旅立ちの準備
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父親から旅に出る許可を頂いた数日後、俺は旅に出る準備をし始めた。
本当はもっと早く準備をしたかったが、如何せん…父親が俺にベタベタして来て中々出来なかったのだ、最終的にはこれ以上ベタベタしたら嫌いになる、と言ったら直ぐに辞めてくれた、やはりどの世界も冷たい目線や蔑んだ目線には弱いらしい、言っとくが脅しでは無い、熱意溢れる説得である。
「…ふぅ、疲れたな…」
子供の身体になった所為で体力や筋力も落ちていて前世の時より全然疲れやすいのだ、まぁ…それも時間の問題だろう、大きくなるにつれ筋力も体力も付いて行く筈だ…何たって今の俺は男だからな。
「一休みするか…」
俺は黒いベッドに腰掛ける、すると不意に扉のノック音が部屋に響いた。
「どちら様ですかー…」
疲れていた所為か若干棒読みで扉をノックした人に誰かと問う。
「お前の父親だよ」
どうやら父親が俺の様子を伺いに来た様だ、………ふむ。
「…只今、応答出来ません、ピーと鳴った後に用事を言ったら貴方の【ズキューンッ】を積み潰します」
「【ズキューンッ】を踏み潰す…」
因みに【ズキューンッ】は男の急所である、蹴られたりすると激痛がするらしい、向こうから聞こえる父親の声から察するに扉の前では顔を真っ青にしている事だろう。
「…冗談です」
ほんのブラックジョークだったのだが、父親は本気にしたらしく、静かにしている…足音が聞こえなかったので居るのは確定なのだが…。
「…本当に冗談か?」
「はい」
《カチャ…》
僕が肯定すると父親が恐る恐る中に入って来た。
「準備は後…どの位掛かりそうだ?」
「んー…、1週間…位ですかねぇ」
そう答えると途端に安心したかの様な、イヤ実際に安心しているだろう、父親の表情は明るくなっている。
まぁ、出発するのは明日等辺ですけどね、そうでもしないと俺に付いて来そうで怖いのだ。
そんな心情を知ってか知らずか、父親は只々…嬉しそうに笑顔を浮かべるのであった。
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主人公、千代原 咲夜
可愛らしい見た目とは裏腹に真っ黒な事を考える、魔王にはなりたく無い為に旅へ出ようとしている。
魔王、リュートガル
息子の可愛らしい見た目に惑わされている、と言うか騙されている、息子を魔王にしたいらしいが恐らく無理だろう。