5話 コイツは夢の中で見たことがあるぜ
・1869年
・草原の女の子
ガタンゴトンガタンゴトン――
草原の中、テントの中で体をのばして寝ている時、鮮明な死を描いた夢を見た。蜃気楼と陽炎の狭間の中で、地面いっぱいに、隙間なく白アリがはっている。千をもこえる死体があり、白アリがそれを貪っている。中には生きているものがいて、「もー」「にゃー」「がうー」「うぎゃああ」「うほぉー」と叫び声をあげている。その中に声にならない声を出すものがいた。西洋のマドンナのレリア・アントワネットだった。蜂蜜色のくるくるに巻いた髪が乱れている。健康美あふれた萱草色の肌もじりじり焼けてしまい、今では漫画のような丹色にまでなってしまっている。灼熱地獄。はいた息が40度を超えている。体の水分が砂漠をぬらしていく。
「すみません。寝ているようですが、切符拝見しますね」
「ああ。すみません」
記憶に残るようなはっきりしていた夢を思い出していると、いつの間にか寝てしまっていたようだ。ポンチョの中に手を入れてポケットの中を探り出した。親父の遺品を処理してる時に30年前の切符がでてきた。無期限だから多分使えるだろう。駅員は何事もなく切っていった。
「ありがとうございました」
そういえば、あの駅員も灼熱地獄にいた気がする。目が細長くて、鼻がS字にぐねぐねと曲がり、頬が顔のどこよりも目立ち、足が長く極度ながにまた。……絶対にいた。
鉄の塊の大きな汽車の振動によって揺れられる体が、叫び声をあげている。にごりのない汗が肌からにじみてできて太陽の光がそれで反射した。次の瞬間に一気に体温が下がり落ちた。白アリが彼の体を貪り始めるワンシーン。――あれが旅と冒険に現れたらどうしよう。
私の心の奥の何かが小さくなって、涅色の波にのまれた。
旅をする勇気。旅をしないと人生の楽しみがなくなるという失望。今までよくやってきた自分を褒めたたえてこの場まできたのに、いきなりの失意のボールがぶつけられてしまった。
短くてすんません。すみません、か;;
これ書いてて思ったんだけど、一人称単数とか二人称・三人称って難しい。今までアドバイス・批判うけてきたけど、特に言われなかったからこのままでいいのかなぁと思ってるんだけど。どうなんだろうなぁ、うーん……。