君らそういうの言わなきゃいけない決まりがあんの? 一々人を見下して決め付けて。差別差別言う奴が一番差別に敏感なのに、自分が差別してるのに気付かないのはどう言う了見なんだ? 御前らの言う平等とか理想とかってのはさ、御前らにとって都合がいいかどうかだけなのに御大層な御題目に包んで正義面すんじゃねーよ。はっきり言ってみろ自分たちの思い通りに人を玩びたい自分たちだけが最高の存在でありたいってな!」


 行き着くところ生物全て自分勝手なのは変わらない。それを人は知識と教養によって押さえ込んでいるだけ。生きるのに精一杯で明日すら見えない生き物にとって主義主張なんて現実の前には何の意味もない。余裕だからそんなものが頭にあるんだ。この世界に来て一番大きな学びだと思う。


「相変わらず知性の無い連中だ。御前たちのような足りない連中を導き補う為に我等がいるのだ。黙って従っていれば良いものを余計な詮索をするからこんな目に遭うのだ」


 銀髪癖毛メガネの声がするからそうだと思うけど、目の前には銀色のプレートアーマーに背中から蝙蝠の羽を生やした者が立っている。こっちは死に掛けて手に入れてる力なのになぁ……ズルいなぁズル過ぎるわ……。でも敵意を持ったらダメだから一応吐き出したし切り替えていこう。ただぶっ飛ばすだけでいい。それで十分足りる。


「知恵や理念が無いから即暴力に訴える……下等生物というに相応しい」

「一人ひとり、いや動物も含めて個性がどうの言いつつ自分の主張と違う人たちを纏めてレッテル貼り。そんなんで支持するのは御前たちと同じ考えの差別主義者だけじゃないのか? それで人を駆逐してこの星を守れるのか? 最後にはお互いを差別し合い殺しあう未来しか見えないぞ?」


「馬鹿な。我々はそんな安い絆で結ばれては居ない。お互いの理想も思いも知った上で母上とも共鳴しこの作戦を遂行している。その先に待つのが我らの滅びであったとしても満足だ」

「そりゃ今は御前たちが滅ぼしてる側だからだろうが。いざ滅ぼされる側になってみろそんな素直に受け入れられるものかよ!」


 命には限りがあるからこそ死を恐れる。特に死へ追い込んでいるなら尚更恐れるだろう。権力者支配者が不老不死の方法を血眼になって探していた記録すらある。権力者やその周辺が生き延びる為に民から臓器を無理やり取って移植するなんてのもあるくらいだ。全ての生き物は自分勝手であると認めた上で、同じ死というゴールがあるのを認識しどうやったら気持ち良く生きられるか考えられたら素晴らしいと思うし、そうなら協力したい。


が、その真逆を地で行く連中なら戦うしかない。僕はそれとは相容れない。ただでさえ生きる為に奪わなければならないのに、主義主張で奪い更には自分たちと相容れない人間たちに対して生存をコントロールしよう、果ては滅ぼそうなんて神様みたいな行為を容認できない。

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