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追放された令嬢の幸福な旅路 ~宝物は異性の親友~  作者: 極北すばる


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序章 美しい檻からの追放

 侯爵令嬢エリシア・ロゼッタは、18年の生涯を「完璧な宝石」として生きてきた。


 彼女は幼い頃から、貴族の娘として求められるすべての訓練を完璧にこなした。刺繍、楽器、詩歌、歴史、そして何よりも公爵家の跡継ぎと並び立つにふさわしい、隙のない立ち振る舞い。その美貌と知性、洗練されたマナーは社交界の賛辞の的であり、エリシア自身もその役柄を疑うことなく演じ続けてきた。彼女の人生は、豪華絢爛な侯爵邸という名の、金色の檻の中で完成された芸術品だった。


 しかし、その完璧な生活は、氷細工のように脆く、一瞬にして砕け散った。


 父が病に倒れて以降、実権を握った継母とその娘、異母妹のクリスタは、エリシアを陥れる機会を虎視眈々と狙っていた。そして、公爵家との正式な婚約発表を控えたある晩、書斎の鍵が壊され、代々伝わるはずのない偽造された機密文書が、エリシアの自室から発見されたのだ。


「国家機密の漏洩未遂。ロゼッタ家の名に泥を塗り、公爵家の栄誉を傷つけた罪は重い」


 継母の声は冷たく、裁判の機会さえ与えられなかった。父は病床に伏し、声を上げることもできない。公爵家は保身のため即座に婚約を破棄。そして、エリシアは一族の裏切り者として、侯爵家から追放された。


 与えられたのは、わずかな旅費と、追放者が二度と戻らないことを誓う署名済みの証文のみ。夜半、門が閉じられたとき、エリシアは一歩踏み出すごとに、これまで背負っていた地位と名誉、そして自尊心の一部が剥がれ落ちていくのを感じた。


「完璧な宝石」として生きるために磨き上げた美貌は、今や身分を露呈する危険な輝きを放っていた。彼女は初めて、生きるための決断を下した。


 古びた宿の鏡の前で、腰まであった艶やかな金色の髪に、躊躇なく鋏を入れた。不揃いに切りそろえられた髪の下に現れたのは、これまでの高貴な顔立ちとはかけ離れた、やつれた青年の貌。エリシアは、追放されるまで使用人が行ったことのない「荷物を持つ」「服を繕う」「火を起こす」といった行為一つ一つに、貴族の習慣が邪魔をして戸惑った。しかし、戸惑いながらも、彼女はただひたすらに、自分が侯爵令嬢エリシア・ロゼッタであったことを忘却しようと努めた。


 追放された街から遠く離れた、東方の都市リンドブルク。その雑踏の中に、エリシアは身を隠した。

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