異世界で自己紹介
僕は野上康久。二十歳の超エリート無職だ。コミュが出来ずメンタルも豆腐で出来ているガラスのハートな僕は幼稚園時代からずっとぼっちで過ごしたぼっちのプロでもある!
小学生時代は空気として過ごし中学二年から部屋に引き籠る。高校は通信高校を受験し受かるも通学が毎週あると知り一週間で行かなくなった。
大検を受けて合格し大学受験も通過して素敵な大学生活を夢見たものの、ニュースで大学生活でも便所飯を続けている人がいるという特集を見てしまい現実に憂鬱になるが一縷の望みを掛けて挑んだ入学式。
校門を一歩入った瞬間何故か僕目掛けてスポーツ部の先輩たちが突撃してきて囲まれ挙句胴上げをされて晒し者になりテレビにまでインタビューをされるもどもって終了。
結果スタートダッシュで躓き当然のように僕も便所飯。友達も出来ずそれでも何とか一年通ったが最終的に引き篭る。
家で日がな一日天井を眺める最高な日々が続いていたある日。目が覚めてみたら砂漠のど真ん中に柄物Tシャツにスラックスにスニーカー姿で居た。
確か寝ていた筈なのになんでスニーカーを履いているのか疑問に思ったけどついに死ねたのかと喜んだのも束の間、朝昼夜とお天道様が動いている上に、暑さ寒さを感じる始末。
死んでないじゃん! なんでだよ!
こんな時すら声を出さずに砂に当たり散らす僕。大人と言われる年齢になったら自動的に大人になる、そう考えていたのに現実は子供のまま年齢が上がっただけだ。
取り合えず修得済みのジッとしてその場で仰向けになり天井を見上げると言うスキルを使用し一日は思い過ごしかと思って耐えたが二日目は無理。駄々をこねてみたものの体力を無駄に消費しただけ。お天道様が落ちる方向に向かって進んでみたが果てしない砂漠が続くだけ。
「駄目だ……死んでしまう」
倒れ込み意識が遠のいていく。
・
「勇者、死んでしまうとは」
目をあける気にもならないくらいシンドイ。何か声をかけられたが無視する。死んだなら起こさんといてくれ。
「おっきろよコラ!」
髪を掴まれてその痛さに起き上がらざるを得ない。目の前にはボサボサした赤いショートカットの女性がいる。顔には小さな刀傷が沢山あり左頬に目立つ大きな刀傷が一つあった。
「なに?」
「何じゃねーよ。生きろ」
「は?」
「生きろ。ぐだぐだ言わないで歩け。食料を自分で調達しろ」
「断わります」
ゴン! という音とともに僕の御でこに激痛が走り仰向けに倒れる。
「良い事を教えてやる。そのまま寝てたところで、オメ―は死ぬことは出来ない。苦しんで苦しんで苦しんだ挙句、もう一度生き返る。そしてまたやり直すだけだ」
サディスティックな笑みを浮かべる乱暴な女性。苦手だわ……ただでさえ人間が嫌いなのにその中でも更に苦手な部類だ。
「嫌です」
「は?」
「嫌だって言ってるんだよ! 何でそんな事しなきゃいけないんだ! もう消えてなくなりたいのに余計なことするな!」
精一杯の声で心の叫びを吐露する。もう面倒だから御終いでお願いしたい。
「へぇ。良い声だすじゃねぇか」
目を丸くした後微笑む女性。認めてくれたのかな。
「アタシに意見するなんて良い度胸だ……アタシの名前はヴェルダンディ。今を生きる神だ」
「だからどうした!」
前に何かのアニメで見た最強の返し言葉というものを使ってみた。
「どうしもしない。苦しんで何度でも死ね」
ヴェルダンディは僕の首を両手で絞めながら微笑みつつそう言った。
「初回サービスだ。お前が下で目を覚ました時、お前には過ぎた武器を幾つかやる。それを鍛えて生き残るもよし、何度も死ぬのもよしだ。そしてお前の態度に対して褒美をやる。砂漠を越えるだけのアイテムだ。泣いて喜べそして惨たらしく死んで戻ってこい」
サディストしかいない世界なのか……。僕は意識を失いながら最後までこの女を睨むのをやめなかった。
目が醒めれば満天の星空。首に痛みが残る。それをさすろうとしたが何かが付いている。指で追うと、どうやら首輪のようだ……。どこまでサディスティックな神様なのだろうか。
溜息を一つ吐いて僕は上半身を起こすと、目の前には五つの武器があった。ここで何もせず座り込んでいる事も出来るけどそうなると本当に苦しんで死にを繰り返すだけだ。
そんなものはうんざりだし苦しんで死ぬしかないなら何とかして苦しまない状況までやってやる。例え誰かを討つとしても。
僕は立ち上がり武器の前まで近づくとそれらは光る玉へと姿を変えた。そして僕の体の中に吸い込まれた。
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