第34話:盛大な結婚式
一週間後、結婚式の日が訪れた。
朝から、王都全体が祝祭ムードに包まれていた。通りには花が飾られ、旗が掲げられ、人々が笑顔で行き交っている。王女の結婚という、王国にとって一大事を祝うため、街全体が一つの生き物のように喜びに満ち溢れていた。
王宮の大聖堂——
そこは、王国で最も神聖な場所だ。高い天井には美しいステンドグラスがはめ込まれ、太陽の光が差し込むと、まるで虹の雨が降り注いでいるかのように、色とりどりの光が床に映し出される。白い大理石の柱が立ち並び、その荘厳さは、まるで神々の住まう天界を地上に再現したかのようだった。
聖堂には、既に多くの人々が集まっていた。
前方の席には、貴族たちが座っている。豪華な服装に身を包み、宝石を身につけ、まるで宝石箱をひっくり返したような華やかさだ。後方には、選ばれた民衆たちが座っていて、その数は千人を超える。みんな、この歴史的な瞬間を見届けようと、期待に胸を膨らませていた。
俺は、控室で最後の準備をしていた。
黒のタキシードに白いシャツ、そして胸には白いバラのブートニア。鏡に映る自分の姿を見て、これが本当に自分なのかと、少し信じられない気持ちになる。
「レン」
扉が開き、クレアが入ってきた。
彼女も、今日は正装していた。深紅のドレスを纏い、髪を優雅にまとめ上げている。その姿は、まるで戦場の女神が宴の場に降臨したかのような、凛々しくも美しいものだった。
「準備はいいか?」
「ああ。でも...緊張する」
「当たり前だ」
クレアは、微笑んだ。
「これから、お前の人生が変わるんだからな」
彼女は、俺の襟を直してくれた。その手つきは、まるで母親が子供の世話をするように優しかった。
「クレア...」
「何だ?」
「ありがとう」
俺が言うと、クレアは少し寂しそうに微笑んだ。
「礼を言うな。私は、お前の幸せを願っている」
その目には、涙が浮かんでいた。
「行け。セレスティアが待ってる」
音楽が鳴り響いた。
結婚式の始まりを告げる、神聖な旋律だ。
俺は、聖堂の祭壇の前に立った。
参列者たちが、一斉に俺を見る。その視線は、祝福と期待に満ちていた。
そして——
聖堂の扉が、ゆっくりと開いた。
セレスティアが、現れた。
その瞬間、俺は息を呑んだ。
純白のウェディングドレス。
レースで飾られた袖、長いトレーン、そして胸元には真珠の装飾。ヴェールが顔を覆っているが、その下から金髪が美しく輝いている。手には白いバラのブーケを持ち、その姿は、まるで天使が地上に舞い降りたかのような、神々しい美しさだった。
セレスティアは、ゆっくりと歩いてくる。
その一歩一歩が、まるで時が止まったかのように感じられる。周囲の音が遠のき、視界が狭まり、俺にはセレスティアしか見えなかった。
国王が、セレスティアと共に歩いている。
祭壇の前に着くと、国王はセレスティアの手を俺に差し出した。
「娘を、頼む」
「はい」
俺は、セレスティアの手を取った。
その手は、温かく柔らかい。そして、わずかに震えていた。
二人で、祭壇の前に立つ。
司祭が、前に進み出た。
「本日、ここに集いし皆様」
司祭の声が、聖堂に響く。
「レン・タカミ子爵と、セレスティア・アルカディア王女の結婚を、神の御前に執り行います」
参列者たちが、静かに見守っている。
「レン・タカミ」
司祭が、俺を見た。
「あなたは、セレスティア・アルカディアを妻とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、共に歩むことを誓いますか?」
「誓います」
俺は、はっきりと答えた。
「セレスティア・アルカディア」
司祭が、セレスティアを見る。
「あなたは、レン・タカミを夫とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、共に歩むことを誓いますか?」
「誓います」
セレスティアの声が、涙で震えていた。
「では、指輪の交換を」
俺は、ポケットから指輪を取り出した。
白金の指輪に、小さなダイヤモンドが埋め込まれている。セレスティアの指に、そっとはめる。
セレスティアも、指輪を俺の指にはめてくれた。
「神の御名において、二人の結婚を認めます」
司祭が、宣言した。
「では、誓いのキスを」
俺は、セレスティアのヴェールをそっと上げた。
その顔は、涙で濡れていた。だが、その笑顔は、これまで見たどの笑顔よりも美しく、幸せに満ちていた。
「愛してる」
俺が囁くと、セレスティアも囁き返した。
「私も、愛しています」
二人は、静かに唇を重ねた。
その瞬間、聖堂中から盛大な拍手が起こった。
その音は、まるで雷鳴のように大きく、祝福の嵐のように俺たちを包み込んだ。花びらが舞い、鐘が鳴り響き、音楽が高らかに奏でられる。
俺とセレスティアは、手を繋いで聖堂を歩いた。
参列者たちが、立ち上がって拍手している。その顔は、どれも笑顔で、祝福に満ちていた。
外に出ると、さらに多くの民衆が集まっていた。
「王女様、おめでとうございます!」
「レン様、万歳!」
「お幸せに!」
その声々が、空に響く。
結婚式の後、王宮で盛大な祝賀パーティーが開かれた。
大広間には、豪華な料理が並び、シャンパンが振る舞われている。楽団が音楽を奏で、人々が踊り、笑い、祝福の言葉を交わしている。その光景は、まるで夢の世界のように華やかで幸福に満ちていた。
俺とセレスティアは、高砂の席に座っていた。
「幸せ...」
セレスティアが、俺の手を握りながら囁く。
「本当に、幸せです」
「俺もだ」
六人のヒロインたちも、正装して参加していた。
クレアは深紅のドレス、リリエルは深緑のドレス、ミーナは明るい黄色のドレス、シャルロットは紫のドレス、レイラは橙色のドレス、そしてアリシアは黒いドレスを纏っていた。それぞれが美しく、まるで宝石が並んでいるかのようだった。
「レン」
クレアが、近づいてきた。
「おめでとう」
「ありがとう、クレア」
「お前が幸せなら、私も嬉しい」
クレアは、微笑んだ。だが、その目には、わずかに寂しさが滲んでいた。
「セレスティア」
クレアは、彼女に向き直った。
「レンを、よろしく頼む」
「はい」
セレスティアが、深々と頭を下げる。
「私、精一杯、レン様を支えます」
リリエルも、祝福の言葉をくれた。
「結婚、おめでとう。末永く幸せに」
「レンおにいちゃん、セレスティアおねえちゃん、おめでとう!」
ミーナが、嬉しそうに飛び跳ねる。
「素晴らしい式でしたわ」
シャルロットが、優雅に微笑む。
「あんたたち、お似合いだよ」
レイラが、豪快に笑った。
「おめでとうございます」
アリシアも、少し照れくさそうに祝福してくれた。
六人からの祝福に、俺とセレスティアは深く感謝した。
時間が過ぎ、夜になった。
パーティーは、まだまだ続いている。人々は踊り、笑い、祝福し合っている。
俺は、セレスティアと共にバルコニーに出た。
夜空には、満月が輝いている。その光は、まるで二人を祝福するかのように優しく、穏やかだった。
「レン様」
セレスティアが、俺に寄り添ってきた。
「今日は、人生で最も幸せな日です」
「俺もだ」
二人は、静かに抱き合った。
その時——
突然、爆発音が響いた。
「な...!?」
俺たちは、振り返った。
大広間の方から、黒い煙が上がっている。
「何事だ!」
ガルディウスの声が聞こえた。
そして、次の瞬間——
大広間の窓が、粉々に砕け散った。
黒ローブの集団が、次々と侵入してくる。
「レン・タカミ!」
黒ローブの男たちが、一斉に俺を見た。
「お前の命、貰い受ける!」
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