3話 帽子をかぶる理由? それは結構重要なんだよな…
・草原の舞台
・1869年
旅が始まって、日が暮れはじめる時間にひとつのテント型の屋台をみつけた。途中で低い山のてっぺんが削れて平坦になった道があり、そこを歩いていたのだ。ここは人の通りが草原にしては良い方だから、ここに屋台を置くのも無理はない。
目が糸のようになった、店の老夫婦は人生の半分を終えてほのぼのしているように思えた。ブリーフ(中東の民族衣装/首から足まで分厚く白い布でつくられたもの)から出た皺だらけの手には全くといって脂がのっていなかったし、ありあまった皮膚がぶよぶよとなっているから力がないように見える。でも、幸せそうだった。屋台の木の香りと心地よい風などの自然関係。金目のないものが至福となっているのだろうか? こういうのが一番の贅沢だ。
そこでテントを買った。寝袋みたいなものにおさまっていて、片手で運べるのが便利だった。東の方角から紫のような、少し暗いトーンが現れ始めたと思ったら、すぐに空全体が藍色に塗られてしまった。そして、ミッドナイトブルーがおしよせてきて夜になってしまった。那由多をこえる星が地平線までびっしりはりつめて輝きはじめた。
小さい星、大きい星、明るい星、暗い星。そろそろ休もうかと思い、低い山をおりようと思った。いつの間にか急な角度で山が構成されていたことをしった。変なステップをがたがたと踏み、なんとかおりた。最後の一歩の所でドジまで踏んで地面に手をつけた。腰がつの字に曲がる。草原の草が異常に柔らかかった。手でふにゃりと自由にまげられるほどだ。手でさわっているという感覚も――。
「そうか。もうこんな所まで来たか。
北西の草は柔らかいと聞いたことがあるもんな。
だいぶあっこから逃げてきたか……。
ここらで私の正体を知る奴はいまい……、そろそろぬぐか」
カウボーイハットを無遠慮につかんでひっぱった。汗ばんだ帽子の下には真っ黒な髪があった。彼女の髪に溶々たる風が通って光沢がウェーブのようになったのを見れば、ただの人間ではないことがわかる。満足に潤っていると言っては日本語がおかしいが、何も批判のつけようがなく、事実そうなのだ。言葉では表せないほど優美で、さらっとしたからまりのないこの時代では珍しい髪の毛。
「じゃあ、あれは……」
「あぁ。殺したんだよ。だからいなかった」
……頭の中に、いや、
体の中にこの声が住 ★ ★
みついたのは、つい ☆
昨日のように思い出 ★
される。誰の声かは
分からないが、若く ☆
はねえ男の声だとい ★
うことは少なくとも
わかった。一日のう ☆ ★
ちにどれだけこの意
味不明な会話を聞く
のかワカラナイ。き 。゜.o。ステキ。o.゜。(´д`人)
っと自分には何かある。
それだけ分かった。だから、旅に出ようと思った。本当は地元で婿でも募集して子供を産んで牛でも飼って、遊牧民の生活をしようかと思っていた。だが、ブルーベリー自身、親を殺してからしっかりしはじめて夢を捨てることを学んだ。この会話の正体を探す旅をしなくてはいけないような気がした。何の話題かもわからなかったが、殺したって何だ。あれって何だ。きっと大きな事件の一部の会話に違いない。あの会話の男達は声を震わせていた。何故、そんなものが体に住みついたのかよくわからない。始まりは、親を殺した直後に小さく聞こえた程度で何も思わなかったが、初めて仕事をして給料をもらった時、借金の莫大さに気づいた頃にいきなり大きく聞こえ始めた。怖かった――。
焚火を作るために何かないかと思ったが、草を燃やして火事にするわけにもいかなかったのでカウボーイハットにライターをあてた。少々の時間燃え続けるだろうと思っていたが、あまり燃えず意外にも持つかと思った。ジーロンラムポンチョの中に手をつっこんでみるとイモリかヤモリか、そんな姿をした干物が縦にのびていたのがみつかった。別に飼っていたわけではない。乳製品を売る仕事についていたのだが、そこに真っ白とポチポチの猫がいて主人に昼になったらやるようにと10匹ほど預かっていたものだ。その残りがポケットの中に入っているというだけ。他に何も食べるものがなかったのでそれを食べた。口の中の水分がどんどんなくなっていく。もう何で潤せばいいのかわからない。
「……そういやぁ」
彼女は万緑においしげった芝生を見た。一度だけ、草で水分をとったことがあるのを思い出したのだ。え、マジで、と彼女は自分の本能をからかうようにいったがすぐに胃液が何か水分が欲しいといってきた。腹の中が熱い。人間なんか忘れてくらいついた。太陽の下、涼しい風がふいていても汗が出るのは自然的なこと。だとすれば――。苦い。阿保か、と言って咳込みながらはきだした。歯に水分が少しついた。それだけでも十分だと思えた。
今は。
空白の部分に、へんな巨大顔文字入れようと思ったんですが
難しいのでやめることにしましたw
縦で見てる人もいるかもしんないし。