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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
堕ちた星降る町編

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ヒショウ戦その三

「いってぇ……」


 暗転すると体の痛みに直ぐ目を開ける。すると距離を取ってヒショウさんは立っていた。


「貴様一体何者だ?」

「それはこっちの台詞ですよ……まさかこの星の人間じゃないのと混ざってる何て聞いてないですよ」


 痛めた体を壁に寄りかかりながら起こしていく。徐々に回復しているのも分かる。あと少しで完治だ。


「……何の話だ」

「可笑しいと思ったんですよ。コウイ家の傑物というにはあまりにも体格も雰囲気も似てない。顔が似てるくらいですかね似てるとしたら。それに技の質も全く違う。拳圧と言えば聞こえが良いですけどあそこまで行くと魔術ですよ」


 そう言うとそれまでの顔とは違い無表情になる。そして左手で目を覆い、少ししてから手が退いて目が開くとその目は白目と黒目が入れ替わり瞳孔が縦に伸びていた。


「馴染むのを待っていた……巻いた種に反応し変異し耐えられる者が生まれるのを待っていたんですね?」


 僕の問いに口を横に広げ口角を上げて微笑んだ。鬼は失敗作……というより巻いた種、恐らく魔術因子に対して反応はしたものの拒絶した結果歪な変化をしてしまったんだろう。そう言う意味ではサクラダたちは旧の人たちというのだろうか。


「小僧勘が良いな。その通り、私は御前の言う混ざり物。このヒショウが生まれるのを待っていたのだ」

「でも貴方以外の人格を今は感じない……死産たったとか?」


 僕の言葉にピクリと眉を動かす。ウルド様のヒントを思い出したけど、本来のヒショウさんも同居しているはずだ。だとしたらこの二人の狙いは何なんだ?


「貴様本当に何なんだ? 勘が良いでは済ませられん」


 知りたい点を知るには先ずは勝たなければ話が進まそうだ。ヒショウさんは改めて身構える。種が分かればこっちのもの、とも言えないけどウルドさんと別の星で戦った記憶を引っ張り出す。魔術だというのが頭にあれば避けられるし、手の内を全て出させられればこちらも切り札を迷い無く切れる。


「どこの出身ですか? ゴルド大陸? ブロンド大陸? シルヴァ大陸?」


 ウルド様と助っ人に言った星の大陸名を出してみたけど当たりらしい。ヒショウさんは気を溜め始めた。世間は狭いなぁ……いや元の世界でも知的生命体は地球以外で発見出来ていなかったから、そうなるのは必然なのかも。そう思っていると相手が動いたのでこちらも即座に動く。


体格的に向こうの方が大きいので手足のリーチも違う。避けつつ合間を縫って拳を叩き込みつつ投げの機会を伺う。かつて無いほどの高速打撃に汗を掻く余裕すらない。


「あの世界の魔術師であれば、この程度の仕業は出来るでしょうね。ただ分からないのは何でこんな真似を。肉体が滅んで精神だけの存在になったとして、乗っ取る体にも条件があるんですか? 何故コウイ一族を犠牲に」

「やかましい!」


 ヒショウさんも体力は無限ではない。というか元が魔術師なら体力にブーストは掛かってないはずだ。高速打撃の後一瞬距離を取った時、疑問を投げかけてみるとそれに反応して再度接近戦を開始。


家畜という言葉にキレたのは侮辱されたからだろうけど、何に対してだ? 自分が因子を植えつけて狂わせたコウイ一族? それともヒショウ自身? あの怒り方からして自分自身を侮辱されただけには思えなかった。


ヒショウに乗り移り支配したとしても、成長速度までは変えられない。長い年月二つの人格、長く生きた魔術師と新たに生まれた人間。今も居るというのは消し去れなかったからだろう。だとしたら助け合って生きていくしかなかったはず。


「だりゃぁあああ!」


 段々とその顔が歪んでいる様に見えてきた。ヤグラさんから聞いた、娘一人逝かせない。この言葉にその答えがあるんじゃないか。僕は振り被った一撃を素早く避けつつ懐に入り、即座に回転しながらヒショウさんを投げて石畳に叩き付ける。

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