結託ウォッチ
まことは、ひとみに振り向いてもらうために新しい自分を目指すことを決断し、彼女が見知らぬ男と入っていったホテルの入り口をじっと見つめていた。
その時、背後から静かな声が響いた。「あなた、大丈夫?」
振り返ると、そこには見知らぬ女性が立っていた。彼女は細身ながらもしっかりとした筋肉が見て取れる体型で、スポーツで鍛え上げられた自信に満ちた立ち姿だった。心配そうな表情で、優しくまことを見つめていた。「まことさんですよね?」
「え、はい……でも、どうして僕の名前を?」まことは驚きつつも、問い返すことしかできなかった。
「私はあいな、ひとみの友達です」と彼女は自己紹介をした。「少し話を聞いてもらってもいいですか?」
まことは戸惑いながらも、彼女の言葉に引き寄せられるように頷いた。
「あの、ひとみのこと、まだ諦めたくないんじゃないですか?」あいなの声には優しさが滲んでいたが、どこか鋭い洞察力も感じられた。
「でも……」まことは言葉に詰まり、うつむいた。
あいなは、彼の困惑した表情を見つめながら、少し考え込むように視線を落とした。「私が助けてあげます。ひとみをもう一度あなたに惚れさせる方法を、一緒に考えましょう。」
その提案にまことは驚き、あいなの顔をじっと見つめた。彼女は本気だった。初めて会ったばかりの女性が、なぜこんなにも自分を助けようとしてくれるのか、理解できなかったが、その申し出はまことにとって救いの手のように思えた。
「なぜそこまで……?」
あいなの提案に驚きながら問いかけると、あいなは少し躊躇した後、穏やかな微笑みを浮かべて言った。
「ひとみが悪い男につかまって、傷ついてほしくないんです。それが心配で……」言葉を選びながら、そう答えた。
まことはその答えに少し驚いたが、あいなの真剣な眼差しに嘘の影を見つけることはできなかった。「そうか……それなら、頼ってもいいのかな?」彼は少し戸惑いながらも、彼女の提案を受け入れることにした。
あいなは優しく頷き、「もちろんです。私も力になりたいんです」と答えた。その瞬間、あいなは心の中で、自分の感情を抑え込む決意を新たにした。彼女が本当に守りたいのはまこと自身であり、彼の幸せだったのだが、その思いを胸に秘め、彼女はあくまでひとみを守るためという嘘を続けることを選んだ。
「それじゃ、早速作戦会議しよう!今日の放課後、大学のカフェテリアでどうかな?」
”あ、敬語じゃなくなった...”
まことのどうでもよい心の声などあいなは気にするはずもなく、
すぐに次のステップを提案し、まるで待ちきれないかのように期待に満ちた目でまことを見つめた。
「あ、うん…それでいいよ…」あいなの勢いに押され、あまり考えずに承諾してしまった。彼女の積極的な態度に圧倒されつつも、彼の心の中には不安が渦巻いていた。「一体どうなるんだろう…」と、まだ見ぬ未来に対する期待と不安が入り混じった気持ちを抱えながら、その場を後にした。
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