第18話:辺境領地と新たな始まり
王城から戻った翌日、俺たちは出発の準備を始めた。
領地へ向かうには、三日ほどかかる。その間の食料や必要な物資を揃え、馬車を手配する。慌ただしいが、みんな楽しそうに準備を進めていた。
「レン、この荷物はどこに積む?」
クレアが、大きな荷物を抱えながら尋ねてくる。
「馬車の後ろでいいよ」
「了解」
リリエルは、魔法の道具を慎重に箱に詰めている。
「この魔法触媒は、新しい土地での研究に必要だ」
ミーナは、料理道具を準備している。
「新しいお家でも、美味しいご飯作るね!」
シャルロットは、貴族らしく整理整頓された荷物をまとめている。
「領地経営の書物も持っていきましょう。きっと役立つわ」
レイラは、商売道具を詰め込んでいる。
「未開拓の地なら、商機は無限大だ。楽しみだね、相棒」
みんな、それぞれの役割を理解していて、自発的に動いている。その姿を見ていると、俺は改めて思った。
いい仲間に恵まれたな、と。
準備が整い、翌朝、俺たちは出発した。
王国が用意してくれた大型の馬車には、六人全員が余裕を持って座れる。荷物も十分に積めて、長旅にも耐えられる造りになっていた。
馬車が街を出ると、広大な草原が広がっていた。
「綺麗...」
ミーナが、窓から外を眺めながら感嘆の声を上げる。
青い空、緑の草原、そして遠くに見える山々。その光景は、まるで一枚の絵画のようだった。
「これから、あの山の向こうへ行くのね」
シャルロットが、地図を見ながら呟く。
「ああ。ノヴァテラは、山を越えた先にある」
「どんな場所なんだろう?」
ミーナが、わくわくした表情で尋ねる。
「分からない。だが、自然は豊かだと聞いている」
「魔物も多いって話だけどな」
クレアが、少し心配そうに言う。
「大丈夫。レンがいれば、どんな魔物も倒せる」
リリエルが、冷静に答える。
「まあ、魔物くらいなら何とかなるさ」
俺は、軽く笑った。
馬車は、順調に進んでいく。
道中、いくつかの街や村を通り過ぎた。人々が手を振ってくれて、俺たちも手を振り返す。どこも平和で、活気に満ちていた。
夜は、街道沿いの宿で休んだ。食事をしながら、みんなで明日への期待を語り合う。
「明日の夕方には、着くかな」
「ああ。楽しみだな」
クレアが、嬉しそうに笑う。
「私も、早く新しい土地を見たい」
リリエルも、珍しく期待に満ちた表情を浮かべている。
二日目の旅も、順調だった。
山道に差し掛かると、景色が一変した。深い森が広がり、木々の間を抜ける風が心地よい。鳥のさえずりが聞こえ、時々小動物が姿を見せる。
「自然が豊かね」
シャルロットが、窓から外を眺める。
「ああ。これなら、農業もできそうだ」
レイラが、商人らしい視点で分析する。
「水源もあれば、完璧なんだけどな」
「地図によると、川が流れているらしい」
「それは好都合だ」
山を越えると、徐々に平原が広がってきた。
そして、三日目の午後——
「見えた!」
ミーナが、指を差す。
その先には、小さな村が見えた。
木造の家が十数軒ほど並んでいて、中央には小さな広場がある。人々が、畑仕事をしている姿が見える。
「あれが...ノヴァテラの村か」
クレアが、呟く。
馬車が、村の入口に到着した。
俺たちが降りると、村人たちが不思議そうにこちらを見ている。
「...誰だ?」
「見たことない顔だな」
「立派な馬車だ。貴族か?」
村人たちが、ひそひそと囁き合っている。
その時、一人の老人が前に出てきた。
白い髭を蓄え、杖をついている。村の長老だろうか。
「お客人か? こんな辺境に、珍しい」
「初めまして。私は、レン・タカミと申します」
「レン...? もしや、新しい領主様か?」
老人の目が、驚いたように見開かれる。
「はい。王国から、この地を治めるよう命じられました」
「...そうか」
老人は、複雑そうな表情を浮かべた。
「実は、前の領主様は...魔物に襲われて亡くなられた」
「...」
俺は、言葉を失った。
「それから、この村は領主不在のまま。我々だけで、何とか生き延びてきた」
老人の声には、疲労と諦めが滲んでいた。
「魔物が多くて、畑も満足に耕せない。若者は、街へ出て行ってしまった。残ったのは、年寄りと子供だけだ」
周囲を見回すと、確かに若者の姿が少ない。老人と、数人の子供たちが、不安そうにこちらを見ている。
「...分かりました」
俺は、老人に向き直った。
「これから、この土地を発展させます。魔物は、俺が倒します。畑も、もっと広く耕せるようにします」
「本当か...?」
老人の目に、わずかに希望の光が宿る。
「約束します」
俺が力強く言うと、老人は少しだけ笑顔を見せた。
「...ありがとう、領主様。我々も、できる限り協力します」
村人たちも、ざわめき始めた。
「本当に、魔物を倒してくれるのか?」
「信じていいのか?」
不安と期待が入り混じった声が、聞こえてくる。
「まずは、拠点を作りましょう」
俺は、クレアたちを見た。
「村の外れに、屋敷を建てる」
「屋敷? だが、材木も職人も...」
老人が、困惑したように言う。
「大丈夫です。俺に任せてください」
俺は、村の外れにある空き地へと向かった。
広い平地で、屋敷を建てるには十分な広さがある。
「みんな、少し離れてて」
クレアたちと村人たちを下がらせてから、俺は創造魔法を発動した。
「【クリエイト】」
魔力が、空間に広がっていく。そして、その魔力が形を成していく。
地面から、石造りの基礎が現れた。次に、壁が立ち上がり、屋根が形成されていく。窓が取り付けられ、扉が設置される。
わずか数分で、立派な二階建ての屋敷が完成した。
「な...!?」
「魔法で...家が...!?」
村人たちが、信じられないという表情で屋敷を見つめている。
「これが...創造魔法...」
老人も、杖を落としそうになっている。
「中も、ちゃんと作ってあります」
俺は、扉を開けた。
中には、リビング、キッチン、寝室、浴室、全てが揃っている。家具も、必要最低限のものは揃えておいた。
「凄い...本物だ...」
ミーナが、目を輝かせながら中を見回る。
「これなら、すぐに生活できるな」
クレアも、満足そうに頷く。
「魔法で、家を作れるなんて...レン、あなたは本当に...」
シャルロットが、感動したように呟く。
「商売道具も、ちゃんと置けそうだ」
レイラも、嬉しそうに笑う。
「研究室にできる部屋もある。完璧だ」
リリエルも、珍しく興奮している。
村人たちは、呆然と屋敷を見つめている。
「領主様...本当に、凄いお方だ...」
老人が、感動したように涙を流している。
「これで、安心して暮らせる...」
村人たちも、希望に満ちた表情を浮かべている。
その夜、俺たちは新しい屋敷で最初の夜を過ごした。
リビングには、暖炉が設置されている。薪に火をつけると、温かい炎が部屋を照らした。
五人は、暖炉の周りに座っている。
「ここが、俺たちの新しい家だ」
俺が言うと、みんなが頷いた。
「これから、この地を発展させていこう」
「ああ」
クレアが、力強く答える。
「私は、お前と共にこの地を守る。騎士団を作って、魔物から村を守る」
「頼りにしてるよ」
「私は、魔法研究所を作りたい」
リリエルが、静かに言う。
「この地には、まだ発見されていない魔法素材があるかもしれない。それを研究して、魔法の発展に貢献したい」
「いいアイデアだ」
「わたし、畑を作る!」
ミーナが、元気よく言う。
「みんなが美味しいって言ってくれる野菜を、いっぱい育てたい!」
「ミーナの野菜、楽しみだな」
「私は、美しい街を作りたい」
シャルロットが、真剣な表情で言う。
「貴族の街のような、綺麗で整った街。でも、誰もが平等に暮らせる街」
「素敵な夢だな」
「あたしは、商業を発展させる」
レイラが、自信満々に言う。
「交易路を作って、この地を商業の拠点にする。そうすれば、人も金も集まる」
「レイラなら、きっとできるよ」
「任せな」
五人が、それぞれの夢を語る。
その目は、希望に満ちていて、まるで星のように輝いていた。
「みんな...」
俺は、五人を見つめた。
「ありがとう。俺、みんなと一緒に、理想の国を作りたい」
「私たちも、同じ気持ちよ」
シャルロットが、微笑む。
「あんたがいるから、あたしたちはここにいるんだ」
レイラも、優しく笑う。
「俺、本当に幸せだ」
俺が言うと、五人が嬉しそうに笑った。
クレアが、俺の手を握る。
「お前がいれば、どんな困難も乗り越えられる」
リリエルも、俺の手を握る。
「私も、お前と共に歩みたい」
ミーナ、シャルロット、レイラも、俺の周りに集まってくる。
「みんな...」
俺は、五人を抱きしめた。
温かい。柔らかい。そして、何より愛おしい。
「これから、大変なこともあるだろう」
「でも、大丈夫」
クレアが、力強く言う。
「私たちは、家族だから」
「家族...」
その言葉を聞いて、俺の胸が温かくなった。
「ああ。俺たちは、家族だ」
五人が、幸せそうに微笑む。
その笑顔は、まるで花のように美しく、俺の心を満たしてくれた。
暖炉の炎が、優しく揺れている。
外では、風が木々を揺らす音が聞こえる。
静かで、穏やかな夜だった。
翌朝、俺は朝日と共に目を覚ました。
窓から差し込む光が、部屋を明るく照らしている。
起き上がってリビングへ行くと、既にクレアたちが準備を始めていた。
「おはよう、レン」
「おはよう」
「今日から、開拓を始めるぞ」
クレアが、張り切った様子で言う。
「ああ。まずは、村の周りの魔物を倒そう」
「了解」
俺たちは、外に出た。
朝の空気は、清々しい。太陽が、東の空から昇ってきている。
村人たちも、既に起きていて、畑仕事の準備をしている。
「領主様、おはようございます!」
老人が、元気よく挨拶してくる。
「おはようございます」
「今日は、何をなさるのですか?」
「魔物退治です。村の周りを、安全にします」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
老人は、感動したように頭を下げた。
俺たちは、村の周辺を歩き始めた。
森の中には、確かに魔物の気配がある。
「レン、あそこだ」
クレアが、前方を指差す。
そこには、オークが三体いた。
「よし、やるぞ」
俺たちは、魔物に向かって突進した。
戦闘は、あっという間に終わった。
オークたちは、俺の魔法とクレアの剣によって、瞬く間に倒された。
「強い...」
村人たちが、遠くから見ていて、驚いたように呟いている。
「領主様、本当に強い...」
その後も、俺たちは次々と魔物を倒していった。
ゴブリン、ウルフ、オーガ。どれも、俺たちにとっては敵ではなかった。
昼過ぎには、村の周辺から魔物の気配が完全に消えた。
「これで、しばらくは安全だな」
「ああ。これで、村人たちも安心して畑仕事ができる」
村に戻ると、村人たちが歓声を上げて出迎えてくれた。
「領主様、ありがとうございます!」
「これで、安心して暮らせます!」
老人も、涙を流しながら感謝の言葉を述べてくれた。
「領主様...本当に、ありがとうございます...」
「いえ。これから、もっとこの地を良くしていきます」
俺が言うと、村人たちは希望に満ちた表情を浮かべた。
屋敷に戻ると、五人が待っていた。
「お疲れ様、レン」
クレアが、水を差し出してくれる。
「ありがとう」
俺は、一気に飲み干した。
「これから、どうする?」
「明日からは、本格的に開拓を始める」
俺は、五人を見回した。
「畑を作り、道を整備し、家を建てる。そして、いずれは街にする」
「大きな夢ね」
シャルロットが、微笑む。
「ああ。でも、みんなとならできる」
「当然だ」
レイラが、自信満々に言う。
「さあ、始めよう」
俺は、立ち上がった。
「俺たちの、国づくりを」
五人が、立ち上がって頷く。
「ああ!」
その声は、力強く、希望に満ちていた。
新しい生活が、今始まった。
これから、どんな国ができるのか。
それは、まだ誰にも分からない。
だが、一つだけ確かなことがある。
俺たちは、必ず理想の国を作る。
そう、心に誓った。
読んで下さりありがとうございました!
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