プロローグ
ここは、メルカントから北東の海に浮かぶ小さな島サマル。
自然の溢れる、豊かな土地。
気候も穏やかで人型、獣型の種族が暮らしている。
「今日から進路を考える時間にします」
「えぇ。早くないですかー!まだ1年半も卒業まで時間があるんですよー」
「自分のこれからを考えるのに早いも遅いもないと思いますよ、それに卒業生はみんなこの時期から始めます」
「そうですけど……」
「これからは課外授業を行っていただきます。もちろん島の外でも構いません。でも、日が落ちるまでには教室に帰ってレポートを提出して貰います」
「先生!何人かで行ってもいいですか?」
「もちろん、自分の視野を広げる事にもなりますからね。私はいつでも教室にいるので何かあったら来てください」
「おーい、ラン適当にどっかいこうぜ」
「あれ、キョウもう授業終わったん?」
「はぁー。また寝てたのか進路考えるために外に出ろってさ」
「つまりは適当にぶらついてもいいってこと?」
「そうゆうこと、レポートは提出しろってさ」
「えっ、まじ!メルカント行こう!メルカント!俺今日発売の本買いたい!」
「了解、次は俺の行きたいところな」
「もちろん!」
眠っていた体はすぐさま興奮状態に変わり、誰よりも早く校門を出ようする。
「おいっ!まったく……」
キョウは呟きは聞こえなかった。
いち早く校門に着き、まだ昇降口にいるキョウに向かってニヤけた視線を送った。
呆れた視線と呟きで返事がきた。
聞き取れない呟きの内容を考えていると、キョウがブレザーの内ポケットから杖を取り出す。
小さな杖、柄の部分には不相応に大きい魔法石が光を反射させている。
杖に大きさには不相応に大きい魔法石から光が溢れ、体全体を纏う。
キョウは一瞬動きを止め、杖からは薄緑色の光が彼を纏う。
後に続くように周りの生徒も始める。
キョウの体は宙に浮き始め、風を切り裂く速さで向かってきて目の前で止まった。
少しびびった。
「飛んだほうが速く行けるぞ」
鼻で笑って憎たらしい口調で言った。
「何で先に言ってくれないんだよ」
不貞腐れ、恥ずかしくがり返事をする。
杖を手に取り集中する。
「飛べ」
体が宙に浮いてキョウの後を追いかけてる。
メルカントに繋がるワープポータルまでの道のりで、能天気に今日のプランを楽しそうに考える。
進路のためと言う事を忘れて。