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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
春の襲撃編

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震える大地

「解決って何か方法があるんですか?」

「ちょっと失礼」


 急に僕らにハキハキとした感じの女性の声が割り込んできた。声の方を見ると、金髪をロールアップヘアにしメガネを掛けた美人がいる。白のワイシャツに黒のスラックス、緑の皮のジャケットとブーツを履いて中々勇ましそうだけど冒険者ではない品の良い人が腰に手を当てて立っていた。


「お……じゃなかった、ギルド長、御話があります」

「何じゃろか」


 師匠は気だるそうに背もたれに体重を預けてだらしなく座ったまんまだ。この人とも付き合いが長いのかな。ギルド員だったり町の人に対してこういう感じ出さないし。


「……例のオルババの件よ」


 師匠の耳に顔を近付けて回りに聞こえないよう耳打ちする。師匠はそれを聞いて肩を窄め溜め息を吐く。


「へぇえーっと。折角ハオの矛先を明後日の方に向けたのに弟子とお茶をする暇すら貰えんとはな」

「それに関しては感謝しますが、これも片付けないと」


「分かってますよーだ。大体それだってそっちの捜査が不味くてとばっちりなのにさぁ」

「いい加減にしてください怒りますよ」


 美人が凄い気迫と顔つきで師匠を見る。それを一瞥して師匠は立ち上がる。


「あ、そうだ。これ、うちの新しい弟子でセオリは元よりリュクスも大分世話になっとる康久、それとその相棒のラティ」

「知ってます! 町に対して他の冒険者以上に貢献してくれてるのもね。本来であればもっと厚遇してあげたいんだけど……。初めまして康久、それにラティ。私はセリーナ。町の議員をしているわ。今後ともお見知り置きを」


 師匠に対する態度とぜんぜん違う、とても優しい笑顔で握手を求められた。ミレーユさん以外にこういう美人とは中々縁がないのでつい緊張してしまい、失礼が無いように自分の手汗をシャツで拭った後握手をする。ラティは普通に握手をしたが下げ際に僕の鼻を摘んだ。何でだ?


「じゃあの、二人とも。今は恐竜に対してゴールド連中が周りを警備しとるから心配ないが、動物やモンスターが町に来る可能性もあるでな。ギルドにシルバー向けの調査依頼を出しておいたら受けてくれぃ」


 そう言って二人は足早に去っていった。それを見送りつつ僕らは早速依頼を受けて歩いて放牧地へと向かう。その最中にラティから如何に美人が危険かとか、見た目に騙されてはいけないという話を懇々とされた。じゃあラティにも気を付けないといけないね、と言うと暫く静かになった後取り留めの無い話になってのんびりとした巡回となりその日は終わった。


巡回の依頼は今シーズン一杯となっていたので、次の日も続ける。どうやら恐竜の集団が来そうなのか山間のゴールド帯の人たちは警戒を強めていた。僕らはそれを邪魔しないよう町やマオルさんたちの放牧地近辺を警護をかねて調査を続ける。


「来ましたわ……」


 数日後の夜明け前。隣で寝ていたラティがそう言いながら上半身を起こしたので僕も同じように起こした。少し間があってから地鳴りがし始めると、僕とラティは急いで装備を着けギルドへと向かう。


「やぁ久し振りだね康久」

「リュクスさん! ついに来たんですね」


 家を出たら警備隊の兵士が点在し状況を確認しつつ警護していて、ギルドの前にはリュクスさんが居た。師匠も奥から丁度出てきた。


「ん。良いタイミングで来たの」

「ラティが気付いてくれたのでこれました」


「流石にこれは凄すぎて目が覚めてしまいましたわ」

「じゃろうな。火山地帯でもないし一年通してこんな地鳴りがするのはこの時期を置いて他にない。うちは近隣では大きい都市なのにゴールド帯の連中が来るまで入ってくる人間が少ないのはこれの所為でもある。御前たちもこの先の時期の人の多さを見れば驚くかも知らん」


 砂漠の町に比べたら倍以上人が居て驚いたのに、これ以上増えるのかと思うと人酔いしないか心配になってくる。


「まぁ何にしてもこれを凌がないとそれも無いですけどね」

「じゃな。取り合えずいつも以上に周りを固めて誰も入れぬ様にして篝火も絶やさずって感じじゃの。仮に恐竜がこちらに漏れて来た場合は適時それを手早く処理していくぞい。仲間を呼ばれると前線が崩れる恐れがある。なるべくこちらに寄らせないようにせねばならん」


「私と共にギルド長にも戦線の指揮に当たってもらうよう町長から救援依頼がギルドに出ましたのでこれで正式に動けますのでご安心を」

「うむ。では康久も付いて参れ」


 何だか師匠はウキウキしながら踊るように歩き出す。それを見てリュクスさんは首を竦めて苦笑いした。その後僕に笑顔で握手を求め、共に切り抜けようと言葉を交わし別れる。

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