第28話:王都への旅立ち
ノヴァシティでの祝賀が終わり、一週間が過ぎた頃、俺たちは王都への旅立ちを決めた。
セレスティアとの結婚を正式に国王に認めてもらうため、そして彼女と共に歩む未来を確かなものにするため。この旅は、俺たちにとって新たな門出でもあり、同時に未知への挑戦でもあった。
朝、屋敷の前には大型の馬車が三台用意されている。一台目には俺と六人のヒロインたち、二台目には護衛の騎士たち、三台目には荷物が積まれていた。その光景は、まるで小さな行列が王都へ向かうかのような壮観さだった。
「本当に、みんなで行くのか?」
俺が尋ねると、クレアが当然だという顔で答えた。
「当たり前だ。お前一人で行かせるわけにはいかない」
「私も、お前の力になりたい」
リリエルも、静かに頷く。その目には、いつもの冷静さに加えて、どこか決意のようなものが宿っていた。
「わたしも行く! レンおにいちゃんと一緒!」
ミーナが、元気よく尻尾を振る。
「私も、同行させていただきますわ。王都での礼儀作法など、お教えできることがあるかもしれません」
シャルロットが、優雅に微笑む。
「あたしも行くよ。王都には商人の知り合いが多いからね。情報収集には自信がある」
レイラが、豪快に笑った。
「みんな...ありがとう」
俺の言葉に、六人が嬉しそうに笑う。その笑顔は、まるで太陽のように明るく、俺の心を温かく照らしてくれた。
セレスティアも、感動したように涙を浮かべている。
「皆さん...本当に、ありがとうございます」
こうして、俺たち七人は王都への旅に出発した。
馬車の中は、予想以上に賑やかだった。
「王都って、どんなところなの?」
ミーナが、窓から外を眺めながら尋ねる。
「とても大きな街ですよ」
セレスティアが、優しく答える。
「ノヴァシティの十倍以上の規模で、人口も数万人います。王宮は、それはそれは豪華で...」
セレスティアの説明を聞きながら、みんなが期待に胸を膨らませている。その様子は、まるで遠足を前にした子供たちのように無邪気で微笑ましかった。
「でも、王都は政治の中心でもあります」
シャルロットが、少し真剣な表情で言う。
「貴族たちの思惑が渦巻く場所。油断は禁物ですわ」
「ああ。気をつけよう」
俺が答えると、クレアが剣の柄に手をかけた。
「何かあれば、すぐに対処する」
その姿勢は、まるで獲物を警戒する狼のように鋭く、頼もしかった。
旅は順調に進んでいた。
街道は整備されていて、馬車は快適に走る。道中、いくつかの街や村を通り過ぎた。どこも平和で、人々が笑顔で手を振ってくれる。
だが、二日目の午後——
森の中を通っている時、突然、矢が飛んできた。
「危ない!」
クレアが、即座に剣で矢を弾く。
馬車が急停止し、俺たちは外に飛び出した。
森の中から、黒い服を着た男たちが現れた。その数は十人ほど。顔は布で隠され、正体は分からない。だが、その殺気は本物だった。まるで、闇そのものが人の形を取って襲いかかってくるかのような、冷たく鋭い気配が漂っている。
「お前たちは...!」
俺が叫ぶと、男たちは無言で襲いかかってきた。
「させるか!」
クレアが、剣を抜いて前に出る。
リリエルも、杖を構えた。
「【ファイアボール】!」
炎の球が、男たちに向かって飛んでいく。だが、男たちは素早く回避し、散開した。
「やるな...!」
俺も、剣を抜いて応戦する。
男たちの動きは速く、訓練されている。だが、俺たちの方が上だった。クレアの剣技が、次々と男たちを倒していく。リリエルの魔法が、逃げ場を塞ぐ。ミーナの矢が、正確に敵を射抜く。
五分ほどで、男たちは全員倒れた。
「...何者だ?」
俺は、倒れた男の一人に近づいた。だが、男は既に息絶えている。口から泡を吹いていて、毒を飲んだようだった。
「自害したのか...」
クレアが、厳しい表情で呟く。
「ただの盗賊ではないな」
レイラが、男たちの装備を調べている。
「武器も質が良い。金をかけた装備だ」
「組織的な襲撃...」
リリエルが、冷静に分析する。
「誰かが、私たちを狙っている」
セレスティアが、不安そうに俺を見る。
「レン様...」
「大丈夫だ」
俺は、セレスティアの肩を抱いた。
「何が来ても、守る」
だが、心の中では不安が渦巻いていた。この襲撃は、何かの始まりに過ぎないような気がする。その予感は、まるで暗雲が空を覆っていくかのように、じわじわと俺の心を侵食していった。
三日目の夕方、俺たちは王都に到着した。
遠くから見えた王都の姿に、俺は息を呑んだ。
巨大な城壁に囲まれた街。その中には、無数の建物が立ち並んでいる。中央には、白亜の王宮がそびえ立ち、その威容は、まるで天を突くかのように雄大だった。ノヴァシティとは比べ物にならない規模と豪華さが、この街の持つ力を物語っている。
「すごい...」
ミーナが、目を輝かせている。
「これが、王都...」
シャルロットも、感慨深そうに呟く。
「久しぶりですわ」
馬車は、城門をくぐって街の中へと入っていく。
街の中は、活気に満ち溢れていた。商店が立ち並び、人々が行き交い、まるで祭りのような賑わいだった。石畳の道は美しく整備され、街灯が規則正しく並んでいる。建物も、どれも立派で、貴族の館や豪華な商店が目を引く。
「本当に、大きな街だな...」
俺が呟くと、セレスティアが微笑んだ。
「これが、王国の中心です」
馬車は、王宮の近くにある別邸へと向かった。
別邸は、王宮ほどではないが、それでも十分に豪華だった。三階建ての白い館で、庭には美しい花々が咲いている。使用人たちが出迎えてくれて、俺たちは部屋へと案内された。
部屋は広く、調度品も高級なものばかりだった。
「ここで、しばらく滞在します」
セレスティアが説明する。
「明日、父上——国王陛下に謁見する予定です」
「分かった」
俺は、窓から王宮を眺めた。
明日、あの場所で国王と会う。そして、セレスティアとの結婚を認めてもらう。緊張するが、同時に決意も固まっていた。
夜、俺は別邸の庭を歩いていた。
月明かりが、庭を優しく照らしている。噴水の水音が、心地よく響いていた。
「レン」
背後から、クレアの声が聞こえた。
振り向くと、彼女が立っていた。月明かりを浴びた彼女の姿は、どこか憂いを帯びていて、いつもの力強さとは違う儚さを感じさせた。
「クレア。どうした?」
「少し、話したくて」
クレアは、俺の隣に立った。
しばらく、沈黙が続く。だが、それは居心地の悪いものではなく、むしろ心地よい静寂だった。
「お前が、セレスティアと結婚すること...」
クレアが、ゆっくりと口を開いた。
「複雑だ」
「クレア...」
「いや、誤解しないでくれ」
クレアは、俺を見つめた。
「反対しているわけじゃない。セレスティアは、いい人だ。お前を愛していることも、よく分かる」
「だが...」
クレアの声が、震える。
「私は、お前の最初の女だった。一番長く一緒にいた。それが...誇りでもあり、支えでもあった」
「でも、今は六人になって、明日からはもっと増えるかもしれない。私の立場が、どんどん...」
クレアは、言葉を詰まらせた。
俺は、クレアを抱きしめた。
「クレア、お前は特別だ」
「...」
「お前がいなければ、俺はここまで来れなかった。お前は、俺の支えだ。それは、これからも変わらない」
クレアの体が、震えている。
「本当に...?」
「ああ。約束する」
クレアは、俺の胸に顔を埋めた。
「...ありがとう」
その声は、涙で濡れていた。
「私、お前を応援する。セレスティアとの結婚も、他の誰が来ても。お前が幸せなら、それでいい」
「クレア...」
「でも、たまには...私のことも、思い出してね」
クレアは、顔を上げて微笑んだ。その笑顔には、寂しさと優しさが入り混じっていて、俺の胸を締め付けた。
「忘れるわけがない」
俺たちは、静かに抱き合っていた。
月が、二人を優しく照らしている。
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