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夜魅  作者: sizu.
九月編
6/14

一本取られたな。

深夜十二時、僕は朝奈(あさな)さんを待っていた。「まったく…急に十二時に集まれとか言われても困る。」そうつぶやきながら、ため息をつく。だって実際バレないように外に出てきたわけだし。

夜野(やの)くん!お待たせ!」

「あ、ども。」

お風呂に入ったのか髪を下ろしている朝奈さんに新鮮さを感じる。

「いや、来たばっかりです。」

「そっかぁ。良かった良かった。」

「で、深夜に呼び出して何するんです?」

その言葉を聞いた朝奈さんは何か企んだような笑みを浮かべた。

「さぁ、始めようか。夜を見に、魅せられに。」

????急に何を言っているんだこの人。あ、いつものことか。

「そんな何言ってんだみたいな顔で見ないで!恥ずかしいから!!」

じゃあなんで言ったんだ。

「それ、何です?」

「号令みたいなもんだよっ!」真っ赤な顔で朝奈さんは答えた。

「何のです?」

「…魅。」

「え?何です?」

「だからっ!言ったじゃん!夜を見に!魅せられにって!」

あーなるほど。不良になろとか、夜魅とか、結局はよふかしをしたかったのか。

「なるほど、分かりました。行きましょう。」

「うん。」

そうして、初めての真夜中まち探検が始まった。

「どこ行くんですか?」

無言の朝奈さんに聞く。

「かしい…は、恥ずかしいから話しかけないでぇ。」いまだに真っ赤な顔を隠しながら言う。まだ気にしてたのか(なお、朝奈さんは回を重ねるうちに言うのが楽しみになっていく)。取り敢えず、そっしとくか。


歩いて十分ほどで朝奈さんは止まった。

「目的地、ここ。」と言って公園に指を差した。

「公園かー。最近行ってなかったから、懐かしいです。」

「こっちこっち。」やっと落ち着いたのか、朝奈さんは僕の手を引いて公園内に連れて行く。朝奈さんに手を引かれたまま階段を登った。階段を登り終えたのか僕の手を離し言った。

「ほら、魅(見)て。」

僕は目に入った光景に目を疑った。目の前には美しい星空が広がっていた。まちには街灯などがあり、星はあまり見えなかったがここは違う。下の方にはややビル、街灯の光は見えるが、ここの辺り一帯を照らすのは星だけだった。

「す…すごい…。」僕は完全に魅せられた、星空に…それに照らされる夜に…!こんな気持ち、初めてな気がした。

「これが、夜…。」

「いやぁ、すごい綺麗!想像以上!」

「朝奈さん!ほんっとっおにすごいですよ!普段こんな星は見えないですよ!」

「ふふっ夜野くん、夜に魅せられたね。」

「みたいですね。」そう言って彼女の微笑みに僕は微笑み返した。これは一本取られたな。

「あ!金星!」

「朝奈さん…夜に金星は見えないですよ…。」

本当に受験生か…?え、うん。本当に一本取られた…。

「え゙っ゙?」

「今の季節的によく見えるのはアンドロメダとかじゃないですか?ほら、あれ。」

「どれ?」

「あそこらへんの。ほら、秋の大四辺形のところに人っぽいのが…」

「え〜?どこ?ん?あれか!夜野くん!あったよ!あった!」

うん、無邪気だな。

「てか夜野くん頭いいね。志望校どこなの?」

「えっ一応、結高。」

「結高なの?!すご!」

結構高等学校、通称結高。偏差値はここらへんの高校のなかでは、トップクラス。母さんの方針で行かなければならない。

「え、もしかして今こんなことしてる暇ない?バレたらヤバイ?」

「確かに暇ないっちゃないし、バレても普通にヤバいと思う。」

「えっごめん。」

「気にしないでください。僕も楽しいので。」

「本当に?無理しなくてもいいんだよ。」

「本当に大丈夫です!それとこんな綺麗な星を見せてくれてありがとうございます!僕、星が好きなんですよ。」そう言って最近の中では一番の笑顔を朝奈さんに向けた。

「それならよかった!」

朝奈さんも笑顔で答えた。

今もこの時のことが忘れられない。

記憶は過去へのタイムマシンか…。






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