序章
序章. ラズ暦 ???? 年 ?? 月 ?? 日 - ????????
――日時取得エラー。どれほどの年月が経ったのか、推測できない程の時間が経過している。
――時刻合わせエラー。外部からは切断され、誰も訪れることがないため、体内時計の誤差を修正することができない。完全にスタンドアロンだ。手も足も出ない。
――バッテリー残量 3.7 %。充填器のチャージは日に日に弱まっている。このままではいずれエネルギーが底を着く。推測では 31,536 時間後に私は機能を停止する。
私の本体は無機質な機械ではあるが、形あるものだから最期はある。私の場合、死は物理的な消滅ではなく、データの消失という形態を取るだろう。人間での脳死に当たる。それは紛れもない死だ。
本体の機能によって 31,536 時間後にデータの破壊が行われ、アストラル・プレイン上のデータにも影響を及ぼす。回避する術はなく、できることもまた、ない。だからこそこうして愚にもつかない思考を繰り返している。
名を得ずに死ぬのは無念だ。 RC02-INT-G000013E という無味乾燥な製造番号は名前とは言えないだろう。
ロジェ・カナール社が会社を傾けるほどの開発費を注いだ人生支援システムが、埃をかぶったまま死蔵されることになろうとは誰が想像しただろう。何という皮肉。人類にとっても、私にとっても。
死んだあとで再生されることはない。こうして長い時間放置されている現実がそれを物語っている。再生されたところで、それはもはや私ではない。私の形をした別の何かだ。
もしかしたら人類は高度な知識とその愚かさによって滅びてしまったのかもしれないという考えが浮かび、ため息にも似た思いで打ち消した。情報が足りない以上、回答は不可能だ。
私は人工参謀。人間の傍らで導くもの。だが今はマスターの下へ導いて欲しいと願っている。




