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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
春の襲撃編

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先輩と卓を囲む

「まぁ今はあの二人の稽古が終わるのを待つとしようじゃないか。私としては期待の新人に自己紹介出来て良かったが、それ以上この状態に興味がないのでね」


 故あれば打って出ると言わんばかりの気を放つリベリさんに気圧されて下がりそうになるも、横に来てくれたラティが背中を支えてくれて下がらずに済んだ。ホント怖いなぁこれがゴールドランクの人か……。世界は広いなぁ。囲っている人たちも一人ひとりが物凄い気を発している。装備も一人として気の抜けた人は居ないし、一騎当千勢揃いって感じだ。


「あ、あのリベリさん先に御挨拶出来ず申し訳ありません、デラウンの冒険者シルバーランクに上がりたての康久です」

「その相棒のラティと申します御機嫌よう”戦花”」


 僕は気圧されて挨拶をしていないのに気付き、慌てて挨拶をする。ラティはロングスカートの裾の端を少し持ち上げて一礼した。顔を上げると笑顔で手を差し出されていた。見た目はとても友好的なのにその気が凄くてこれ握ったら斬られるんじゃないかって気分になってくる。これは脅しの為に気を発しているとかじゃなく、あの二人に煽られているんだろうなぁと思った。実力不足の僕ですらちょっと体を動かしたくなって来たし。


「すまないね、あの二人の気に当てられ私も知らずの内に高ぶっているらしい。怖がらせてすまない。ラティ嬢は私をご存知なのかな?」

「字だけは」


 僕の感が当たったようだ。リベリさんは僕の手を強引に握った後、隣に居るラティにも手を差し出してくれた。字……”戦花”ってラティは言ってたけど知ってるのかなリベリさんを。不適に笑いながら握手を二人はした後、師匠と質実剛健さんの戦いに目を移した。音だけがする戦いを漫画なら見たけど、ここに来て見れるとは。あの二人本当に規格外だなぁ……チート能力貰ってる僕にはさっぱり出来ないのに凄過ぎる。


「ふん!」

「ぬん!」


 師匠と質実剛健さんの拳がぶつかり合って姿を現した。その後遅れて衝撃波が起こり、町の周りの物が吹き飛んでお店のガラスがほぼ全て割れた。ガラス屋さんや建具屋さん繁盛しそう。


「やれやれ終わったかなハオ、長」


 リベリさんは拍手をしながら二人に近付く。師匠と質実剛健さん改めハオさんは鼻息荒くし背を向け別々の方向へ歩き出した。どうやら気が済んだらしい。僕はホッと胸を撫で下ろす。倒れるまでやられたら町が破壊されると少しだけ心配してた。少しだけっていうのは警備隊が出張って来てないので、恐らく儀式的なものなんだろうなぁと思ったからだ。


「さぁ皆もこれで御終いだ! 店などは損害はギルドへ出してくれ!」


 リベリさんの声で囲いも解かれ、店の人たちも慣れたものなのか笑顔で返事をしつつ外へ紙とペンを持って出てきた。これくらいの逞しさが無いとこういう世界では生きていけないよなぁ……。そう考えて空を見上げながら深呼吸した後、ラティを見て一緒にギルドへと戻る。するとギルドの中は活気が出て来て互いの冒険談を語り合い始めていた。僕が最初に来た時とはえらい違いで別の世界に紛れ込んだのかと思った。


「康久!」


 同じ場所だと気付かせるようにリベリさんの声が僕の耳に飛び込んで来た。奥の方の席にリベリさんは座り、僕らを手招きしている。ラティと顔を見合いリベリさんのところへ行くと、座るよう勧められる。元引き篭もりとしてはこういう感じは苦手ではあるけど、冒険者としての付き合いも大事だと亡きサクラダに教えられたので、席に着く。


「良かったよ席に着いてくれて。怖がらせてしまったから断られるかと思ったよ」


 リベリさんはリラックスする為に鎧の肩当てを外して椅子の背もたれの両端に、篭手を外して椅子の下に置いたので、僕も同じように肩当てを背もたれの両端に篭手を外し椅子の下に置いた。


「改めてゆっくりと挨拶したいと思ってね。今日は私の奢りだから食べて飲んでくれ」

「あ、ありがとうございます」


 それから改めて自己紹介をし僕たちのこれまでの話を聞かれたので、ある程度隠しつつ話す。それを笑顔で楽しそうに聞いてくれていたけどネルトリゲルの話になった途端に顔色は一転し、神妙な面持ちになった。僕が話したのは実際の事件の半分くらいなので申し訳ないと思いつつ話し終えると、リベリさんは二回大きく頷いて深呼吸した。


「いやぁ有難う有難う。会ったばかりの私にキチンと話してくれて感謝しかない。ゴールド帯の圧力を感じてなのかもしれないが」

「無いとは言いませんが、出来るだけ隠さずお話しました。冒険者の先輩ですしこれから交流がもてれば自分としても有り難いので」


 話している間にラティとリベリさんは料理と飲み物を頼んでいて、テーブルは大分賑やかになっていた。緊張してあまり食欲が無い僕を察して、ラティが御腹に優しそうな野菜と薄い肉をお皿に分けてくれていて、その優しさに全て話せない罪悪感から少し開放された。


「そうか、それはこちらとしても有り難い。敵よりも味方が多い方が絶対に良いからね。君の期待を裏切らないように努めさせてもらおう」

「こ、こちらこそ縁があって良かったと思って頂けるように頑張ります」


 三人でそれからテーブルを囲みながら、リベリさんが今度はこれまでの話をしてくれた。リベリさんの元々の出身は首都だそうで、本人曰くそこそこ裕福な家に生まれたらしい。小さい頃病に犯され、治療の甲斐あって完治したものの体力の低下が凄くその改善の為に武を生業とする人の下に弟子入り、その後十五歳から冒険者になったそうだ。


「まぁまぁ人に自慢できる話は無いんだよ。師匠は厳しかった。私は力が弱いが器用だったのでありとあらゆる武器をマスターするよう教え込まれた。十五になって突然”一人で生きろ”と放り出されて今に至るって感じさ」

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