課題と約束 3
「師匠、何を取りに行ってたんですか」
とぼくは聞いてみる。師匠はすっと一冊の冊子をぼくに見せる。
「狐、君に課題を出します。この冊子に人間について分かったことを書いて、私に見せてください」
師匠はそう言って、ぼくに一本の筆と一緒に冊子を渡した。ぼくはぽかんと口を開けながら、冊子と筆を受け取る。真新しい和紙でできた冊子。紙は貴重な物だからと、こんな風に新品をもらったことなんて今まで一度もなかった。
師匠が肯定的にぼくの話を聞いてくれて、まさかこんな楽しい課題をもらえるとは思っていなかった。
「あと、いくつか約束があります」
師匠の声が真剣な声色に変わった。ぼくは思わず姿勢を正す。
「一つ、ほかの妖怪に人間に関する質問はしないようにすること」
「二つ、この課題はほかの妖怪たちには秘密にすること」
「三つ、人間に私たちの存在が気づかれないようにすること。この三つの約束を守れますね」
師匠が真剣な表情でぼくに聞いた。この三つの約束は大事なことだ。でも、一つだけ気にかかることがある。子河童と輪入道だ。
「師匠、約束は守ります。だけど、子河童や輪入道には言ってはいけないのかな。子河童と輪入道は、友達なんだ。だから……」
そう言ってぼくは言うのを止めた。友達でもどう思われるか分からない、子河童は人間に無関心だし、輪入道にとっては心の傷を負った原因なのだから。
「まあ、子河童と輪入道には秘密にしておきましょう」
師匠はぼくの言いたいこと察したらしく、そう告げた。
「師匠分かりました、約束を守って課題をやります」
ぼくがそう言うと、師匠は安心したように笑った。ぼくは師匠の穏やかに笑った表情を見て、すごく安心した。