転生手続き
目が覚めたら、俺は行列に並んでいた。その先にはひとりの男の人がいる。
俺は死んだのか?それならここは死後の世界ってことか。
ごめん。俺、お前らを残して逝っちゃったよ。死ぬなら家族に見守られながら温かく死にたかったな。
俺は目に涙を浮かべる。でも、もう忘れないとな。俺はもう死んだんだ。その事実は変わらない。
そうしているうちにいつの間にか行列が進んで行き、俺の番が来た。
「えーっと、鈴木達央さんですね。この度はお気の毒でした。早速で申し訳ないのですが、転生をするか、極楽浄土に行くか、選んでもらえますか?」
おお、ほんとに早速だ。
うーん、転生か極楽浄土か、か。転生には憧れるよな。もし勇者とかチートとかに生まれ変わったらめちゃ楽しそう。極楽浄土ってのがどんなとこかイマイチ分からないけど、きっと転生の方が楽しいだろうな。
「じゃ、転生でお願いします。」
「はい、それでは、私の肩に手を置いていただけますか?」
言われた通りに男性の肩に手を置くと、いつのまにか扉の前にいた。
おお、これが瞬間移動?
「扉の奥に転生手続きの場があります。それでは私はここで。」
そう言うと、男性スッと消えてしまった。
扉を開けると、そこには忙しそうな金髪の美少女がいた。
「君が鈴木達央くん?私はミネル。こんなでも一応女神だよ。よろしくね〜。えっと、君は転生がしたいんだよね。前世の記憶を持ったまま転生するの?それとも全部リセットしてゼロから?」
大量の書類に目を通しながらミネルが言う。
「前世の記憶を持ったままがいいです。」
「おっけー。それじゃ種族は?」
「人間で。」
「異世界か前世の世界どっちに転生するの?」
前世の世界に転生するのもアリなのか。転生って異世界のイメージしかなかった。前世の世界に転生したら、妻に、子供に会えるのかな。
それは無理か。日本の人口1億人の中から個人を探すのは困難だろう。大体日本に生まれるかもわからない。
それなら夢だった異世界に転生したい。
「異世界に転生します。できれば魔法がある世界に。」
「うん、じゃあ他に要望はある?できるだけ応えるよ。」
「じゃあ、チート能力を持って転生とかってできます?」
まあ、できないよな。そんなホイホイチートが生まれたら困るだろうし。
「ああ、チートって人間の夢だよねぇ〜。ほんとはダメなんだけど、忙しいしチャチャッと済ませたいからいいよー」
え、いや、絶対ダメだろ、それ。
「他には?」
「えっと、大人のこの姿まま転生ってできるんですか?」
さすがに無理かな。それってもう転生というか転移みたいなもんだし。
「あぁ、前世の記憶持ったまま赤ちゃん生活って辛そうだもんね〜。ほんとはダメなんだけど、忙しいしチャチャっと済ませたいからいいよ。」
いいんかーい!
「その代わり他の人には言わないでね。絶対怒られるから。」
だろうな。
「もう要望はない?じゃあ転生するね。いってらっしゃ〜い。」
こうして俺は、チート能力を持って魔法のある異世界に転生することになった。