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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
春の襲撃編

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悪酔い

 十五から放り出されて今ゴールド帯にいる、それも他のゴールド帯が従うほどの人になって。凄いという言葉しか浮かんでこない。


「リベリさんは最強の剣士。本来なら御前が口を利くなど有り得ん」


 いきなりリベリさんの横に斬久郎さんが席を引き摺って現れた。面倒な感じになりそうだなぁ酔ってるのかな。


「おいおいいい加減にしろ斬久郎。私たちは新人の頃のお前に対してそんな突っかかりをしたかい?」


 リベリさんは努めて冷静に諭すような口調で斬久郎さんに言った。


「御前は今シーズンの初物をゲットして良い気分か知らないが、リベリさんが間に合っていれば秒で片付けていた。それを大事件のように寝込んで同情を買いやがって」


 完全に絡み酒状態だ。うちには酔っ払いになるような人間が居なかったから初めて見る。嫌悪感より先に興味が沸いてしまった。尊敬しているであろうリベリさんの制止も無視して食って掛かるなんて、お酒って怖いんだなぁ。それに例の恐竜は僕がした仕事の方が圧倒的に少ないのに評価されすぎて君が悪いし、初物ってそんな大事だなんて知らんかった。チーさんも教えてくれれば良かったのに。


「良いか良く聞け? 調子に乗っていられたのもこれまでだ。新進気鋭の新人か何か知らないが、俺たちが来たからにはこの町は俺たちが守る! 御前は引っ込んで指を咥えて見ているが良い!」

「流石先輩。勿論僕は出しゃばらず療養してます!」


 取り合えず分かり易く持ち上げてみた。酔っ払いの斬久郎さんは少し間があった後ニヤニヤし始める。大丈夫なのかなこの人。


「そうそう女を侍らせてちちくりあってれば良いのだよ。人口を増やすのも大事なお仕事だからさぁ」


 下種な笑いをした次の瞬間、斬久郎さんが消えた。そしてギルドの修復中のカウンターも吹き飛んで、大工仕事をしていたアロウさんたちギルド職員が膝から崩れ落ちるのが見えた。


「ああすまない私としたことが耐えられなくてつい……」

「リベリさんは何も悪くないっす! あ、これ美味しいですね!」


 必死に話を逸らそうと話題を振り、リベリさんも全く興味の無いであろう料理を必死に解説してくれた。居た堪れないと思ったのかラティはいつの間にか別のテーブルへ退避し女性冒険者と楽しそうに会話をしていた辛い。



「う、うぅ……」


 目が覚めたのは気持ち悪さからだ。あの地獄を盛り上げようとリベリさんと二人で無理やり飲んでテンションを上げようとしたものの、途中からリベリさんは泣き上戸になり僕も釣られる始末。その後無事ギルドを追い出され、リベリさんも誰かに回収され僕はラティに回収されて家に戻る。二度と酒は飲みたくない……そう思わずには居られない。何度吐いたかもわからないし。


「あら起きましたの?」

「は、はい……すいません」


 桶を持ってラティが寝室に入ってきた。申し訳なさ過ぎて消え去りたい気分だ。


「気にしないでくださいまし。今まで手が掛からなかったのが不思議なくらいでしたからね。でも今後は節度を持って飲んでくださいな」

「はい……」


 はいとしか言えない。ラティは床をチェックした後僕の下に桶を置いて部屋を後にした。結局この後更に三日二日酔いが抜けなくてベッドで寝ながら介抱された。最悪だ。この間仕事が出来なくて収入ゼロだし、頑張って稼がないと解体場が遠のく。


「この間は申し訳ありませんでした! 仕事何でも良いんでください!」

「無いわね」


 ギルドに気合を入れて来てカウンターのミレーユさんにデカイ声を出して頭を下げた。即答で仕事が無いって……。アロウさんが色々来てるって言ってたのに! 修理中のカウンターに突っ伏しいじけて見る。


「別に康久の所為じゃないのよ。やっぱりゴールド帯が居ると、ね」

「そうでしょうね。確実に成功してくれるなら少々御高くてもそちらにしますわよね」


「保険も彼らの方が何かあった時多く出るのもあるのよね。それもあって依頼主も一旦依頼を引き上げて精査してるみたい」

「そ、そんなぁ……」


 ミレーユさんが事情を優しく説明してくれる。恨めしそうに顔を見るも苦笑いで首を横に振るだけだった。三日で仕事を無くし無職となってしまった……。ついてないにも程がある!


「でもね、仕方ないのよ。貴方たちより町の人は恐竜の被害を身をもって知ってるし、そうなると冒険者に無茶をされて恐竜を呼び込んだ、なんて話になれば冒険者がこの町に居られなくなってしまうかもしれない」

「そんなに凄いんですのね……」


「やぁお疲れ!」


 しょんぼりする僕の方をポンと叩いた人が居るので振り返ると、そこにはリベリさんが居た。ちょっと顔を合わせ辛いんだけど……。

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