夜を見に、どうするんだい?
ピロロロロと電話の音が鳴っていたが、私の席からの電話ではないので当然スルーする。
「白部ちゃ〜ん、白部ちゃ〜ん。ちょっと聞いてくれよ。」小太りの編集長が私を呼んだ。
「どうしたんですか?編集長。」
「あのね。この前さ、飲みに行ったんだけど飲みすぎてバス停のベンチに座って休憩してたら、若い男女が気にかけて話しかけてくれたらしいんだよねぇ。」
「そうなんですか。」
「そうなのよ!いやぁデートの邪魔しちゃった?とか言ったら、顔真っ赤にしてて若いっていいねぇ。」編集長はそう言いながら、顎をさする。
「それって何時くらいですか?」
「時間は覚えてないけど、十二時過ぎなのは確かだよ。」
十二時過ぎ?いや、おかしいだろ。若い男女がそんな時間にデートするか?
「その子たちってどんな感じで、どこのバス停で会ったんですか?」私は気になり問いかけた。
「いやぁ、悪いけど俺は酔ってて全然覚えてないんだよねぇ。その時一緒に飲んだ人から聞いた話だから。あ!そういえば、その人と今度飲みに行く約束をしたんだけど白部ちゃんも来る?あ、白部ちゃんってそういうの苦手なんだっけ。ごめんごめん。」急な話の多さに戸惑いつつも私は言葉を返す。
「それじゃあ、その今度ってのはいつですか?」
「え?来るの?」
「はい。行かせていただきます。」
おそらく…その子たちは中高生だろう。なぜだか知らないが、真夜中にデート…。ふふっ、面白くなりそうだ。
僕は学校から帰り塾へ行き、帰っている途中だった。
「あ!夜野くんだー!」
「どーも、朝奈さん。」僕は軽く会釈をする。彼女は朝奈真美。学校も塾も違うが僕が困っている朝奈さんを助けたことで、知り合った。
「じゃあ、今日も深夜十二時に。」
「はい。」
そんな僕らは中学生だが、夜の街に勝手に出掛け遊んでいる。
夜を見て、魅せられる。そんな僕らだけの秘密が今夜も始まる…!
約二時間後、僕はいつも通り家の前で待っていた。
「お待たせー。」
「あ!朝奈さん。こんばんは。」
「夜野君、こんばんは。さっき会ったけどねぇ。」二時間前まで一緒にいたしそうだよな。
「いつものやっちゃいましょうか。」
「ふふっ、そうだね。今夜も行こうか。夜を見に、魅せら…。」
「ははっ、ビンゴだぁ〜。ちなみに、夜を見に、どうするんだい?」
突如、知らない女性に僕達の号令はかき消された。
夜野君達がピンチに?よふかしがバレる?
てか、白部ちゃんっていきなり出てきたけど誰だよ。




