第13話:魔物襲撃とお姫様救出
パーティー二日目の朝、俺たちは王都の街を散策することにした。
公爵家の執事であるセバスチャンが、観光ガイドを申し出てくれたのだが、俺たちは丁重に断った。せっかくの機会だし、自分たちのペースで街を見て回りたかったからだ。
「王都、初めて見るから楽しみ!」
ミーナが、嬉しそうに尻尾を振っている。獣人であるミーナは、街では少し目立つが、王都は様々な種族が集まる場所なので、特に問題はなさそうだ。
「商店街に行きたいな。色々な店があるらしい」
クレアが、地図を見ながら言う。
「私は、魔法の専門店があれば覗いてみたい」
リリエルも、興味深そうに周囲を見回している。
「リーナさんは?」
「私は、みなさんとご一緒できるだけで幸せです♪」
リーナは、相変わらず笑顔で答えてくれる。
俺たちが公爵家の門を出ようとした時、後ろから声がかかった。
「待ちなさい」
振り返ると、そこにはシャルロットが立っていた。
昨夜とは違い、外出用の服装だ。白を基調としたワンピースに、大きな帽子を被っている。その姿は、まるで絵画から抜け出してきたような美しさだった。
「シャルロット? どうしたんだ?」
「...私も、街を案内するわ」
「え?」
「父に頼まれたのよ。お客様を、一人で街に出すわけにはいかないって」
シャルロットは、そっぽを向きながら言う。だが、その頬が少しだけ赤いのが見えた。
「本当は、一緒に行きたいんじゃないのか?」
「な...! 違うわよ! 別に、あなたたちと一緒にいたいわけじゃないんだから!」
シャルロットは、顔を真っ赤にして否定する。
クレアが、小声で俺に囁いてくる。
「素直じゃないな、あの令嬢」
「まあ、可愛いじゃないか」
「可愛い...?」
クレアが、少し不機嫌そうな表情になる。
「クレアの方が可愛いけどな」
「...!」
クレアの顔が、一瞬で真っ赤になった。
「な、何を言ってるんだ、お前は...!」
その様子を見て、ミーナがくすくすと笑う。
「クレアおねえちゃんも、シャルロットおねえちゃんも、可愛い!」
「可愛いって...私は騎士だぞ...」
クレアは、恥ずかしそうに俯いてしまった。
シャルロットも、何やら複雑な表情をしている。
「...可愛いだなんて、子供じゃあるまいし」
だが、その声は少しだけ嬉しそうだった。
こうして、シャルロットも加わった六人で、王都の街を散策することになった。
まず向かったのは、中央の商店街だ。
石畳の道の両側に、様々な店が立ち並んでいる。武器屋、防具屋、雑貨屋、食堂、パン屋、服飾店。どれも、街で見たものとは比べ物にならないほど立派だ。
「すごい...」
ミーナが、目を輝かせながら店のショーウィンドウを覗き込んでいる。
「ミーナ、はぐれるなよ」
「うん!」
クレアとリリエルは、武器屋に興味を示している。
「この剣、質がいいな」
クレアが、店先に並べられた剣を手に取る。
「ああ。鍛冶の技術が優れている」
リリエルも、杖を見ながら頷く。
リーナは、雑貨屋を覗いている。
「可愛い小物がたくさん...!」
シャルロットは、少し離れたところで、俺たちの様子を眺めていた。一緒に来たものの、どう接すればいいか分からないのだろう。
「シャルロット、こっちに来いよ」
俺が手招きすると、シャルロットは少し迷ってから、ゆっくりと近づいてきた。
「...何?」
「お勧めの店とか、ある?」
「...あるけど」
「教えてくれよ。せっかく地元の人がいるんだから」
「...そうね」
シャルロットは、少しだけ表情を緩めた。
「じゃあ、あっちの方に美味しいケーキ屋があるわ」
「ケーキ!」
ミーナが、嬉しそうに飛び跳ねる。
「シャルロットおねえちゃん、ケーキ好きなの?」
「...まあ、嫌いではないわ」
シャルロットは、少し照れくさそうに答える。
「じゃあ、そこに行こう」
俺たちは、シャルロットに案内されて、ケーキ屋へと向かった。
店の名前は『スイート・ドリーム』。可愛らしい外観で、ショーウィンドウには色とりどりのケーキが並べられている。
「わあ! 綺麗!」
ミーナが、目を輝かせる。
店に入ると、甘い香りが漂ってきた。ショーケースには、本当に美味しそうなケーキがたくさん並んでいる。
「どれにしようかな...」
ミーナが、真剣な表情でケーキを選んでいる。
「私は、このチョコレートケーキがいい」
クレアが、すぐに決める。
「私は、チーズケーキを」
リリエルも、静かに選ぶ。
「私は、イチゴのショートケーキにします♪」
リーナも、嬉しそうに選ぶ。
「シャルロットは?」
「...私は、モンブランがいいわ」
シャルロットは、少し恥ずかしそうに答える。
俺たちは、それぞれケーキを注文して、店内の席に座った。
ケーキが運ばれてくると、みんな幸せそうな表情を浮かべる。
「いただきます!」
ミーナが、嬉しそうにケーキを頬張る。
「美味しい! すっごく美味しい!」
「本当に、美味しいな」
クレアも、満足そうに頷く。
リリエルは、チーズケーキを一口食べて、少し驚いたような表情を浮かべた。
「...これは、美味い」
「ふふ、リリエルさんが感動するなんて珍しいですね」
リーナが、くすくすと笑う。
シャルロットは、モンブランを食べながら、少しだけ笑顔を見せていた。
「やっぱり、ここのモンブランは美味しいわ」
「シャルロット、よく来るのか?」
「...たまに、ね」
シャルロットは、少し照れくさそうに視線を逸らす。
こうして、俺たちは和やかに午後のティータイムを楽しんだ。
だが、その平和な時間は、突然終わりを告げた。
甲高い警報音が、街中に響き渡った。
「...!?」
店内にいた人々が、一斉に驚いて顔を上げる。
「魔物襲撃の警報だ!」
誰かが、叫ぶ。
窓の外を見ると、人々が慌てて逃げ惑っている様子が見える。
「まさか...王都に魔物が!?」
クレアが、信じられないという表情で立ち上がる。
俺たちは、急いで店を出た。
通りには、パニックになった人々が走り回っている。そして、その先には——
魔物の大群が、街へと侵入してきていた。
オークが十体以上、オーガが五体、そして——その中央には、巨大なデーモンが一体。上位種の魔物だ。
「なんで、王都に魔物が...!」
リーナが、恐怖に震えている。
「魔物は、街の結界で侵入できないはずなのに...」
リリエルが、冷静に分析する。
「結界が破られたのか、それとも...誰かが意図的に結界を解除した」
「どちらにせよ、今は魔物を倒すのが先だ!」
クレアが、剣を抜く。
「レン、行くぞ!」
「ああ!」
俺たちは、魔物の群れに向かって駆け出した。
だが、その時、俺の目に飛び込んできたのは——
魔物に囲まれた民間人たちを守ろうと、剣を構えるシャルロットの姿だった。
「逃げなさい! 私が食い止めるわ!」
シャルロットは、必死に叫んでいる。だが、明らかに敵の数が多すぎる。彼女一人では、とても守りきれない。
「シャルロット!」
俺が叫ぶと、シャルロットが一瞬こちらを見た。
その隙に、オークの一体が彼女に襲いかかる。
「くっ...!」
シャルロットは、何とかオークの攻撃を剣で受け止めるが、その衝撃で後ろに下がってしまう。
さらに別のオークが、側面から襲いかかってきた。
「まずい...!」
シャルロットは、完全に囲まれてしまった。
「このままでは...!」
彼女の表情に、絶望が浮かぶ。
だが、その瞬間——
「待たせたな」
俺は、シャルロットの前に立ちはだかった。
そして、襲いかかってきたオークを、素手で掴んで投げ飛ばす。
「レン...!?」
シャルロットが、驚いたように目を見開く。
「大丈夫か?」
「ええ...でも、どうして...」
「当たり前だろ。仲間を見捨てるわけないじゃないか」
「仲間...?」
シャルロットは、その言葉を反芻するように繰り返した。
「私...あなたに、酷いことを言ったのに...」
「気にしてないよ」
俺は、笑顔で答えた。
シャルロットの目に、涙が浮かぶ。
「...ありがとう」
その言葉は、昨夜とは違う、心からの感謝が込められていた。
「レン! 後ろだ!」
クレアの叫び声で、俺は振り返った。
デーモンが、俺たちに向かって巨大な拳を振り下ろしてくる。
「【ファイアストーム】!」
俺は、すぐに範囲魔法を発動させた。
巨大な炎の渦が、魔物たちを飲み込んでいく。オークたちが、次々と燃え尽きていく。
だが、デーモンは炎に耐えて、まだ立っている。
「硬いな...」
「私が行く!」
クレアが、デーモンに向かって突進する。剣を振るうが、デーモンの硬い皮膚に弾かれてしまう。
「くっ...!」
「【アイスランス】!」
リリエルが、氷の槍をデーモンに向けて放つ。だが、それも大きなダメージにはならない。
「上位種は、やはり強いな...」
「みんな、一旦下がれ!」
俺は、最大威力の魔法を発動させることにした。
「【メテオストライク】!」
空から、巨大な炎の隕石が降り注ぐ。
デーモンが、その隕石に直撃される。
轟音と共に、デーモンが地面に叩きつけられた。
煙が晴れると、そこにはもう動かないデーモンの姿があった。
残ったオーガたちも、クレアとリリエルが協力して倒していく。
十分もかからず、全ての魔物が倒された。
静寂が訪れる。
人々は、呆然とその光景を見つめていた。
「魔物が...全部...」
「あの若者たち...何者だ...?」
やがて、拍手が起こった。
「ありがとう!」
「街を救ってくれた!」
人々が、俺たちに感謝の言葉を投げかけてくる。
だが、俺はそれよりも、シャルロットのことが気になっていた。
彼女は、地面に座り込んで、呆然としていた。
「シャルロット、大丈夫か?」
俺が手を差し伸べると、シャルロットはゆっくりと顔を上げた。
その目には、涙が浮かんでいた。
「...助けてくれたのね」
「ああ」
「あなたたちは...本当に強いのね」
「まあ、ある程度はね」
俺が軽く答えると、シャルロットは小さく笑った。
「...なんという力...」
彼女は、俺の手を取って立ち上がった。
「ありがとう、レン」
その声には、昨夜までの高圧的な態度は微塵もなかった。ただ、素直な感謝だけがそこにあった。
「どういたしまして」
俺が微笑むと、シャルロットも微笑み返してくれた。
その時、俺はふと視線を感じた。
建物の影に、黒いローブを纏った男の姿が見える。
男は、俺と目が合うと、すぐに姿を消した。
「...誰だ?」
「どうした?」
クレアが、尋ねてくる。
「いや...気のせいかもしれない」
だが、嫌な予感がした。
この魔物の群れ、本当に偶然だったのだろうか。
それとも、誰かが意図的に放ったのか。
そんな疑問が、頭をよぎった。
だが、今は目の前のことに集中しよう。
シャルロットが、俺たちの仲間になりつつある。
それが、今は何より大切だ。
読んで下さりありがとうございました!
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