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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
春の襲撃編

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震える大地その三

 僕の問い掛けに答えないシュリー。この間も恐竜の残党はウロウロしている。どうやら司令塔が居ないらしい。となるとデラウンに向かって来たのは誰かが仕向けていた可能性がある。それを探さないといけないけど、今こちらが何も無いならこうやって黙って向き合っているのも無駄にならない。その間にゴールド帯に連絡が入って少しでも回ってくれば……。


「ひょっとしてゴールドランクたちが大勢来ると思ってる?」

「いや」


 シュリーに問いに答えず新たに問われたので即答で返す。大勢来るならもっと早くに来てる。彼らはデラウンの為に来たのだから。その答えに対し面白くなさそうな顔と態度を取るシュリー。となると月読命一派が乗り込んで来た可能性があるのか!? そうなると流石にゴールド帯でも無理があるかも……。こうなったらあのバリアが壊れるまで殴り続けよう。それしかない。


 距離は離れていなかったのでそのままバリアを破壊する為に乱打するも、全くシュリーの体には届かない。当のシュリーは嫌らしい顔をして見ているだけだった。それだけ自信があるのだろう。僕を知らないようだからウルド様関連のみの対策じゃない。他の人間でもこれを超えられない。そうなるとこっちの問題なのか? 攻撃しようとする意思に反応しているとかそういうのかな。だったら瞑想するような心持ちになって、赤ん坊が手を伸ばす感じで手を出してみよう。


「なっ」


 敵意も攻撃する意思もなくなるには暫く時間が掛かった。それでも師匠と鍛錬している時を思い出したら何とかなった。何も考えずただ只管こぶしを前に突き出す。己の全てを放出する。そこにはそれ以外何も要らない、そう師匠に言われていた。言われていたけど中々難しく、どうしても仮想敵が頭に浮かんできてしまっていた。今回はシュリーが相手で、改めて考えてみると敵なのかどうかも分からなくなっていた。最後にあった時を思い出すと腹が立つものの、別に憎い訳ではない。改めて見ると怪我がまだ全快ではないみたいだから心配だなぁと思った。で、バリアを壊したら何がしたいのか? と考えた時、シュリーが裏で糸を引いていただけではないから早く次に行かないとと焦っていたから急襲した。そこがダメだったんだろうな、と。


「よう、久し振り」


 変身を何度もするのは本当に厳しい。てか死なないとは言え痛くない訳じゃないから辛過ぎる。だからと言って知り合いに死を与えるのは違う。確かにデラウンは大変だし守らないといけないけど、僕が多少リスクを負えば何とかなるならそれが良い。チートされている分だけ代償を支払えばトントンになるだろう。実に間の抜けた声の掛け方だけど、変身を解いて痛みから解放された今、僕にはそれくらいの言葉しか出ない。


「お、御前は誰だ!? その姿、いや前の姿……え、え!?」


 恐れ戦いている感じだ。まぁ変身を解いて人が現れただけでも驚くだろうけど、僕が現れたのも驚きだろう。記憶の混乱があるようだ。でもバリアは無くなっていた。そうなると予想が当たっているのかもしれない。


「あっつ……」


 元に戻る時、元着ていた服も復元される親切設計。なのは良いけど火傷が瞬時に治る訳ではないので直ぐに上着や軽鎧を脱ぐ。火傷は無しで復元してくれたら良いんだけど、どうやらこないだのネルトリゲルの一件でウルド様に乗っ取られてからパワーアップしてるみたいだ。能力だけじゃなく変身の際の痛みも、最初針で刺されるような感じだけだったのに火傷のおまけまで付いてきた。


「あ、あぁ……だ、大丈夫!?」


 よろめきながらも駆け寄って火傷をしているぼくの腕を取るシュリー。あの時の出来事を思い出しているのだろう。


「あ、あの体は」

「実はこないだ変なのに取り付かれてえらい目に遭った」


 敢えて詳しく言わず、あの時は僕がやったんじゃないよと伝えてみる。変身の話はせずに。すると周りが冷気を帯びて来た。ただし凍らず霜も降らない丁度良いくらいの冷気。エアコンの付いてる部屋にいる気分になる。火傷は徐々に回復していく。死なないもんだから新陳代謝の速度も場合に応じて変わる。二日酔いとか睡眠不足、筋肉痛に風邪とかそういうのは対応してくれないけど。


「何をしている?」


 シュリーの後方から声がするので見るとそこには銀髪で癖毛、メガネを掛けて銀色のSFのスーツみたいな者を着た男が立っている。とても神経質そうな顔をしていて苛立っているようにみえた。


「え、えっと」

「フン、相変わらず使えない奴だ。まぁ良いシュリー、シュリー同志。その小汚い男を凍らせて仕事に戻りなさい」


 聞こえないつもりなのか吐き捨てるように使えないと言いつつ、直ぐに笑顔で同志などというサイコオジサン丸出しの男のようだ。こういう奴は問答無用でぶっ飛ばしたい。御前がどれだけ凄いのか知らないが、人を駒として使おうとしているのが丸見えだ。


「で、でも」

「でもではないよシュリー同志。母上の悲願を叶える為にあの町を潰さないといけないんだよ、分かるだろう? 何度も言ってるじゃないか。君は助けてもらった恩があるだろう? さぁ早くしなさい時間が無いんだ」


 両手を広げてまるで神様気取りで人に命令する陰険メガネ。ぶっ飛ばすのに理由は必要無いらしい。だけど今はその怒りは抑えないと。恐らくあいつもバリアを持っているって考えた方が良い。何とか俯きながら御腹の下の方を意識しつつ深呼吸をする。ステイ……ステイ……!


「そんな蛆虫に温情を駆ける暇があるなら母上の悲しみが一日も早く無くす為に心を砕きなさいシュリー同志。御前も同じ蛆虫になりたいのか?」

「やるなら御前がやれば良いだろ? 人に使えないとか言っておいてお前は何も出来ないのか? 人すら気持ち良く働いてもらおうともしない奴が頭脳労働担当とは呆れる。月読命も月から降りればただの人以下だな白髪陰険ヒョロ糞メガネ」


 おっといけないつい口から思っていた言葉が勝手に出てきてしまった。まだ御腹痛いフリしとこ。チラッと相手を見ると僕を見ていたものの、他にも居ないか周囲を警戒している。以外と物量には弱いのかもしれない。絶対無敵ではないのが分かってちょっと安心した。


「……何か人を差別するような言葉が聞こえた気がするね? シュリー同志」

「え、いえ」


「御前が先に差別しといて差別されたら差別とか叫んでんじゃねーよ。御前の差別はノーカンだとでも思ってんのか? 知性の欠片も無いな自称インテリ陰険野郎」


 彼らは耳が良いみたいなので俯きながら声をだしても聞こえるらしい。でもまぁそろそろ僕じゃないよ? 作戦は限界だろうなぁ流石に。火傷もそろそろ良いみたいだし、いっちょやってみっか!

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