兄ちゃんは自閉症
夏休み最後の日の夕方のこと。
「あーあ。明日から学校か...」
「宿題ちょっとしか終わってないや...。
夏休みの課題帳は2ページまでしあ手をつけてないし、、四柱神社の風景画も描いてないや...」
「先生、怖いな...明日、休みたいなぁ...!!」
勉強机に向かっていた僕は背伸びをしてから、鉛筆を机の上に投げ出した。
それから階段を駆け下りて、
キッチンにいたお母さんに声をかけ、聞いてみた。
「ねぇ、お母さん!明日...学校休みたい、、
兄ちゃんみたいに...」
お母さんは手を止め
少し怖い顔をした。
「何、言ってるの!明日は学校なんだから、
ちゃんと行きなさい!」
僕は反論した。
「兄ちゃんなんか、ずっと休んでいるじゃんか!!僕はいままで学校休んだことないんだよ!1日くらいいいじゃん!
宿題ができてないんだよ!」
「課題帳と、四柱神社の風景画描けてないんだ!!」
「あんたが、さぼってたのが悪いんでしょ?」
「そうだけど...。山田先生、宿題とかやってないと凄い怒って怖いんだよ。。」
「怒られてもいいから、行きなさい」
「なんで、兄ちゃんは学校行かなくてもよくて、僕はたった1日、休もうとしただけで
そんな怒るのさ?」
思わずでた、大きな声。
僕の名前はシンジ。
僕の一個上のシンヤ兄ちゃんは今、小学六年生。
でも、学校へ行っていなかった。
「シンジの兄ちゃんはさ毎日、
学校が休みでいいなぁ」
「全然家から出ないのか??」
「家で何してるんだよ?
勉強しないで遊んでばっかなんだろ??」
「自閉症って病気なんだって??なんか、ふつうと違うんだって??」
クラスメイトのやつらが、たまに、そう言ってからかってくるのが、いやだった。
黙っているしかなかった。
からかわれるたびにぼくは思った。
僕の兄ちゃんが学校に行けてる普通の兄ちゃんだったら
良かったのにって。
お母さんの話では、兄ちゃんには軽い自閉症っていう病気があり、そんな
兄ちゃんが学校に行けなくなったのには訳がある。5年生になって担任の先生が男の先生から女の先生に代わり、
何かと「早くしなさい」と言われるのが苦痛なんだそうだ。
普通の人より、何かをするのに時間がかかる。
例えば、字を早く書いたりとか給食を早く食べたりするのが、兄ちゃんはできなかった。
夏休み最後の日のよる。
僕は必死で算数の問題を解いていた。
答えがついてない課題帳で、答えをささっとうつすわけにはいかなかった。
夜の10時を回ったとき。ねむくてねむくて
どうしようもなくなった。
机の上には手をつけたけど、終わらなかった課題帳と、まっしろな画用紙をそのまんまにして、僕はベッドに横になったんだ。
翌日のことだ。
目を覚まして起き上がると、
僕の部屋、不思議なことが起きてた。
「あれ...??」
勉強机の上に
開きっぱなしだった課題帳はきれいに閉じられ
た状態で机の上にあった。
それと。
画用紙には絵の具できれいに塗られた
四柱神社の風景画がかいてあった。
課題帳をぺらぺらめくって見ると、
びっしりと答えが書き込んであった。
あわてて階段を駆け下りた。
朝食を作り終えた母さんに尋ねてみた。
「ねぇねぇ、お母さん!!
もしかして、僕の宿題やってくれたの!?」
「?知らないわよ?」
「いや、でも、終わってて...」
ハッとした。
いつもなら、もう起きてテーブルに座っている
はずの兄ちゃんの姿がなかった。
「シンヤ、遅いわね...いつも早起きなのに。
どうしたのかしら...起こしにいこうかしら...」
僕は心の中で言った。
「もしかして...、兄ちゃんが宿題やってくれたんじゃ...」
今度は、
お母さんに言った。
「お母さん、兄ちゃん、
起こしちゃだめだよ...。今日ぐらい寝坊させてあげてよ...!実は宿題、手伝ってもらったんだ」
「あらあら、そうなのね...!じゃあ、
あとで電子レンジであたためて食べてもらえばいいわね」
「うん」
僕は兄ちゃんのおかげで宿題を無事に提出できた。
その後、しばらく経って。
兄ちゃんが描いた四柱風景画が、県の美術展で
金賞を取ってしまったから、僕は慌てた。
「兄ちゃん、あのさ...賞状、もらったんだけど、これ...」
僕の名前が入っていたが、描いたのは兄ちゃん。申し訳なくて兄ちゃんに手渡した。
滅多に笑わない兄ちゃんが、にっと笑った瞬間だった。
「図工の時間がある日だけでもがんばって学校行こうかな...」
「そ、そうしなよ...!!」
兄ちゃんは翌日から
図工のある日だけ学校に行き出した。
それから、約2ヶ月かたった今。
兄ちゃんは毎日、学校に行けるようになってた。
先生の、早くしなさい!って言葉を気にすることがなくなったみたいで。休み時間とか、好きなアニメの絵を描くことに熱中していた。
もう誰も。
兄ちゃんのことで色々と聞いてくるやつは
いなくなった。
兄ちゃんは得意の絵で、
何枚も賞状を貰い、自信をつけたみたいだった。
今ではシンヤ兄ちゃんは。
気がつくと
僕の自慢の兄ちゃんになってた。
★★★...!
お願いします。。