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第28回

  翌週の土曜、三人は出会った。悟君などはもう、ウズウズしていたと言わんばかりである。私がメールした事件に関して何らかの情報を入手したのだろう。で、ウズウズな訳だ。一方、塩山の方は至極、冷静な面持(おもも)ちでやって来た。

「正夫はん、持ってきましたでぇ~」と、ニンマリした面相で悟君が(ささや)く。

「警察まで行ってきましたにゃ」

「えっ?」驚いた私は、彼に詳しく訊いた。なんでも彼は大都会(この町から半日はかかる距離にあるのだが)へ態々(わざわざ)お出かけになったらしい。これには私も塩山も幾らか驚いた。彼は情報を得るべく遠出していたのだが、その行動力には参った。ただ連絡しようと送ったメールが、彼をここまで行動させたとは…。それにしても悟君の行動は、辣腕(らつわん)のデカに匹敵する。

「やってくれたねぇ~」溜息とともに、塩山は賛辞? を述べ、悟君を(ねぎら)った。

「で、君の方は?」と塩山に投げかけると、彼は仏頂面(ぶっちょうづら)で、「どうもこうも…。篠原さんに比べりゃ、ハハハ…、語るほどのこともないです。本屋を数件ハシゴしたくらいですから…」

と、すっかり恐縮してしまっている。

「そんなこたぁないでしょう…。俺だって似たもんだ」と一応は慰めた。

  事情を訊くと、塩山の勤めの関係で、予定していた情報収集が不首尾に終わったと言う。

「まあ、それは仕方ないんじゃないですか? 仕事が第一ですしねぇ」

「ええ、それはそうなんですが…」

  もう一つ煮えきらない鍋のような返答で、覇気もない。そこで私は話題を変えた。

「で、そういうことを踏まえて、[時]としては、こうした意味不明というか、通常の思考では難解な事件や出来事にスポットを当て研究していこうと思う」

「よろしいおまっ」「結構です」と了解が出て、久しぶりに確固たる活動方針が決定した。

  と、なると、次にすることといえば、観察する事件を絞り込んで探し出さねばならない。ひとまずは、私が提起した通り魔事件が研究の観察材料にはなるが、なにせ遠方の事件である。悟君は別として、普通ならば取材し(づら)い。日程、旅費、時間と、どれをとってみても難儀だ。しかし、ボツにするのは、遠方へ足を運んだ悟君に悪い気がする。そこで、今回に限り業務分担的な手法を用いることにした。もちろん行動部門は悟君に任せた。彼は気持ちよく承諾してくれた。遠方の取材は、私や塩山にとって勤めの関係で少し無理なのだ。その点、億万長者の悟君は上手くしたもので、働く必要もなく便宜が効くらしい。情報整理の分野は塩山が、そして私は情報分析を受け持つことになった。このテーマの研究期間は二ヶ月を目処とし、一応の区切りがつく迄とした。ところが、ここからが、全くブレーク・スルーそのものの観察となった。この事件への対応は、私が当初、予定していた活動ではなかった。というのも、情報整理の分野を受け持った塩山のひと言が、その発端となったのだ。

「村越さん、私が思うに、ここは一つ、行動心理学、精神医学、社会心理学などの専門的研究も必要になろうかと思います。例えば、大学の先生方の意見を拝聴するとか、もちろんそれには、私達が図書館で勉強する必要も生じるとは思いますが…」

「……、そうですねぇ、塩山さんの言うとおりかも知れない。俺たちの研究は、ややもすると上辺(うわべ)だけの所謂(いわゆる)、浅学非才って言うんですか? なんか、そんなふうになっていた傾向があります。今までの研究は、学者なら誰もが考える範囲のモノだったかも知れません。発想の転換、これは一つの冒険ともいえますが、人がやっていないことを馬鹿馬鹿しく思わず真摯(しんし)にやるっていうのも大事だと思いますしねぇ」

  私は塩山の発想に共鳴した。全ての事象において、人間の進歩はブレーク・スルーに尽きるのだ。ただ、変人と思われるのが厄介なのだが…。

                                                 続

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