美少女の●首を見てしまった男子高校生の話
【登場人物】
・三枝陸斗
高校2年生。好きな動物はキリン。最近ハマっているアニメのジャンルは追放ざまあ系。
・村中久吉
高校2年生。陸斗のクラスメイトで幼稚園からの幼馴染。今年中にゆっくり解説動画を投稿したいと思っている。
・南川麗
高校2年生。誰もが認める美少女。時折見えるうなじが一部の男子たちに大人気。
「俺、南川さんの●首を見たかもしれない」
「は?●首?」
久吉の頭上に大量のハテナマークが浮かんでいるのがわかる。
俺だって女子の●首、しかも学校一の美少女(俺調べ)の南川さんの●首を見たなんて信じられない。
それでもこの事実を誰かに話さないと頭がおかしくなりそうだった。
「南川さんって、2組の南川麗のことか?」
「その南川さん。さっき駐輪場の近くで見つけた」
「●首ねえ。一応聞くけど、どんな感じだった?」
「赤かった。あと、丸かった」
「まあ●首だからな」
「それで南川さんと目が合った気がして、びっくりして、怖くなって、やばい逃げなくちゃ、って思って」
「なるほど。警察に通報は?」
「警察?」
「南川さんの●首を見たんだろ。それってつまり犯罪ってことだよな」
「……そうか、警察、電話しないと」
「わあ!?待て待て!冗談だって俺が悪かった!」
「でも俺、本当に見たんだ」
「うーん……よし、じゃあ今から2人で駐輪場まで確認しに行こう。それでお前が何と見間違えたのかハッキリさせる。これでどうだ?」
「……わかった」
「ホームルームまであと10分くらいか。急げばギリ間に合いそうだな」
こいつとは付き合いが長いからなんとなくわかる。
俺が南川さんの●首を見たことを信じていない。
だけど嘘をついているとも思っていない。
俺がくだらない見間違いをしたと思いながらも、一緒に確認しに行こうと言ってくれた。
村中久吉という人物は、昔からこういう優しい男だ。
俺たちは駐輪場へ向かった。
早足で廊下を歩いているうちに、本当に見間違いだったのではないかという気がしてきた。
「あっ」
さっきと同じ場所、校舎の陰に隠れるようにして南川さんがあった。
「陸斗……け、警察……」
言われるまでもない。
俺は震える手でスマホを取り出して110番を押した。
それからは学校中が大騒ぎだった。
警察の人がたくさんきて刑事ドラマのような光景になった。
俺と久吉が第一発見者として事情聴取を受けている間に、南川さんの胴体が校庭端の茂みから見つかった。
3年が経った今でも犯人はわかっていない。