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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
銀世界

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オリババ到着

 暫くは周囲を警戒しつつ進み山を登っていくと、関所がある。ここにはデラウンとオリババの両方の町の兵士が常駐している。どちらかだけになるとそちらに有利なようになってしまうので、関所はそう言う運営になっていた。其々の町の名産や人の誘拐を防ぐ為に設けられているので、積み荷のチェックもしている。賄賂を渡せば多少は見逃されもするようだ。


今回僕らは町で取れた鉱石の運搬の依頼を受けている。その代わり帰りに食料や医薬品を積んでくる予定。関所は難なく通過し山道を少し登った後下り始める。この冬の時期でも自分の身一つで行き来する人たちも居て、その人達の為にも雪掻きの仕事があったりする。デラウントナカイは繁殖が少ないので人を運んで行き来するのは難しい。ついでに言うと馬も繁殖が難しい。両方とも需要と供給が釣り合ってないので、デラウンでも繁殖に力を入れている。


遊牧地での見回りや討伐があったり許可証が必要なのも、そう言った環境を荒らさない為にある。


「さぁ見えてきたぞ」


 山を下りきった後林を進んで行くと、草原に出てその先に塀が見えた。あれがオリババの町のようだ。特に変わった所は無いように見える。町の入り口では検問が行われていて、僕たちは町同士の取引の為裏口に回された。


「旦那」


 背後に人の気配がした。振り向くとそこには髪も髭ももじゃっとして頭にはツバの短いハット、ブラウンのジャケットにスラックス、中には黒のシャツを着てバッグを肩に掛けた男が居た。


「マドランさん! 奇遇……って訳じゃないですね」

「そりゃもう。旦那が忙しくしているように俺も忙しくしてた。借りを返したくてね。で、ビンゴって訳だ」


 この人は僕たちも贔屓にしている情報屋のマドラン・ディオさん。僕たちは黒鎧の件とか何かあれば情報が貰える様頼んでいる。


「これも奴ら絡みか」

「まぁ珍しいものには連中は付き物だ。で、連中と繋がってるのは誰かって話になる」


 そうか、相手が町絡みでリュクスさんもそれを手に入れたから今回動いてきたのか。


「黒鎧を皆で良い様に使ってるんだね」

「そうだな。国家も無く利だけで繋がる。その方が都合が良い連中も多くいる。ギルドと正反対の組織だと思った方が良い」


「こないだ荒れ地で会った連中はそんなに強そうじゃなかったけど」

「それもギルドと一緒だ。難易度の低い仕事はそう言う連中が請け負う。旦那が出会ったのは良い所ブロンズ上位だろうな」


 それを聞いて自分も大分脳筋になってきたのかもっと上が居ると聞いて少し喜んでしまった……。弱い集団なら楽に敵討ちもラティの用事も済ませられたのに。


「で、連中は最近この辺りを根城にしている、と」

「そうだよ姐さん。例の大きな鳥や砂漠の狼、そしてデラウントナカイ。人間がギリギリ手を出せる範囲の希少動物を狙っている。そう考えればここら辺は良い土地って訳だ」


 世の中にはもっと危ない場所に希少価値の高いものも居るだろうに。手っ取り早く稼ぎたいって話なのかな。


「取り合えず細かい話は継続して調べて行く。今はここの話だ。俺は細かい所まで調べてるから、何か分かれば連絡するよ」

「了解。気をつけて」


 検閲の順番が来そうになったところでマドランさんはソリから降りて正面へ向かって走って行った。相手も嗅ぎ回っているだろうと気付いている筈だ。そうなると少し警戒を強めて来るんじゃないか。


「どうもどうも御苦労様です」

「おぉデラウンのか。……鉱石を大分持ってきたな。宜しい、このまま進んで取引所で荷卸をした後商品を持っていくが良い」


 特に何事も無く通過する。ここで問題が発生すると他にも目が付くから当然と言えば当然か。


「良し荷物を下ろせ。その後ソリをここに置いて行くが良い。暫くしたら換えの商品を積んでおいてやろう」

「いえ結構です。お手間は取らせませんので。町長からも直ぐに戻るよう言われております。医薬品が必要な病人が居るものですから」


「別に積んでいる時間くらいでどうもしまい?」

「いえ一刻を争いますので」


 リュクスさんが変装した商人が粘ると少しして嫌な顔をしながら荷物を指差し書類にサインをして投げ返してきた。露骨過ぎんだろ町と町の商売だぞ?


「どうやらここでは無いようですわね」

「どうかな。ひょっとすると僕ら以外の人間なら素直に聞いて置いて行ったかも知れない。今回はこのまま帰ろう」


「継続任務になるんですね」

「損はさせない」


 僕たちは黙々と鉱石を降ろし換えの荷物を積んで帰路に就く。

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