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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
銀世界

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釣り上げ時

「まぁでも貴方も方々で収集するなら誰かの肩を必要以上に持つ訳には行きませんものね……」


 意味有り気に隣で歩くラティはマドランさんに言う。セオリが僕の腕を突いたので見ると糸は別の方角へと続いていた。それを見て頷き少し歩いた後ラティとセオリの腕を引いて路地へと入る。僕たちはセオリを先頭に走り出す。後ろで、あっ! という声がした後多数の足音が聞こえてくる。まんまと罠に嵌められるところだった。ラティ素晴らしい! 後で何かご褒美をあげなくちゃ!


「お兄様はあまり人を見る目がないかもしれませんわね」

「ああそれはそうかも。うちのお兄様もだけどね」


 ……妹たちの辛辣な評価を聞きながらもう一人のお兄様を探して知らない町を走る。路地から大通りへ出る際はゆっくり何も無かったかのように楽しそうに会話をしながら通り過ぎてまた路地へ。チラッと見えた兵士も特に何か探している感じは無くボーっとしてたりあくびをしてたりしたので、表向き平和なままだ。


「あれっぽいわね」


 糸を大分巻き終えたのか、先の方が大分浮いている。大通りを挟んでいたら人の足に引っかかるかもとか思ったけどどうやら路地からその建物の壁へと続いていたので大丈夫なようだ。


「よし、二人とも失礼!」


 適度な仕返しを考えた結果、セオリを負ぶってラティを抱きかかえながら三角跳びの要領で壁と向かい合う建物を蹴って飛び上がり、壁の向こうへと着地する。どうやら誰かの私邸のようだ。とても庭先が整えられていて池には鯉のような魚がいる。何故分かるのかと言われれば、僕がそこで尻餅をついているからだ。勿論ラティとセオリはその前に放り投げて近くの茂みに落としたけど。


「さぁ糸を追いましょうねー」


 池から上がり茂みに隠れて息を少し潜めた後、僕らは探索を再開する。二人にどつかれながら先を歩くと、まぁ当然ながら家人が出てくるわけで。


「侵入者だ!」


 分かりやすい対応有り難い。手間が省けるわ。冒険者崩れが十人ほど武器を手に掛かってきたけど、あっさりと退ける。で、一人確保して吐かせる。これがまた小銭で雇われたのか黒鎧よりもあっさり吐いた。ここは町議員の屋敷で今朝変な生き物が入ってきたらしい。この冒険者崩れは今朝ギルドの依頼があって警備に着ただけだというのでそのまま返した。


「これはギルド長の懸念が具体的な感じになって来ましたわね」


 僕は頷くしか出来なかった。師匠にはどうやらとても敵が多いらしい。自然の厳しさの方が際立っている世界でもやってるのは人間同士の騙し合い上前の撥ね合い。くだらな過ぎて反吐が出そうだ。


「取り合えず糸を辿ろう。お兄様が心配」


 セオリは糸を手繰って行く。当然のようにわらわらと家人が出てくるもさくさく退けていく。やっぱり黒鎧を先に処理して良かった。


「ほう……これはこれは。新進気鋭の冒険者様が何の様……」


 何だか何処かで見た覚えがある斧を持った黒鎧が玄関から出てきたけど問答無用で鳩尾に拳を叩き込んで、くの字に体が曲がったところを背負い投げて地面に叩き付けて中へと急ぐ。


「お兄様!」


 糸の先にある扉をバン! と開けるとそこにはリュクスさんと少年が地面に倒れていた。直ぐに駆け寄り抱きかかえると


「遅いじゃないか君たち」

「お待ちしてましたよ」


 殴られた後があるものの二人は笑顔で出迎えてくれた。タフ過ぎるだろこの人たち。


「デラウントナカイは?」

「奪われてしまった。誰が盗んだのかも分かったが、恐らくこの一件で処分されて終わりだろう」


 リュクスさんはセオリが抱えている手に触れて離させると、自力で上半身を起こし一息ついた。少年も僕の手に触れたので離すと自力で上半身を起こす。


「取られ損ですか?」

「他の人間ならね。だがデラウン警備隊の隊長である私から奪ったのだから、当然それなりの覚悟をしないとね」


 二人はよろけながらも立ち上がり、軽くストレッチをし始めた。僕たちはそれを見て問題なさそうで安心する。


「私も及ばずながら御手伝いさせて頂きます」

「リンドには大いに期待させてもらおう。さぁさっさとここから出ようか。変装も解いて堂々とな」


 リンドと呼ばれた少年と共に変装していた服を脱ぎ捨てて僕らは外へと出る。

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