子河童の疑念 1
今回は子河童の視点で書きました。
「なあ、輪入道」
と俺っちは丸薬を作りながら輪入道に声をかけた。輪入道は体をびくっと震わせながら、
「子河童、どうしたの」
と返事をする。しまった、機嫌が悪いのが声色に出ていたようだ。
「狐、最近様子がおかしくないか」
俺っちは普通を装いながら、気にかかっていることを口にした。そうなのだ、最近狐の様子がおかしい。具体的に言うと、よそよそしいというか、何か隠し事をされている気がする。俺っちの言葉に、輪入道はうんうんと頷いている。やっぱり俺っちの気のせいではないらしい。
狐との付き合いは長い。長い付き合いの中で、こんなことは初めてだからとても気になるし、なんだか無性に腹が立つ。そのとき、輪入道が「あっ」と何か気づいたように小さく声を上げた。
「そういえば、最近狐よく師匠のところに来てるよ」
と輪入道が言った。
「狐が師匠のところに?なんで俺っち達とは一緒に行かないんだ。輪入道も一緒に話してるのか」
まさか俺っちだけ除け者なのかと、内心焦った。俺っちの言葉を聞いて、輪入道は顔を横に振る。
「ううん、師匠と狐だけ。おいらも気になって師匠に聞いたんだけど、教えてくれなくて」
と輪入道が寂しそうに言った。これはまずい。狐に隠し事をされるのも悲しいが、輪入道にとっては、師匠に教えてもらえないことが相当堪えるはずだ。俺っちは仕方ないと丸薬を作る水かきの動きを止めて、輪入道にこう言った。
「ああ、どうしても気になる。狐の跡を、こっそり付けて確かめるしかないな」
と言った。きっと今、俺っちは悪い顔をしながら笑っているに違いない。俺っちの表情に輪入道は怯えながら、うんと頷いた。
なんだか無理矢理輪入道を巻き込んだ風になったが、俺っち達に隠し事をしている狐が悪い。後で、隠し事を洗いざらい白状してもらおう。