出逢う 3
予想外の返事だったのか、子河童の呆れと苛立ちを含んだ様子で、
「はあっ?」
「帰り方、分かんないんだよ!」
そう言って、人間の子どもはわあっと泣き出した。子河童も流石に驚いたのか、
「おい、泣くなよ。ここら辺に住んでいる人間に聞けばいいだろ」
「そんな、かっこ悪いことしたくない!」
「なんて面倒くさいやつなんだ、この人間は」
ぼくは子河童と人間の子どものやりとりを見ていたら、少し落ち着いた。
「えっと、近くの人間の住む家まで送ってくとかどうかな」
「ちょっと待て、狐。お前何とんでもない提案を出すんだ。師匠に怒られるぞ、前のときよりももっと!」
子河童は顔面を真っ青にして言った。ぼくの提案に人間の子どもは、
「いいの?」
と聞いてきた。
「おい待て、人間。さっきの俺っちへの態度と随分違うじゃないか」
「人間って呼ぶな、僕には尾西京維って名前があるんだ!」
と子河童に噛みついている。なんでだろう、いつも頼りになる子河童がこんな風な態度を取ることにぼくは驚いていた。
「ねえ」
ふいに人間の子どもに声をかけられる。
「えっと、なに」
「人がいる家がある近くまで連れてってくれる?」
ぼくは少し迷いながら、気づいたら、
「いいよ」
と答えていた。子河童がぼくの頭をはたきながら、
「おい、狐。本気か?」
「どっちみち、ぼくらのことに気づいた時点でもうまずい状況になってるよ」
ぼくがそう言った瞬間、子河童は黙った。そしてすぐに大きなわざとらしいため息を吐くと、
「パッと連れてって、すぐにずらかるぞ。あと輪入道、さっさと起きな」
と言って、子河童は輪入道を無理矢理起こす。輪入道はのろのろと目を開け、呟いた。
「なんか、おいら嫌な夢を見てたような……?」
「残念ながら、悪夢は終わってないぜ。むしろ始まりだ」