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ビッチウォッチ  作者: 鬼土 わおん
ウンメイ
1/8

出会いウォッチ

大学の昼休み。中庭には学生たちが自由に過ごしており、昼食を終えた真田マコトは、人混みを避けるようにベンチに腰を下ろし、ノートを広げて一人静かに時間を過ごしていた。彼にとって、この一人の時間は束の間の安らぎだった。


その時、ふと彼の目の前に一人の女の子が現れた。明るい茶色の短髪に、涼しげな瞳を持つ彼女は、少し慌てた様子で周りを見渡している。佐々木ひとみだった。直接話したことはないが、この大学にいる男子生徒であればだれもがしっているだろう。大学でその美貌によりカルト的な人気を誇る彼女は人混みの中で他の学生たちに押されてバランスを崩し、倒れそうになっていた。


「あっ…!」


ひとみが倒れかけた瞬間、マコトは立ち上がって反射的に手を伸ばし、彼女の腕を掴んで引き寄せた。彼女はそのまま誠の胸に倒れ込むような形になり、二人の距離は一瞬で縮まった。マコトは驚きと戸惑いで胸が高鳴り、顔が真っ赤になるのを感じた。


「だ、大丈夫…?」


いつものように言葉を詰まらせながらも、なんとかひとみに声をかけた。ひとみは驚いた表情で彼を見上げたが、すぐに微笑みを浮かべた。


「ありがとう…!」ひとみは少しの間、マコトの目を見つめた後、彼の腕からそっと離れた。彼女の胸は、急に強く鼓動を打ち始めていた。今までに感じたことのない不思議な感情が彼女の中に生まれていた。


マコトは彼女から目を逸らし、視線を地面に落とした。彼女の瞳の奥には、なぜか見知らぬ感情が込められているように感じられたが、彼にはその意味がわからなかった。ただ、彼の胸の中で何かがくすぐるように動いているのを感じるだけだった。


「こんなに優しく助けてくれた人、初めてかも…」瞳は小さな声で呟き、またマコトの顔をじっと見つめた。


マコトはそれを聞いてさらに動揺し、言葉が出てこなくなった。ただ一言、「う、うん…」と答えるのが精一杯だった。


「私…」瞳は少し間を置いて、何かを決心したように言葉を続けた。「私、もしかしたら…あなたのこと、好きになるかも…」


その言葉に、マコトの心臓は一瞬止まったかのように感じた。彼女が自分に告白するなんて、そんなことが現実に起こるとは到底信じられなかった。彼は何も言えず、ただ彼女の顔を見つめ返した。


瞳はそんな悠真の反応を見て、照れくさそうに微笑み、彼の頬に軽く手を添えた。「もし嫌じゃなかったら、今度またお話ししない?」


マコトは心臓の鼓動が速くなるのを感じながら、何とか頷いた。言葉は出なかったが、その瞬間、彼の中で何かが変わり始めたような気がした。


連絡先を交換後すぐに、瞳は別れを告げて、人混みの中へと消えていった。マコトはその場に立ち尽くし、今起きたことが現実なのかどうかを考えながら、彼女の背中を見送っていた。


しばらくして我に返ったマコトのスマホ画面には、紛れもなく天国からの招待状が来ていた。


「17時に駅前の喫茶店集合ね!!」


挿絵(By みてみん)

読んでいただきありがとうございます。

評価いただけると嬉しいです。


明日第2話更新予定です。




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