表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神が忙しかったらしく、異世界でチートになった  作者: ニーナ
2章 断罪者《ディカステス》の仕事と仲間
18/34

メムニル

私は、生まれた時から他属性:状態属性を持っていた。家族や周りの人からチヤホヤされて、楽しかった。

ああ、私は特別なんだ。他の人より優れているんだ。

そう思うと、とても気持ちよかった。だからと言って、調子に乗ったわけじゃない。ちゃんとお母さんの言う通りにしたし、この力を使って悪さをした事もなかった。


将来の夢は断罪者(ディカステス)だった。私の特別な力を使って悪い人たちをやっつけるんだ。小さな頃からそう言っていた。

なのに。その悪い人たちの仲間になるなんて。


忘れもしない、16歳の時の3月4日。帰って来たら、知らない男の人たちがいたんだ。


「ただいま〜」

「……」

様子がおかしかった。いつもならすぐにおかえり〜と返事が来るのに。

「お母さん?」

ゆっくりと家に上がる。電気が付いていなかった。

ドアを開けると、お母さんが倒れていた。

「お母さん!?大丈夫?」

お母さんの元へ行く。すると、ゴンッという鈍い音がした。遅れて痛みが来て、私はそのまま意識を失った。

それから私が起きて1番に見たのは知らない男の顔だった。

「あなたたち、誰?なんでここにいるの?」

この人たちがお母さんを?お母さんは無事なのだろうか。私たちをどうするつもりなのだろうか。


「俺はノブレールで、こっちがダニール。なんでここにいるかっていえば、お前を仲間に引き込むためだ。」

「仲間に?」

「うん、俺たちは強盗団。その仲間に入ってもらえないかなって。ちなみに俺もノブレールも他属性持ち。もう1人くらい他属性持ちがほしいなと思って探しに来たら、君を見つけたんだ。どう?入らない?」

「入るわけない」

「そっかぁ、じゃあ君のお母さんの命はないね。」

「え?」

ダニールと名乗った男は部屋の外にいたお母さんを運んできた。

「実は、さっきまで君のお母さんに爆弾を埋め込んでいたんだ。ああ、心配しないで。人体に害はないし、このボタンを押さない限りは爆発しないから。ただね、このボタンを押したら1秒のタイムロスもなくどかーんだよ?お母さんの命は俺らが握ってるんだ。そのことをよーく考えてもう一度入るか入らないか決めてね。」


いやだ。入るもんか。悪い奴らの仲間になんかならない。大体本当に埋め込まれてるのかどうかもわからないじゃないか。

でも、もし本当だったら?私が断ったせいで、目の前でお母さんが……

吐き気。急いで近くのゴミ箱を手にし、嗚咽する。痛みにも似た苦味がやってくる。

今ここで麻痺(パラリーシ)を使って身動きを取れないようにしたらどうだろうか。でも、もし失敗したら?きっと私が何の力を持っているのかなど、全てを把握している。それにこの人たちも他属性を持っていると言っていた。もしかしたらこの人たちは私よりも強いかもしれない。なら、ここは素直に、


「……ります。」

「ん?」

「私は、お母さんのためにあなたたちの仲間に入ります。そしたらお母さんを助けてくれるんですよね?」

「うん、もちろん。ただ、多分名前が広まると思うから、もうこの街には来れないね。お母さんにも会えない。君が君として生きることは不可能かな」

「そんな……」

なんで?なんで私がこんな目に遭わないといけないの?涙が溢れてくる。


なんだろう。私が悪いのかな?

私が状態属性なんか持ったらいけなかったのかな?

生意気に断罪者(ディカステス)なんか目指したらいけなかったのかな?

私なんて、生まれてこなければよかったのかな?


「うあぁァァァァァァァァッ!」

こんなに絶望というものを感じたこと無かった。望みが絶たれる。そんなもんじゃなかった。全てを失ったような。そんな気がした。



どれくらい経っただろうか。もう涙も流し尽くし、感情が少しだけ落ち着いて来た。顔を上げる。

「ッ!?」

目の前の男− ダニールとノブレールは興奮していた。私の絶望を見て喜んでいた。

ああ、コイツらはやばい。本物の「悪」なんだ。

「で、どうすんだ?」

ノブレールがボタンに手をかける。

私は力無く首を振ることしかできない。

「じゃあ、俺たちと一緒に強盗してくれるかな?」

怖かった。ただ、ここから逃げ出したかった。消えてなくなりたかった。もう、なんでもいい。私に未来なんてないんだ。

涙は流れてこなかった。ただ込み上げてくるのは力無い笑いだった。




私は強盗団としてダニールたちの仲間となった。

強盗をした時も、誤って人を殺してしまった時も、それを見てダニールたちが興奮しているのを見た時も、何にも感じなかった。隅に追いやった人間の心が痛む気がしたが、それは無視をした。もう、私は私ではなくなっていた。私は機械と化していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ