塔
掲載日:2026/01/21
「あの塔にだけは、絶対に行っちゃダメ」
ばあちゃんは、よくそう言っていた。
普段は穏やかな人だった。
あまりにも真剣な顔で言うもんだから
なんだか妙に怖かったのを今でも憶えている。
理由は聞かなかった。聞けなかった。
高校生になった頃、
あの塔で違法な産業廃棄物処理が行われていたらしい、
という噂を耳にした。
「ああ、そういうことか」
理由がわかった気がして、なぜかホッとした。
大人が近づくなと言うのは、
だいたいそういう理由だ。
それから何年か経ち、
塔の周りにゴミが大量に不法投棄されるようになり、
町による処分が行われることになった。
その流れのままに
塔も取り壊されることが決まった。
その決定に、
なぜか年寄りたちが猛反対した。
理由を聞いても、
「ダメなもんはダメだ」
それしか言わない。
何度聞いても、
それしか言わない。
町は取り壊しを強行した。
塔は壊され、
新しい建物を建てるための基礎工事が始まった。
その途中で、それは見つかった。
土の中から、古びた壺がひとつ。
なんだ、これ。
フタを開ける。
えっ………




