第37話:帰還と新たな決意
王都を出発してから三日後、俺たちはノヴァシティに帰還した。
街の入口が見えた瞬間、俺は胸が熱くなった。
あの小さな村から始まった街が、今では立派な都市になっている。城壁に囲まれ、家々が立ち並び、商店の看板が風に揺れている。その光景は、まるで遠く離れた故郷に帰ってきたかのような、懐かしさと安堵感に満ちていた。
「ただいま」
俺が呟くと、隣にいたセレスティアが微笑んだ。
「はい。ただいまです」
彼女は、もうノヴァシティの一員だ。
街の入口には、多くの住民たちが集まっていた。
「領主様、おかえりなさい!」
「レン様、セレスティア様、おかえりなさい!」
「結婚、おめでとうございます!」
その声々が、温かく俺たちを包み込む。子供たちが花びらを撒き、大人たちが手を振り、老人たちが涙を流している。その光景は、まるで家族が帰りを待っていてくれたかのような、心温まるものだった。
「ありがとう、みんな」
俺が答えると、さらに大きな歓声が上がった。
リーナとエミリアも、駆けつけてきた。
「レン様!」
リーナが、嬉しそうに抱きついてくる。
「お帰りなさい!」
「ただいま、リーナ」
「セレスティア様も、ようこそ!」
エミリアが、セレスティアに深々と礼をする。
「ありがとう」
セレスティアが、優しく微笑む。
「これから、よろしくお願いします」
「はい!」
二人が、嬉しそうに答えた。
その夜、街の広場で祝賀会が開かれた。
松明が灯され、テーブルには料理が並び、音楽が奏でられている。住民たちが踊り、笑い、祝福の言葉を交わしている。その賑わいは、まるで祭りの神が降臨したかのような、活気と喜びに満ち溢れていた。
「レン様」
セレスティアが、俺の隣に立った。
「素敵な街ですね」
「ああ。みんなで作り上げた街だ」
「私も...この街の一員になれて、嬉しいです」
セレスティアの目には、涙が浮かんでいた。
「これからは、ここが私の家です」
「ああ。一緒に、この街を守ろう」
俺がそう言うと、セレスティアは嬉しそうに頷いた。
アリシアも、広場の端で住民たちと話していた。
「アリシア様、強いんですよね!」
子供たちが、目を輝かせている。
「ええ。まあ」
アリシアは、少し照れくさそうに答える。
「私も、この街を守ります」
「やった! これで、もっと安全だ!」
子供たちが、喜んでいる。
その姿を見て、クレアが近づいてきた。
「馴染んでるな」
「はい」
アリシアが、微笑む。
「良い街です。守る価値がある」
「ああ。俺たちの街だ」
クレアも、街を見渡した。
祝賀会は、深夜まで続いた。
だが、俺たちには話し合わなければならないことがある。
祝賀会が終わった後、俺たちは屋敷のリビングに集まった。
七人のヒロインたちが、ソファや椅子に座っている。暖炉の炎が、優しく揺れていて、その光が七人の顔を温かく照らしている。
「さて」
俺が口を開いた。
「これから、どうするか話し合おう」
七人が、真剣な表情で頷いた。
「闇の使徒は、また来る」
クレアが、厳しい表情で言う。
「ああ。間違いない」
「彼らの目的は、レンの創造魔法」
リリエルが、冷静に分析する。
「魔王を復活させるために、必ず狙ってくる」
「わたしたち、守らなきゃ!」
ミーナが、拳を握る。
「レンおにいちゃんを、絶対守る!」
「防衛体制を強化する必要がありますわ」
シャルロットが、冷静に提案する。
「城壁の補強、見張りの増員、そして避難経路の確保」
「情報収集も重要だ」
レイラが、腕を組む。
「闇の使徒の動きを、常に監視しなければ」
「私は、王国との連携を強化します」
セレスティアが、決意を込めて言う。
「父上とも話をつけました。何かあれば、すぐに援軍を送ってくれます」
「私は」
アリシアが、剣に手をかける。
「戦力として、最前線で戦います。そして、護衛隊を訓練します」
七人が、それぞれの役割を明確にしていく。
その姿を見て、俺は改めて思った。この仲間たちがいれば、どんな困難も乗り越えられる。
「みんな」
俺が言うと、七人が顔を上げた。
「ありがとう」
「礼を言うな」
クレアが、微笑む。
「私たちは、家族だ」
「そうよ」
レイラが、豪快に笑う。
「あんたのためなら、何だってするさ」
「わたしも!」
ミーナが、元気よく答える。
「私も、全力でサポートしますわ」
シャルロットが、優雅に微笑む。
「私も...レン様のために」
セレスティアが、俺の手を握る。
「私も」
アリシアが、静かに言う。
「私の剣は、あなたのために」
「当然だ」
リリエルが、冷静に付け加える。
「お前と一緒なら、乗り越えられる」
七人の言葉に、俺の胸が熱くなった。
「これから、もっと大変になる」
俺が言うと、クレアが頷いた。
「ああ。分かってる」
「魔王が復活するかもしれない」
「それでも」
クレアは、俺を見つめた。
「私たちは、戦う」
「そうだ」
七人が、一斉に頷いた。
窓の外を見ると、夜空には星が瞬いている。
ノヴァシティの街並みが、月明かりに照らされて美しく浮かび上がっている。その光景は、まるで平和そのものを形にしたかのような、静かで穏やかなものだった。
だが、俺の心には不安もあった。
本当に、魔王は復活するのか。
もしそうなら、俺たちは勝てるのか。
「レン」
セレスティアが、俺の肩に頭を寄せてきた。
「大丈夫です。私たち、一緒ですから」
「ああ」
俺は、セレスティアを抱き寄せた。
七人が、温かく見守ってくれている。
遠く離れた場所——
深い森の奥、人の足が決して届かぬ暗闇の中。
そこには、古びた神殿が立っていた。
石造りの壁は苔に覆われ、柱は崩れかけている。だが、その中央には、巨大な魔法陣が描かれていた。その魔法陣は、まるで生きているかのように脈動し、不気味な光を放っている。
魔法陣の中央には、黒い結晶が浮かんでいた。
その結晶の中に、何かが封じられている。
巨大な影。
圧倒的な魔力。
それが、封印された魔王だった。
「...」
結晶の中から、声が聞こえる。
いや、声ではない。意識だ。
『もう少しだ...』
その意識が、闇の中に響く。
『もう少しで...復活できる...』
結晶が、わずかに揺れた。
封印が、少しずつ弱まっている。
『レン・タカミ...』
魔王の意識が、遠くノヴァシティを感じ取っている。
『お前の力...我が復活のために...使わせてもらう...』
不気味な笑い声が、神殿に響いた。
その声は、まるで地獄の底から這い上がってくるかのような、恐ろしいものだった。
結晶が、また揺れた。
ひび割れが、わずかに広がる。
封印は、確実に弱まっている。
そして——
いつか、必ず。
魔王は、復活する。
神殿の外では、闇の使徒たちが跪いている。
「魔王様...」
彼らは、祈りを捧げる。
「どうか、一刻も早く復活を...」
黒ローブの集団が、不気味に儀式を続けている。
その光景は、まるで悪夢が現実になったかのような、禍々しいものだった。
だが、ノヴァシティの住民たちは、まだそのことを知らない。
平和な夜を過ごしている。
知らぬが仏——
いや、知らぬことこそが、今は幸せなのかもしれない。
だが、その平和も、長くは続かないだろう。
嵐は、確実に近づいている。
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