表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界狩猟物語  作者: 田島久護
銀世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/675

デラウンの守護神

「き、貴様ら!?」


 外へ出るとさっきの斧持ち黒鎧と共に用心棒で雇った冒険者たちを引き連れて、頭髪が寂しいけど口とか顎に髭を貯えた小太りのスーツを着た六十代くらいの小父さんが現れた。とても分かり易くて好感を持ってしまう。


「こんにちは町議員さん。お名前は存じ上げないが折角お会いしたばかりだけど退散させてもらおう」


 リュクスさんのキラキラした感じとは対照的な町議員さんはぐぬぬとしている。分かるわぁこの高貴な感じ主人公ならリュクスさんに間違いないんだよなぁ見た目はさ。


「帰す訳無いだろう? 勝手に人の陣地に入ってきて」

「五月蝿いんだよ斧鎧。御爺さんを殺害した犯人の一味の御前が人の陣地がどうとか言えた義理か」


 その言葉に対してケッと言うだけで御終いのようだ。理解しているだけ賢いな。


「やっちまえ!」


 斧鎧は号令を掛けるも誰も動かない。彼らの中には一回痛い目を見てる者もいるだろうし、僕を冒険者なら恐らく少し知ってる感じだ。でもまぁそれを置いてもリュクスさんの高貴さに挑みたくないだろうなぁと思う。僕ならバレないように逃げる。割が悪いもんこんなの。


「お、お前ぇら!」

「一抜けた!」


 リュクスさんの後ろに居た僕は、聞こえる程度の声で言ってみた。少しすると斧鎧の後ろの方から続々と人が去っていき、最終的には斧鎧とおじさんだけになっていた悲しい。


「さて貴公らどうするね。もう人数も私達の方が多いのだが」

「ぬかせ!」


 斧鎧は獲物を構える。僕が捌こうと前に出ようとすると、リュクスさんに手で遮られ制止された。


「ここは私がお相手しよう」

「良いだろうキザ男。俺たちブラックスワンの力を思い知らせてやる!」


 僕とラティは顔を見合わせる。黒鎧たちってブラックスワンて名前の集団だって初めて知った。これから探しやすくなって何よりだ。というかそのネーミングって僕らの世界でのブラックスワン理論を知ってて付けたのかなって疑いたくなるくらいバッチリ合ってて驚く。


「そうか、ならデラウンの警備隊長である私の相手にとって不足無しといったところかな」

「なっ!? デ、デラウンの警備隊長!?」


「そうだぞ? こっちにいるのがデラウンの新進気鋭の冒険者にして例のネルトリゲルの騒動を鎮圧した人物だ」


 その言葉におじさんは恐れ戦き尻餅をついた。斧鎧は片手を空けて額の汗を拭う。ネルトリゲルの件はただボロ負けしただけなのに評価されたりすると非常に居心地が悪いんですが……誰に申し出たら良いんだろうかこれ。


「さぁさケリを付けようじゃないか。最早言葉は無用!」


 リュクスさんは背中に背負っていたショートソードを腰に付け直し引き抜くと、斧鎧に向けて構えた。暫く見合い仕掛けてこないと見ると、リュクスさんは構えを解いて散歩でもする様に近付き一太刀浴びせた。その速さに反応するまもなく斧鎧は血を出しながらひっくり返った。


「ひ、ひぃいいいいい!」


 尻餅を付いていたおじさんは這い蹲りながらも高速で逃げていった。凄い能力をもってるなぁ……町議員にもなるとああいうのを一つでも持ってるんだろうか。


「さて帰ろうか。こんなところに長居をしても意味は無い」


 血を払う為に剣を一回振り下ろしてから鞘に収めこちらを向いて微笑むリュクスさん。これが本来の獲物なのだろうか。あの速さは僕には対処出来ないくらい速かった。どこかで管理職でしょと考えていたけどそれが間違いだというのを見せ付けられて恥ずかしい気持ちになる。


「デラウントナカイはどうするの?」

「業腹ながら今は彼らに与えよう。私たちは先を見据えて動かねばならない。デラウンの宝を盗んだ報いはとてつもない代償を払わされるという現実を見せる為にね」


 そう言った時のリュクスさんの冷たい表情は後のオリババの運命を垣間見た気がして寒気がした。町で大切に育てている宝のようなものを奪ったのだから当然と言えば当然なんだろうけど、初めて見るリュクスさんの負の側面は中々強烈なインパクトがある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ