結婚までしておいて、君を愛することはないと面と向かって言えるの、凄いよね
結婚するということは、誰かの命令とか、やむにやまれぬ事情があるからとかでも、結局は本人が同意して結婚するんだから「君を愛することはない」なんて、本人目の前にして言える度胸が凄いと思うのは、私だけでしょうか。
多分、普通に生きて普通に成長したら、絶対に出てこない言葉だと思う。
だから、親友の公爵令嬢、現隣国の王太子妃であるユニスティアに対して、初夜のときにそう言ったらしい、隣国の王太子は、幼少期に何らかのトラウマを抱えたか、成長途中に性格が破綻する事件でもあったんじゃないかと愚考する。
そもそも「愛することはない」と言いながら、体は求めるとか変な話だ。私だったら口に出して言わない。後継ぎを作るためなら、なおさら言わない。白い結婚になったら困るし。ということは、王太子ってもしかして、照れ隠しでユニスにそんな事を言ったとか?
ちょっと状況を整理してみよう。
ユニスと隣国の王太子は、幼い頃からの婚約者同士である。特段、仲が悪いとか聞いたことはない。婚約話は、隣国の国王からだったらしい。政略と言えば政略だけど、ユニスは幸せそうだった。
だから、結婚するまでは邪険にされてないということ。王太子の内心は分からないけど、ユニスは大切にされていた。
やっぱり、問題なさそうに感じるんだけど。
でも、実際、ユニスは私に手紙を送ってきたわけで。
手紙には涙の跡があった。ユニスを泣かせた王太子、許すまじ。
もう少し考えてみよう。
ユニスの周りの人間関係は? 侍女と従者と護衛だけど、公爵令嬢にしては少ない人数だと思う。
もしかして、従者と護衛が問題だったとか?
王太子はその二人に嫉妬か劣等感を抱いた、とか。ありえそう。優秀な人材じゃないと公爵令嬢付きにはなれないし、従者と護衛は常にユニスのそばに居るから、信頼も厚いし。
でもそれは、王太子側も同じことでしょう?
逆に王太子の方が侍女の人数多いまでありそうだけど。
愛することはない……ね。本当、何を考えたら出てくる言葉なんだろ。
状況的には、照れ隠しか嫉妬。照れ隠しだとしたら、言葉選びが下手の次元超えてるけど。嫉妬だとしても、他に言いようがあるはず。
それなら、劣等感? ユニスの従者か護衛に劣等感を抱いて、そう言ったの?
あ、もしかして、誤解!?
ユニスが王太子以外の人を好きだと思ったとか? それで、その人を愛人にしてもいいよってことで「(本当は君を愛してるけど、君に好きな人がいるなら、)君を愛することはない(から、好きな人を愛人にして暮らしてくれ)」てことかな!?
これだ! 私ってもしかして天才なのでは!?
さっそくユニスに手紙を書こう。
貴女の夫は、誤解してるんだよって。
これで万事解決でしょ。
◆◆◆
後日、ユニスから送られてきた手紙には、誤解が解けたと喜びに溢れた内容が書かれていた。
やはり、王太子は私が考えた通り、ユニスに他に好きな人がいると誤解していたらしい。
誤解が解けて、仲睦まじく暮らしてるそうである。
良かった良かった。
これで私も聖女の権力を総動員して、隣国を滅ぼす手立てを考えなくて済んだ。
最悪、教皇猊下に頼んで、隣国の王太子を破門にして貰おうかと思ってたとこだったし。
そしたら私の大切なユニスを、教会で保護してずっと仲良く暮らそうと考えてたんだよね。
ユニスがいたからこの国にとどまってたけど、そろそろ私も教国に帰って、次期教皇と結婚しないとかな。
あーあ、聖騎士の誰かかー。誰でもいいけど、できれば神聖力が一番多い人でお願いしたい。次代の聖女を産むためにも。
こう考えると「愛することはない」って私が言うべき言葉だよね。ま、絶対に口には出さないけど。
お読みいただきありがとうございました。




