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忘れない言葉  作者: 青木りよこ
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十五年前の謎 2

十五年前、台風による大雨で自宅近くの川が氾濫する恐れがあるということで通っていた小学校の体育館に母親と避難した。

外はすっげー雨で風も凄くて車から出る時もびしょびしょになったのを憶えている。

体育館には避難してきた人達が沢山いた。

多分お年寄りが多かったと思う。

母親は近所の人とおしゃべりしてて俺は何してたんだろ。

あんま憶えてないんだよな。

あ、せっかく体育館来たんだからバスケしたいなとか思ってた。

体育館はやたらと寒かった、確か夏だったはずなのに。

記憶は朧げでしかないのに、その中でも異彩を放つのがあの人だった。

寒いとはいえ夏なのに毛布でぐるぐる巻きにした何かを抱えて体育館の隅に座っていた。

俺はその人が気になってチラチラ見てたけど、その人はずっと座ったままだった。

ずっと一瞬も見逃さず見てたわけじゃないけど、何もしていなかったと思う。

ただ静かに時が過ぎるのを待っている、そんな感じだった。


でも今日その人が抱えていたのが女の人だったことがわかって、まあ長年の謎は解けたわけだ。

彼女なのか、妻なのか、妹は膝に乗せたりしないよな、俺乗せないもん。

小学校の体育館とは思えない、本当に不思議な光景だった。

何というか、美しかったのだ、単純に。

映画のエンディングのような、オープニングのような。

一度終わった物語がここから動き出すような。

主人公じゃないんだけどスピンオフ出してもらえるような人気キャラの佇まいを醸し出していた。

きっと膝に乗せていた女性も美人だろう。

そうに決まってる。

あれほどの男が選んだ女性が美人でないわけがない。


もっと早く聞きゃ良かった。

十年以上忘れられなかったんだもんな。

何か異常に印象に残ってて。

漫画のお気に入りシーンみたいと言うか、絵画を見てる気分にさせられるというか、失恋ソングのミュージックビデオを見てるみたいな。

美形っていいよな、座ってるだけで評価してもらえるんだから。


あの二人は今もいっしょにいるだろうか。

あの時二十歳そこそこだったなら今三十五から三十八くらいかな?

もうとっくにお互い別々の人と結婚したりしてるのかもしれないな。

今どこにいるんだろ。

嫌、そもそも、本当に人だったんだろうか。

ちらっと見ただけなら人形だった可能性だってあるよな。

ひょっとしたら死体だった可能性もなくはない。

犯行がばれるのを恐れ避難所に連れてったとか。

嫌、死体って凄い匂いするからそれはないか。

解決したのに気になるなぁ。

何だったんだろ、あの二人。


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