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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
春の襲撃編

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自然や色々な事に感謝を

「はぁっ!」


 恐竜はチーさんのスピードに翻弄され、さっきまで目を真っ赤に興奮して襲い掛かってきていたのに徐々に動きを鈍らせ引き気味になって来た。ここで手を出すと漁夫の利になっちゃうので、今後の為にその動きをじっくり見させてもらう。次どうするとかそういうのは一切無く相手を倒す為に最短で動き止まらない。スピードだけじゃなくスタミナも無いと成立しない戦い方だ。あの小さい体の何処にそんなエネルギーがあるのか。


「康久!」


 声に反応し右拳に力を溜め、その直後顔を蹴られてこちらに倒れこんで来た恐竜の顎へ向け大きく大地を踏みしめて右拳を振り抜いた。


「ないすぅ!」

「ないすぅも何も最後一撃入れただけっすけど」


 恐竜は僕の一撃程度で倒れるほど弱っていた。チーさんだけでも余裕で捌けただろう。


「いやいや最初に腹に一撃入れられたのがずっと尾を引いてた。それは冷静に考えたら分かるね?」

「いやまぁ多少はね」


 そう答えると眉間に皺を寄せて口を開けたままになった。どういう顔なんだこれ。


「もーいーかい!」

「もーいーよ」


 ダルそうにチーさんが答えた後、木陰からラティとセオリが出てきた。そして直ぐにセオリは恐竜の首元まで行って処理を始めた。


「流石手馴れてますわね」

「そうだね。特に新鮮なうちに血抜きすると価値が上がるらしい。康久の一撃で顎だけじゃなく頭蓋骨や脳も破壊されただろうから、あの子の殺生じゃないし」


「え!? 僕の一撃で?」


 驚く僕に対し二人は溜め息を吐く。なんでだ。


「ラティのお兄様面倒臭ーい」

「そうですわよねすみません」


 ここで反論すると詰められそうなので黙っておく。


「こうまで自信が無いのは問題ありまくりよね」

「全くですわ。そろそろどこかの武術大会にでも放り込んでしまおうかと考えてしまうレベルです」


「それ良いね! 寝てるうちに布団ごと巻いて輸送しようか」


 隣で恐ろしい会話がなされているけど聞こえない振りする。妙案を思いついたみたいな顔で二人とも僕を見ているがそれもスルー。てかやっぱチートって良い面ばかりかと思ったけどそうじゃない所もあるよなぁ。頭が体に追いついていないっていうのが問題だ。とは言え今更どうも出来ないから合わせるしかないんだけど。


「取り合えず最初の処置完了! ソリに括り付けて帰ろう!」

「はーい!」


 二人のヒソヒソ話から逃れるように恐竜をテキパキとソリに括り付け、町へと戻る。僕らの帰還を見て町はざわめく。歓喜ではなく警戒と恐れって感じだ。雪解けが忙しいっていうのは飢えた恐竜の襲撃の件なのだろう。


ギルドに寄って報告しその足で屯所に行き解体場へと恐竜を運び込んだ。その流れで解体を手伝わされたけど、かなりグロテスクだ。恐竜を吊るしてその御腹を開いた後、内臓を取り出したけどその中の胃から動物の骨や遺体が出て来て情けない話吐きそうになった。だけど吐いたらまた言われるとおもって何とか耐える。


セオリは大きな道具を使って次々とバラバラにしていく。そこに感情は一切無く手際の良さに驚くばかりだ。


「取り合えずこんな感じかな。皮は取っておくとして、それ以外は買い取りに出して良い?」

「え、あ、ああ……どうなんでしょう」


 セオリに問われラティとチーさんを見る。二人はそこからこれはどうだと話し始めた。流石頼りになる妹様と姉弟子だわ……。我棒立ち。


「じゃあそれで。分配金は処分後に渡すからねー」

「あ、はい」


 いやぁこれは一人で生きるとか完璧に無理だと思い知らされる一日だわ。皆が居てくれて感謝しかないし、引き篭もり出来た日本と祖父母に感謝しかない。あっちはどうなってるんだろうか。僕が居なくなって負担が無くなって伸び伸び出来ているだろうか。二人の老後に引き篭もりで居候してしまって悔いしかないなぁ。今更挽回できる訳がないけど、出来るだけ精一杯ここで先ずはしよう。それ以降はまたその時頑張ろう。


「じゃあ風呂に入ってから食事にしましょう! 天の恵み自然に感謝しながら頂いての供養だからね。いつ我が身になるか分からないんだし」


 身も蓋も無い言葉に気のない返事をしつつ温泉へと向かい休んだ後、ギルドで報告をしつつ食事を頂く。供養と言われたら最初肉とか食べられる気がしなかったけど食べれた。とても不思議な食事になった。

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