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第5話 救済

 孤独死、自殺、犯罪。

 インターネットで流れてくる悲惨な人生の終わり。それらの人を調べていくと、僕が彼らになる素質は十分にあるようだった。

「あんたがどれだけ調べたのかは分からないけれど」

 桐谷は口を開く。

「俺には友だちもいないし金もない。毎日を消化するように生きて、できるだけ早く死のうと思ってる。夢も目標もない。もし俺と似たクソみたいな人間がいるとして、そいつが人を殺しても、僕は驚かない」

「被害者に対してかわいそうだとは?」

「思うよ。でも、未来のことなんだろ? 実感は湧かない」

 これから先、確実に起きる大地震の被害者に対して、同情できないのと同じだ。僕はまだ殺人を犯していないし、誰も殺されていない。


「それより」

 桐谷は再び瑞希を見た。

 赤いマフラーを巻いた彼女も桐谷を見ていた。

「未来には過去の殺人を止める仕事があるのか?」

「ないよ」

 瑞希は言った。

「代わりに未来では【救済】って制度があるの。過去に殺された人と殺した人を救う制度」

「殺した人も?」

「そう、【救済】はどちらも対象にしてる。未来では加害者も被害者の一部だと認識されているからね。君たちの時代が多様性を尊重しているように、私たちの時代では人間そのものを尊重しているの。超人権社会って言ったら分かりやすいかな」

 超人権社会。

 桐谷は一度頭のなかでつぶやいた。

 それはどこか、ディストピアを思わせる言葉のようにも聞こえた。多様性社会が決してユートピアではなかったのと同じように、どこか欠陥のある響きだった。


「【救済】は国から選出された国民が行う。仕組みとしては裁判員制度と同じだよ。違うのは、やりたくなければ断ればいいってこと。あと【救済】はある程度適正がある人が選ばれる」

「君にはその適正があると? 人を殺させない適正が?」

 薄く笑って桐谷は言った。

 皮肉の色をおびた言葉に、瑞希は少し考えてから返す。

「そうみたいだね。私は桐谷くんと同じ大学生だし、心を開かせるにはちょうどいいと国は判断したんじゃないかな。君みたいに塞ぎこんだ人は、異性に強い憧れを持っていることが多いしね。一説によると対象者の好みを調査して、顔で選ばれることもあるみたいだよ?」

 やり返しとばかりに瑞希は冷たく微笑む。

 出会ったときに「理想的な女性」だと考えていたことを見透かされているような気がして、桐谷は表情を硬くした。たしかに瑞希は、ずっと見ていられるほどに綺麗で、目を離したら消えてしまうような儚さを持っている。しかし、それを知られてしまうことは、弱みを握られることのように桐谷は感じた。

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